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56.観測と都合

 「二人は魔術が苦手なのか、だから火を付けるときも水を召喚?するときも協力してたんだな」

 「そうッスね、合わせてやっと一人前くらいッス」

 「俺は……正直そういうの羨ましいよ、お互いの欠けてる空白を補い合える関係。相棒って感じがしてさ」

 「そうッスかね?」


 横並びに立っている助手の首だけがコチラを向く。


 「俺の勝手な感想だけどな、お前の他に合わせられる人はいるのか?」

 「……あのデタラメな存在に合わせられる人間は、居ないッスね」

 「ほらみろ、良い関係だよ」

 「その観点は盲点でした」


 二人は静かに立っている、先程の火炎放射による熱も燃えた酒の臭いも冷めてきていた。


 「俺には無かった。作り方も分からんし、今も無い」

 「極論過ぎじゃ無いッスか?事実、ガルド氏を始めとして魔術使える組みはよくユーマ氏の話をしてるッスよ」

 「たまたまだろ」

 「ウチは感情を読むのは不得意ですが、観測した事実上ユーマ氏は自分の存在を軽視する傾向が有るッスね」

 「……たまたまだろ」


 悠真が肩をすくめると、助手がエルを指さした。


 「少なくとも、博士がああなるのはたまたまじゃ無いッス」

 「ま、俺が異世界人だからな」


 どこかズレた返答に、助手が顔を近づける。


 「ウチと博士には共通点が有りまして、観測した事象を感情で捻じ曲げられるとどうにも気持ち悪くなるんスよ」

 「ソレは……研究施設にピッタリな資質だな?」


 話の重心を逸らされた助手は諦めたように顔を離した。


 「ま、人間だから仕方が無いッスね」


 そうして、暫しの沈黙が流れる。二人の間に風が通り過ぎた。少し気まずくなった悠真が口火を切る。


 「そう言えば、俺は異世界人だと確定したようだが……一つ疑問が有る」

 「なんスか?」

 「世界が違うのになんでこうも都合よく言葉が通じるんだろうな?」


 基本的に体の動きが少ない助手の首が傾く。


 「何を言ってるんス?言葉が通じるのは当たり前じゃないスか」

 「いや……国ごとに言語は異なるものだろう?っていうか俺の世界では住んでる地域が離れたら離れるほど言葉が変わってたぞ」

 「そうッスか?魔物相手じゃないんだから……同じ人間同士どこに行っても言葉が通じるのは当然ッス。意思が通じるかは分かりませんが」


 多少皮肉るように助手が締めくくり、悠真は心の底に違和感を抱えながらも飲み込んだ。


 (まぁ、そういうものだと納得するしか無かろう)

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