三年独り
一応言いますけど「ノンフィクション」です!信じられないかもしんないけども!
後、まだまだ小説書き始めですので、間違い、アドバイス、等がありましたら、遠慮なく言ってください。
宜しくお願いします
6月6日、曇天の下ある体育館がにぎやかに音を立てる。
ボールが地面に叩きつけられる音、バッシュがキュキュッと鳴く音、人々の歓声、叫び声。
バスケットボールの試合をやっているのだ。
「A中!ファイトー!」
「「オーッ!」」
試合前の気合入れの声が野太く響く。
そしてスタメンである五人が整列を始める。
僕はその様子を少し悔しさを混じえながら眺めていた。
僕もあそこに立っていたら・・・最後の試合ぐらい・・・
しかしそんな念は「お願いします!」の大声によりかき消された。
相手は全体的にうちのチームよりも大きい。強さの比喩表現なんかじゃなく、体が大きいのだ。
それもそのはず。こちらの五人は全員二年に対し、あちらは全員3年だからだ。
こちらのチームに3年が居ないわけじゃない。
一応いるのだたった一人。僕が。
何故出ていないかって?無論僕がとてつもなく弱いからだ。どのくらいかと言うと、試合で得点を一回も決めたことがない、ってぐらいだ。
そのせいで僕は三年独りなのにキャプテンもやらせてもらってない。
「三年、二年関係なく強い奴はユニフォームを持てる。当たり前だが一年もだ。」
これが先生の口癖だった。これは常に全体に話されていたことだが、殆ど僕に行ってるようなものだった。
二年生は僕よりも強い奴が続々いたためである。
僕は何とかがんばってユニフォームは持っていた。だが、それはスタメンのユニフォームじゃなかった。
試合は順調だった、点差は二点、こちらがリードしていた。
コートに出ている選手達の足取りが鈍くなる頃、ピリオドの終わりを告げるブザーが鳴った。
俺は試合に出ている後輩達を励ますことしか出来なかった、「三年相手に二年だけで勝ててるんだ、最後までいけるぞ!」と。
少し休憩がはいって次のピリオド。
このピリオドも良かった。
正直、何でここまで勝ててるのか不思議だった。皆が本気で頑張っていたためだろうか。
だが3ピリオド目に限界が来てしまった。
ジャンプの高度が明らかに低い、走りが遅い。
スタミナ切れだ。
結局3ピリオド終了時には20点も離れていた、さっきとは違いこちらが負けていた。
僕はこのまま、出れないまま終わってしまうんだろうか。
そんなのは嫌だ、自分も出たい。得点を決めたい。
そんなことを願いながら4ピリオドの半分が過ぎた。点差は更に広がっていた。
相手がシュートを決めるたび相手の歓声が大きくなり、同時にこちらの士気が下がっていった。
僕も半分あきらめていた。
急に先生が叫んだ「諦めるな!」
ふと、皆の呼吸が止まったようだった。そうだ、まだ試合は終わってない!
次の瞬間僕は叫んでいた。「一本決めろ!」と。
するとそれに呼応するかのように、こちらの選手がボールをパスした。
そして受け取った選手がシュートを打った。
ボールは綺麗な放物線を描いた後、リングに入っていった。
それから一瞬の間を置いて「ナイッシュー!」と今度は全員で叫んだ。
あの一本をきっかけにその後一分間はシュートが入りまくった。
が、やはりあのスタミナが足をひっぱり、進撃は止まってしまった。
あと15点のところだった。
しかし、さっきの諦めムードとは違い、全員の士気は高かった。
まだ行ける!もう一本、いやもう何本でもという雰囲気だった。
急に先生が「○○!」と僕の名を呼んだ。
先生を見ると、こちらに手招きしていた。
これは交代の合図、つまり僕に念願の出番がやってきた。
先生はたった一人の三年の僕にプレゼントをくれたのだった。
何よりも価値のある、たった三分間というプレゼントを。
選手がボールを外に出したときにブザーが鳴り。交代を告げた。
選手の顔が心なしか驚いたように見えた。
それもそのはず、交代された選手は僕よりも強い。
簡単に言うと負けている状況下に弱い奴が出てきたのだ、驚きもするだろう。
相手のパスからのスタートだった。
相手がパスを放った、僕のマークマンに。
それを確認した僕は勝手に手が反応した。
バシッ!という音とともにボールがてにくっ付いた。カットできたのだ。
僕はそれをすぐさまパスした。見事にゴール下の選手にボールは飛び込み、そいつはそのままシュートした。
勿論得点だった。
また入れることが出来た。ここから逆転が出来る!
