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【第2.5話】奪う者の愉悦

正直に言えば、塔の攻略なんて暇つぶしにもならなかった。


 あの程度の魔物。


 本気を出すまでもない。


 ――だから、俺が興味を持ったのは塔じゃない。


 女だ。 マリアという赤髪の剣士。


 気が強く、簡単には靡かない。


 しかも、ずっと一人で戦ってきた女。


 そういう女ほど、壊しがいがある。


 噂は聞いていた。


 あの女が、誰かと組んだと。


 弱そうな男。


 視線が下を向きがちで、剣を握る手も覚束ない。


 だが――

 分かったんだ。


 あの男、マリアに本気だ。


 それを知った瞬間、興奮した。


 他人の想いが乗った女。


 誰かが必死に手を伸ばしている女。


 それを奪う瞬間が、俺は一番好きだ。


 弟のことも、塔のことも、全部知っていた。


 だから計画は簡単だった。


 差し出せばいい。

 “力”を。



 あの夜、路地裏で――


 マリアは、俺の前で膝をついた。


 誇り高い女が、目的のために声を押し殺す。


 その表情が、最高だった。


 「弟を助けたいだけ」


 そう言い聞かせるように呟くくせに、


 身体は正直だった。


 強気な女が、立場を失う瞬間。


 俺は、その瞬間にしか感じられない快感を味わっていた。


 視界の端で、男が立ち去るのが見えた。


 ――ああ、いい顔だ。

 絶望と、欲望と、諦めが混ざった顔。


 その時だ。

 空気が、変わった。


 去っていく男の背中から、

 さっきまでなかった“重さ”を感じた。


 (……加護、か)


 確信した。


 今は、まだ弱い。 俺の足元にも及ばない。


 だが――

 あれは、耐え続けるほど強くなる類の力だ。


「面白い」


 そう思いながら、俺は再び視線を落とす。


 マリアは、何も言わず、応え続けていた。

 

――いつか。


 あの男が、俺の前に立つ日が来るかもしれない。


 だがその時までは。

 

この勝利を、存分に味わわせてもらおう。

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