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魔王の娘と勇者の子孫  作者: 善信
84/101

84 明らかになる素性

 突然、目の前に現れた覆面四人組に警戒していると、奴等はサッと構えてみせる。

 むっ!やる気かっ!?

 妾達も即座に対抗する意思を示す!

 しかし、彼らはこちらが予想していなかった行動をし始めた!


「癒す薬は心の灯火!ブレイブ・レッド!」(ジャキーン)

「愛の心にて砕けぬ物無し!ブレイブ・ピンク!」(シャキーン)

「銀の拳は全てを砕く、ブレイブ・シルバー!」(キュピーン)

「あ、えっと……ブレイブ・グリーン……?」


「「「我ら、愛と正義の勇者戦隊!ブレイブ・レンジャー!!!」」」


 名乗ると同時に、ドーン! とカラフルな爆発が彼らの背後で起こった!

 いやいやいや、待て!

 どこだ、どっからツッこめばいいのだ!?

 このノリ自体か、ピンクとシルバーの口上が微妙に被るところか、ノリきれずに戸惑ってるグリーンにか?

 「おのれ、ブレイブ・レンジャー! こんなところにまで現れるとはっ!?」

 悪そうな顔をしながら、それっぽい事を言いう骨夫をひっぱたく!

 なんでもノリで付き合うでないわ!


「あ、あれ……もしかして……」

 そんな中、魔剣を構ていたエルが何かに気付いたように呟く。すると……

「ハッハッハッ。随分とたくましくなったじゃないか、エル」

「あ……」

 赤の覆面戦士に声をかけられ、エルはやっぱり……と呟いてため息を吐いた。ひょっとして、奴らと知り合いなのだろうか?

「ほんと、子供の成長って早いわね」

「なるほどぉ、あの子がぁ……」

「……もう覆面(これ)、取っていいのか?」

 そんな会話をしながら、他の戦士達も次々と覆面を取っていく。

 その下から現れた顔……それは、妾にとって最悪のトラウマ物であった。


「やぁ、お嬢さん。久しぶりだね」

「その節はどうも」

 ゲェーッ!

 アルリディオとチャルフィオナ!? 勇者の子孫がなぜここに!?

さらにそんな二人の登場よりも妾を驚愕させたのは、シルバーを名乗った人物の素顔!

「やっほ~、アルトちゃん、久しぶり~」

 ほんわかした笑顔で妾に手を振っているのは……間違いない!


「母上ぇ!?」

「父さん、母さん!?」


 エルと妾の驚きの声が、辺りに響き渡った。……って、んんっ!?

 トウサン、カアサン? ダレガ、ダレノ?

 ギギギ……と錆び付いたオモチャみたいな動きで、エルの方に顔を向ける。

 すると彼は、探し人が見つかった喜びと、妾の母上に対する緊張からかぎこちない笑みを浮かべていた。


 えーっと、ちょっと待てよ……勇者の子孫であるあの二人、そしてエルがその息子ということは……。

 なんとか意味を理解しようとしたが、脳がそれを拒む。

 そんな風にエルの方を見ながらフリーズしていた妾に、母上が拗ねたように頬を膨らませた。

「んもー、久しぶりに会ったっていうのに、アルトちゃんたら! お母さんを無視しないでよぉ」

 何やら母上が妾に色々言ってるようなのだが、現実逃避をしている脳が反応しない。

 こうなったら、とっておきの秘密を教えちゃうぞぅ……妾の注目を引こうと母上はそう言う。が、それどころではない。

 だって……エルが……勇者の……。


「じゃーん!魔界で噂の魔王 『どっかの重撃王』。実はそれ、私のことなのでーす!」

 …………はあぁぁっ??

 な、何を言ってるんですか、母上!? 一気に思考がそちらに持っていかれた。

 た、確かに放浪癖がある母上のプライベートにはあまり詳しくはないけれど、笑い話の領地を持たない魔王の正体が母上なんて初耳ですよ!?


