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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

食料品、42℃

作者: 青島秋

pixivにも投稿です。ひるこってなんでしょうね。わからないけれど気にしてないです。

私小説的なのですが、後半が非現実的なので私小説のタグは使用を見送りました。

 自殺したくなる。それが午後の6時くらいだった。私には家族での食事に参加する義務がある。私には家族での食事に参加する義務がある。逃れることはほとんどできない。42℃を超える発熱やその他の病気の症状を訴えればあるいは逃れうる可能性はある。私は自殺したくなる。生まれてこない方が幸福だった。このような不安と恐怖を毎晩きまって味わうためにこの時間帯に何もできなくなるのであれば、生まれてこない方が良かった。幸福で健康な体型を私が有していることは私を苦しめる。私はもっと物語で描かれる少女のような儚げで今にも死にそうな不健康そうな体型でいたかった。家族は私を健康たらしめんとする。私が食事をしないことを許さない。私は食事をしたくないわけではなく、食事をしたくないのだ。私は食事を強要されることに我慢がならないのだ私は暗に食事を、私の罪悪感時の弱さ、不安に訴えかける形で、強要されることが、我慢がならない。

 私は気が弱いので期待に沿おうとして食事をとろうし、しかしそれはわつぃが食事を摂りたいためではない。私は決してものを食べたくないわけではない。しかし選択の余地はない。ことあるごとに自殺したい。

また母が私の部屋を訪れる。それを避けることはできない。外出したところで丁寧にも私を食事の席につかせるために家族は私を待つ。なんておもいやりのある!

 ために私は外出しても屋外を歩いても恐怖が止まらない。どれだけ家から、物理的な距離を摂れば許されるのか。それが私を離さないから、家に帰ることができないで部屋の中にいるまま(結局外出できなかった)奇声を抑えている。それを噛み殺している。

 私に向ってことあるごとに痩せているという。私が痩せていたことなんて生まれてから一度もない。その言い分が度を越しているというのなら、2017年6月22日に体重が39.9㎏を示した時だけは少なからず痩せ気味であったかもしれないがそれは私の許容範囲ではない。私は食べることが決して嫌いでないから恐ろしがっているのだがそれどころか強要されるのは我慢がならない。私は不安が強まれば食事を、その辺にある食べ物を無分別にも体に詰め込むくらいに食べることを嗜癖しているから、私が私を容易にぶくぶくと太らせることを危惧しているのだが、それはまるで奇形の金魚のような……。もしくは水死体に似た、許容できない私であるから。ドアが叩かれないことを祈るばかりで、それでも食したものを無理に覆うとすることばかりはするまいという強いて言えば私にとっての個人的な指針が私をより一層の困難に置いている。もっとも嘔吐を避けようとするのはより一層の困難を避けようという防衛自衛であるのだが……。ただでさえ食べることにこじれた嗜癖を持っている人間が、それを嘔吐のような方法で無理に制御しようとしたらますます制御を失うことは目に見えているではないか?

 どんな音も、私が食事をしないことをかたくなに妨げようとする両親の市井の早期に繋がり大変な危惧を私の心に呼び起こす。居ても立っても居られない。落ち着きがない。不安が高まる。そこに母が現れる。そこに現れた母は、血の海を見る。私は恐怖のために私の維持を失ったから私はまるで破裂した鯨の死骸のように無残にばら撒かれていて、部屋の中が生臭い匂いで充たされていたので、それはまるで無秩序に切り裂きジャックが発狂したような有様だった。あちらに膵臓らしき物の断片、障子には筋膜だったと思わしき膜が貼りついて障子を台無しにしている。君が悪いとあれほど言った黒く染めた早い話トップコートの選択を間違えた爪が布団の上に指の肉を引き連れて寝転んでいる。肺がしぼんだ風船のような有様で机の下に隠れている。柔らかな質感の脳が暖色系の照明を浴びてつややかに光沢をおびている。それから大ぶりのミミズのような腸管が渦巻いて今にも蠕動しそうで、眼球は安定感を失いその球形を保てず溶け出していたのでなんであったのかの反俗が困難を極めていた。そして何よりも血液がその部屋の多くを覆っていた。スプーンも、アルコール系インクのペンも、リキテックスのアクリル絵の具のチューブも、私に偏愛されるガーリーな衣服も、どれもが血液を始めとする私の体液と組織片で汚損されている。

 私はかくして私の形を失い部屋の塗装剤のような有様であった。

 すると母が私の部屋の入り口から私に呼びかけた。

「ご飯ができたよ」

 私は崩落し分解しずるずるにばらばらに、水死体をミキサーで攪拌したように、部屋中で死体になっていたので、返事はない。

「ご飯ができたよ」

 母が部屋の入り口のふすまを開けて私に言う。

「ご飯ができたよ」

 母は言い続ける。

 私は砕けた脊椎と融けた眼球と細切れにランダムに裂けた皮膚とゼリーのようにクラッシュした脳と今や役立たずな生肉もしくは破棄されるべき産廃となった筋肉の残骸等を含む崩落した私を強引に引きずって食卓へ向かう。私が席に着くまでに床は大いに血で汚された。

「あらあんた、痩せてきたんじゃない、もっと食べないと拒食症になってしまうよ」

 父が言う。母も同調して似たようなことを言う。

残念ながら私の食道は320個の細片へと切り分けられる形で壊れているのだが、私は手の形をしていない手で箸を持ち、なめくじのような体に食物を押し込む。

「ごちそうさま」

「食べないねえ」

 うるさい黙れ自殺するぞどうでもいいけれど。私は砕けた骨格と急速に鮮度の落ちる骨格筋などを引き連れて部屋に帰っては大声で泣きわめいたり奇声を上げたりすることをするのを必死で抑圧して不安に飲み込まれて窒息している。


もし読んだ場合はお疲れさまでした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] はは、狂気を感じるぞぉ! 狂った幻想的な視界がぁぁ。 [気になる点] 42℃。何か重要な要素なのかなと思い警戒しつつ、特にそうでも無かったような。 それが、その気を狂わせる現実から精神的…
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