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無人駅

作者: 鮎沢琴美

 買ったばっかりのスマホを潰してやった。

 まだ後悔はしていないし、なんだかすっきりしている。

 私はこれから行方不明になる。だから連絡が取れてはいけないのだ。

 この平日の真昼間に学生服でうろうろしているのはおかしいかも知れないが、サボりのやつらが結構いて、真面目な私が知らないだけだった。学校サボりのJKとしか見られていないだろう。それでいい、あくまで自然に行方不明にならなくてはいけない。

 行先はK山、心を浄化しに行くのだ。私を見る不審な目にちらほら気づき始める。とびっきり可愛い学生服を来た皆憧れの女子高生がぼっちでK山行の電車に乗っている。でも案外誰も何も言ってこない。

 ここからどのくらいかかるんだろう。あ、スマホを壊したからネット使えないや。

 電車はどんどん山道を走っていく。トンネルが多くなってどこを走っているのかわからない気持ちになる。目的地は決まっていたのだが少し手前の駅で降りた。妙に気味が悪かった。無人駅で山が広がっているだけで人っ子ひとりいない。逆に誘拐とかされそうにないし、そう、人がいない。

 切符を回収する機械も人もいない。私はとんでもないところに来てしまった。もちろんコンビニもない、自販機さえない。ここに住んでいる人はどうやって暮らしているんだろう、と少し思ったけど、そもそも人がいない。一応道路はあるが車も通らない。もしかしてここって幻?私夢をみてるってくらい人がいない。でも寂しくないし、むしろこのままずっとここでいたい。広大な自然独り占め。だってどうせ帰っても一人ぼっちじゃんか。


「おお、久々の来客だ。お嬢ちゃん、まあ若いねえ」

 気づくと前に老婆がいた。びっくりしたが恐怖を感じるわけではない。何とも言えない癒しがその老婆に会った。

「孤独人は自然にここへやってくるのだよ。ここに来るとその人の気配は消える。他の人からは見えなくなる。わしは案内人じゃから必要なときにだけあらわれるのじゃよ」

「ということは私のほかにも人はいるけれど私には見えないし、相手からも私は見えないってことよね」

「そういうことじゃ。あんさんにはまだ早いと思うがね。わしのような身寄りのないものが最後に集う場所じゃから。かといって帰れとも言わん。事情があって来たのだろうから」

 きっと駅を降りたのは偶然のようで必然だったということか。私はここに残るべきだろう。生を受けて17年、もう人生の大体は見えたのだから。

「ここにおるとな、悲しいことやつらいことは一切起きない。しかし嬉しいことも楽しいこともない。無の境地へひたすら進んでいく。そして泡のように消えていく。こんなところ人生とは呼べない。穏やかな刑務所といったところか。いや刑務所の方がまだいいかもしれん」

 私は生まれ変わりを信じる。きっと生まれ変わって赤ちゃんからやり直す。

「ここに住ませて欲しい」

「良いよ、好きにすれば良い」


 最近巷では失踪事件が多発している。

 そして前世について話す幼児が各地で話題になっている。

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