ドコ。
一発。
どこか単純な音が耳に心地よくて、でも同時に僕はその音に嫌悪を覚えることがある。
引き金を弾く。
また、1人倒れる。
狙う時、僕は必ず頭を狙う。
ヘッドショット。
即死なんてあるわけない。
でも、死ぬ確率が高い。
人は痛みを察知してから、その感覚は脳に伝達する速度は400km/h。
弾き出したメタルジャケットが脳細胞を完全破壊する迄、時速300km/h。
だから、痛みを感じることはない。
そう。
イタミヲ カンジナイ。
・・・カモシレナイ。
そう先輩は教えてくれた。
数時間前に先輩は死んだ。
いや、数時間なのだろうか。
なんだか、実感も湧かない。
もう何人殺したのだろうか。
オマエハ ナンニン コロシタ。
そう耳元でずっと囁かれる。
今朝、両親からの手紙が届く。
いつ返事が書けなくなるか分からないから、書ける時に書いとけと先輩は言っていた。
手紙なんて、届けばいいほうなんだ。
いや・・・トドイタラ、シアワセナンダ。
そう先輩は言っていた。
だから書く。
両親に戦争の状況なんて書くことをしない。
書いたら、書いたら、カイタラ・・・
思い出す。
そう。
オモイダス。
冷酷に。
ただ。
淡々と。
機械のように。
心地よくもあり。
胸糞悪い音を聞きながら。
あの悪魔を、死神を弾き出す。
そんな自分を思い出す。
そして、その自分が。
ペンという日用品を持ち。
両親に、今日も糞不味い飯を食いながら頑張ってます。
先輩は、相変わらず間抜けで僕はそんな先輩の後をくっついてコンビやってます。
なんて、書く自分がとてつもなく嫌になって。
視界が真っ暗になるから。
どうして、こんなところにいるのだろう。
朝、起きると、「なんだ、まだ生きていたのか。」そう感じる。
あれから、何年経ったろう。
僕は今、どこにいるのだろう。
故郷なのか。
それとも。
あの地獄なのか。
ふかふかの布団は、前者であると言ってくれる。
でも。
僕は、まだ故郷に帰ってきてない。
まだ。
未だ。
あの場所に。
僕は。
ズット トドマッテル。
あゝ、今日も囁かれる。
オマエハ ナンニン コロシタ。
そう、先輩の声で。
まずは読んで下さり、本当にありがとうございます。
PTSD。
生きて戦争から帰ってきても、正直、この症状について家族に言いたいとは思えないそうです。
それが、どれほどの意味を持つかを考えると、このPTSDはどれだけ恐いものなのか。
想像を絶します。
もし、よろしければ評価・感想・批評等をして下さると幸いです。
よろしくお願いいたします。