相手がシュートを打った。が、外れて味方ボール。
どういうわけかボールを持っていた奴が僕にボールを飛ばした。
僕はパスを取り、ゴールを見た。前には誰も居ない、フリーだ!
直ぐに地面にボールを打ち、走り出した。
後ろから足跡が近づくが全然遠い。
僕はそのままお手本となるような綺麗なレイアップシュートを放った。
ボールは自然にリングの中へ。
得点できたのだ。
やった、とうとう、初めて、やっと、僕は試合で得点することが出来た。
感動が手につかめるようだった。
「ディフェンス行くぞ!」僕は叫んだ。他の皆も応じるように「ディフェンス!」と叫んだ。
ちらと時間を見ると、何と後一分も無かった。点差は11点、逆転は絶望的だった。
いや、まだ行ける。
味方がカットしたボールをまた受け取りそのままシュートしようとした。
しかし振り返ったら目の前にディフェンスが立っていた。
このとき、本当はドリブルをすべきだった。だが僕の足は勝手に体を宙に浮かせていた。
相手も飛んだ。が、勢いづいたのかこちらに飛び掛って来た。
そのせいか少し前が開けた、僕はそのまま三年間の心をこめてシュートを打った。
シュートは相手の手をくぐりぬけ、飛んでいった。
僕はそのボールを見届けられなかった。相手が覆いかぶさってきたからだ。
ドサッ
僕と相手は倒れこんだ、相手選手が「スイマセン!大丈夫ですか!?」と声をかけてくる。その間から歓声が聞こえる。
僕は「大丈夫です」と小声で告げて立ち上がった。
シュート中にファールをした場合、そのシュートが決まらなかったら二本のフリースロー・・・つまり妨害なしの一定距離からのシュートが打てる。
そのシュートが入った場合は1本に打てる本数が減る。
僕はフリースローライン(フリースローを打つライン)に立ち、審判に「何本ですか?」と聞いた。
審判は「一本です」と返した。あのシュートは決まっていたのだ。
審判からボールを渡され、皆の視線が僕へと集まる。
僕はこの大舞台で何故か緊張していなかった。それどころか楽しくて仕方が無かった。
先生が「落ち着け・・・」と溢した。
それに対し僕は不適に笑みを浮かべて。僕の努力の三年間を証明するように、只の「肘を伸ばし、手首を返す」その動作を一生懸命に、やさしく行った。
そのボールはやけにゆっくりに感じられた、ゆっくりと飛んで行き、そしてリングの中に・・・入らずに上に乗っかった。が、直ぐに落っこちた、外側に。
それから数十秒、試合は終了。
結果は勿論負け。だが悔いは無かった。なんせ最後の試合に初得点を決めることが出来たから。
ただ欲を言えば、最後のフリースローは入って欲しかった。
先生が「○○、保護者の方に挨拶して来い。」
といつもはキャプテンに任せることを僕に言った。
僕は疑問に思うことなく、精一杯の声で喉をはち切らせんばかりに叫んだ。
最後に決めることの出来た自分の実力に対し、最後の三分間をプレゼントしてくれた先生に対し、
そして、バスケに対し。
「ありがとうございました!」
こうして僕の三年独りの部活は幕を閉じた。