「それはそうよ、この事は古い魔王しか知らないもの」

「え、あ……で、では父上はこの事を知っているのですか?」

「もちろんよぉ! なんせあの人が魔王になったのは、私と結婚したいからだしぃ。それに魔界をまとめようとしたのは、いつでも私がどこにいるか把握するためだものぉ」

 愛されてるわねぇなんてチャルフィオナに肘でつつかれ、いやんと照れながら母上はモジモジと身をよじる。

 正直、親のそういう仕草は居たたまれない気持ちになるのでやめてもらいたいのだが、それよりも父上と母上の馴れ初めに驚きだった。

 あの厳格な父上が、そんな理由で魔界を統一しようとしていたなんて……。


「あ、ついでにこちらのグリーン。彼は獣人達の王をやってる『暁の獣王』です」

「雑だな、俺の紹介」

 な、なんだってー!

 あまりにもあっさりと紹介され過ぎてスルーしそうになったが、めちゃめちゃ重要ではないか!

 なんで行方不明だった魔王がここに……いや、もしかしてもう一人の魔王である『山の巨人王』も……?

「ああ、彼は最後の巨大ロボ役として待機してもらっているんだ」

 なに、その役!?

 いや、何より出番もなく裏に待機って、少しかわいそうではないかなっ!?

 なぜか一人で体育座りをして呼ばれるのを待つ魔王の姿が頭に浮かぶ。

 そんなの悲しすぎる……。


「……アルトさんのご両親が……魔王?」

 母上の告白や、行方不明だった魔王の登場に衝撃を受けていた妾の耳に、呆けたようなエルの呟きが届く。

 その瞬間、ドキンと心臓が跳ね上がった!

 あ……そうだ。妾の素性は隠していたのだった。見れば、リーシャやハミィも驚愕の顔つきをしている。

 なんと言えばいいのだろう……何を言えばいいのだろう……。

 あまりにも唐突に衝撃の事実が襲いかかって来すぎて、考えがまとまらない。

 ただ、一つ解っていることは……魔王と勇者は戦う定めにあるという事。

 つまり、妾とエルは……。


「……そんなの、いやだぁ……」

 エルと戦わなければならない。その現実に気付いた時、妾の口から溢れたのはそれを拒絶する言葉だった。

 だって、取り憑かれた訳でもない、正気のエルと争うなんてできるわけがないではないかっ!

 悲しみのあまり我知らずボロボロと大粒の涙を流しながら、エルと戦いたくないと、妾は子供のように泣きじゃくる。

 端から見ればみっともないだろうが、そんな事に気を配る余裕などない。

 ただ、ひたすらに魔王の運命や勇者の使命といった物を否定する言葉を漏らすことしかできなかった。


 そして、ふと気づく。エルも泣いている事に。

「ぼ、僕だっで、アルトさんと戦いだぐないでず……」

 妾を想い、グスグスと鼻を鳴らして泣くエルの姿がとても愛おしい……。

 いつしか妾達はどちらからともなく近づいていき……固く抱き締めあった。


「エ"ル"ぅ……」

「ア"ル"ドざぁん……」

 ああ……なにゆえ、こんなにも想い合っている二人が戦う定めなどに。この残酷な運命を憎まずにはいられない。

「あの……盛り上がっている所、悪いんだけど……」

 なぜ、エルは勇者の子孫で妾は魔王の娘なのだ。

「別に、君ら二人が争う必要はないんだぞ?」

 いっそ、魔王や勇者の運命なんてかなぐり捨てて、二人で……え?

 チャルフィオナとアルリディオの言葉に、妾達は思わず顔をあげた!

 んんっ? 争わなくていいの?


「まぁ、正確に言えば争ってる場合(・・・・・・)じゃない(・・・・)んだけどねぇ」

 母上が少しだけ真面目な顔になってそう告げる。

 こういう時は大概ろくでもない状況になりつつあるので、いやな予感しかしない。

「安心しなさい。貴女のお父さん『鋼の魔王』の封印も解くわ」

 なんと!

 だ、だがなぜそんな……。

 勇者の子孫らしからぬ彼らの言動に、父上を開放できる喜びよりも戸惑いの方が先に立つ。


「今からそれを説明しよう……そう、勇者の子孫である僕らと、魔王である彼女達が協力しなければならない、全て世界に迫る危機についてを!」

 全ての世界に迫る……危機!?

 何があったのかはわからないが、その言葉の響きに体が震える。

 だから妾達は、息を飲みながら彼の語る内容に耳を傾けるのだった。

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