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6.異世界で初めての敗北

呆れたようにセリアが呟く。


 「本当に何も知らないのね……」

 「まぁ、異世界人?だからな」

 「異世界から来たって部分は半信半疑だけどね」

 「じゃあ何だと思う?」


 問われたセリアが腕を組んで考えた。視線が宙を漂う。


 「アタシ達を騙そうとしてるか、魔物に襲われて混乱してるか……?」

 「俺自身も自分が疑わしいよ、実は全てが妄想か幻覚か……」


 言いかけて言葉が続かなくなり、仕方なく乾いた口を潤すためにコップの水を啜ると水面の像が揺らぐ。レオンが席を立ちランプに火を灯した。


 「まぁ、考えていても仕方が有りません、今日はココらへんで止めておきましょう。暗くなってきましたしね」


 確かに、フト見渡すと窓から入る光が薄れ室内には闇が侵入し始めていた。レオンの言葉を聞いてセリアも立ち上がり帰り支度をし始め、悠真が腰を浮かした。


 「そうだな、じゃあ俺もそろそろ家に帰るとするか……」


 口にしかけた瞬間に胸の奥から嫌な気配がせり上がってくる。家?帰る?一体どこに?どうやって?失っていた現実感が一気に襲いかかってきた。先程飲んだばかりなのに異常に喉が乾き、たまらず椅子に座り込んだ。様子を見ていたセリアが逡巡して声をかける。


 「……仕方無いわね、アタシの家に来る?」


 しかしレオンが掌で柔らかく制した。


 「それでしたら、僕の家に泊まると良いですよ。幸い部屋も空いてますしね……荷物置き場になってますが、少し片付けたらユーマさん一人くらいなら眠れるでしょうし」

 「良いのか?」

 「えぇ、ただし期限付きです。中央に問い合わせしますので……当面は返事が来るまでですね、それでもよろしければ?」

 「いや……むしろありがたい。この状況で一人で生きていける気がしないからな」

 「でしょうね、同感です。それに助けられた命が失われるのは目覚めが悪いですからね」

 「しかし、本当に良いのか?自分で言うのも何だが今の俺は大分怪しいぞ?」


 悠真はレオンとセリアの両者の顔に視線を合わせる。レオンが苦笑している。


 「大丈夫ですよ、確かに怪しいかもしれませんが、脅威では無いので。多分セリアさんにも敵わないでしょうからね」

 「多分じゃないわよ、確実にアタシが勝つわ」


 セリアの口調からは、強者の余裕が滲み出している。果たしてそうだろうか?と悠真が見つめていると、元来の目つきの悪さから睨んでいると思われたのか、喧嘩を売ったと思われたのか……


 「何よその顔?なんなら試してみる?腕相撲とかさ」

 「おいおい、ちょっと待てよ。流石の俺だって女の子に負けるわけ……」


 瞬殺だった、相手が女の子という事もあり最初は手加減したものの、何度やってもどうやっても本気を出しても左右を入れ替えても徹底的に瞬殺だった。


 「痛ぇ……」


 机に幾度も叩きつけられ赤くなった手の甲をさすりながら悠真が呻く。ジンジンと痺れるような痛みは、どうしようも無く現実を主張していた。


 「そんな貧弱なら、安心してレオンに任せられるわね。じゃあ!あとはよろしくね!」

 「ちょっとやり過ぎな気もしますが……まぁ、かしこまりましたよ」


 腕相撲での疲れを一切見せず、セリアの背中は闇の中に溶けていった。

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