表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
禁書の王  作者: カボス
1/1

封印が解けました

初めましてカボスです。頑張って小説書いたんで面白かったらブクマや評価お願いします。

ここはどこだ?


 目覚めて最初に目に飛び込んできたのは、黒く薄汚いローブを羽織った男だった。男は手に一冊の古ぼけた本を持ち、何かぶつぶつと呟いている。こちらには気が付いていないようだ。


 さらに男の視線の先、俺の足元を見ると紅の魔方陣のようなものが蠢いていた。幾何学文様が三つ、重なるようにしてぐるぐると回りながら黒の炎を発している。薄暗い部屋で紅に輝く魔方陣は、いっそ神秘的でもあった。


 初めて見たはずのその光景はどこか懐かしさを感じさせた。なにか大事な事を忘れているような気がして首を傾げるも、やはり何も浮かんでこない。気のせいか、と頭を振った所でふと気づいた。


 自分が何も覚えていないことに。


 魔方陣の光が次第に大きくなっていく。それに合わせるかのように自分の中で疑問が膨らんでいくのを感じた。


『ここは、どこだ?』


――わからない。


 意味のない自問自答を繰り返す。魔方陣の輝きが増した。


『俺はなぜ、ここにいる?』


――わからない。


 妙に冴え渡った思考が逆に怖い。全然動揺していない自分を恐ろしいと思った。魔方陣の輝きはさらに増していた。


『そもそも、俺は誰だ?』


――わからない。


 その思考に至った瞬間、魔方陣が爆ぜた。


 紅の光の洪水が部屋を満たし、男が狂ったように叫び声を上げる。男の持っていた古びた本には赤黒い血管のようなものが浮き出てドクンドクンと脈動し始めた。よく見ると、その太い血管は男の腕に繋がっていた。


 その異様な光景に、俺は呆然としたまま動くことができなかった。全ての動作を忘れ、ただその光景に見入っていた。


 脈打つその本にどこか既視感を覚え、何故だかわからないが俺はその本へ手を伸ばし、触れた。古びた本から伸び出た血管は俺の手にも繋がり始めて――――


 俺は何もできないままに意識を失うのだった。 



 


******




 綺麗な装飾が施され、絵画や壺が立ち並ぶ廊下を思案顔で俺は歩いていた。歩を進める度にこつこつとこ気味のいい音が鳴るのは、流石王城と言った所か。細かい所にまで気が行き届いている。


 あの後意識が戻った俺は、体と記憶を取り戻していた。というのも、あの男が持っていた本は禁書『愚者の血脈』という本で俺の魂が封印されていた。だが、その封印された俺の魂をあの男が魔法で解放してくれたらしく俺は晴れて自由の身になったという訳だ。


 で、だ。あの男、俺を解放したせいで怒り狂った禁書に呑みこまれたらしい。禁書と男が血管で繋がっていたのはそのせいだろう。そして、再度俺を封印しようとした禁書に俺も呑みこまれたんだが、そこで俺の能力が生きた。


 俺の能力『禁書庫』によって逆に禁書『愚者の血脈』を格納したんだ。『禁書庫』は禁書の格納と悪影響をシャットする能力だったおかげでなんとか再封印されるのをまぬがれたのだ。


「しっかしこんな事になるなんてなぁ」


 ただ、それだけじゃなかった。禁書『愚者の血脈』に呑みこまれていたあの男の体を憑代として俺が宿った。また、あの男が持っていた能力や記憶も『愚者の血脈』を通して『禁書庫』に統合されたようで『禁書庫』がかなり面白いことになっていた。


「というか、なんだこれ。銃? っていう武器なのか?」


 俺を解放した男。タナカタロウと言うらしいが中々面白い記憶と能力を持っていた。


 なんでもタナカタロウは人族が異世界から召喚した勇者らしい。他にも3人勇者がいるらしいがまあ割愛する。異世界の記憶も興味深いものがあるが、それよりもタナカタロウの持っていた能力だ。


 『銃召喚』という能力で、異世界の武器である銃を召喚できたらしい。ちらりと記憶を覗いたところ遠距離の武器らしく、凄まじい威力をもっているようだ。そしてこの『銃召喚』。俺の持つ『禁書庫』に統合されて俺が格納している禁書を銃の形態にすることができるようになったらしい。


「『愚者の血脈』銃形態」


 両手に、二丁の拳銃が現れた。全体的に赤黒く銃身には金色の血管が這っていた。二丁の拳銃は持ち手を金の鎖で繋がれており、全体的に禍々しいという印象を受ける。


――チャキッ


 百メートル程先の行き止まりに向かって二丁の銃を構える。記憶を覗いて使い方理解しているためかそれとも体に染みついたものなのか、すんなりと銃を扱うことができた。


――ドパンドパンッッ!!


 発射された二つの弾丸が、螺旋回転しながら進んでいく。


「すっげー威力だな」


 大理石でできた壁に、魔力でできた紅い弾丸が二つめり込んでいた。どういう原理なのかは分からないが、魔力は霧散せずにその場にとどまっている。とんでもない威力だったというのに、弾丸は変形どころか欠けてすらいない。かなりの硬度だ。これが鉄だったらこうはいかないだろう。


 この結果に満足した俺はこきこきと首を鳴らした。


 田中太郎の体や記憶が馴染みはじめて、異物から完全に自分のものになっていく。魂が体にしっかりと定着したのだろう。微妙に残っていた違和感もなくなった。


 いい調子だと鼻歌を歌いながら二丁の拳銃を眺めていると近くから足音が聞こえてきた。音からして三、四人の騎士だろう。ガシャンガシャンと煩い。多分、先程の銃声を聞いて異変がないか確認しにきたのだろう。


「やっべ。『格納』」


 見つかると面倒くさいことになるのは分かっているので、慌てて銃を格納してどこか隠れる場所はないかと辺りを見渡す。すると、近くに半開きのドアを見つけた。何かがそこに入れと言っているような気がして、俺は一瞬どうしようかと迷った後にそこに隠れることにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