53.すっとぼ系
「というわけで、本日はいよいよユーマ氏の実力を測るッス」
翌日、実験場に訪れた悠真は、建物の裏へ案内された。屋外の広い敷地に複数人集められている。本来騒がしいはずのその場は統率されたように静まり返っている。そして色とりどりの髪……それぞれの雰囲気は違うが悠真を値踏みするような目線だけは一緒だった。
「準備が間に合わなかったんで、とりあえず主に経験豊富な各国の派遣正規軍を中心に参加できる人を集めたッス」
「えらく急いでるな」
人員の数を数えていた助手はその人差し指を悠真に向けた
「他人事ッスね、原因の一因ッスよ」
「俺ぇ!?」
「博士が暴走しちゃったんで、カリキュラムの前後が入れ替わったんス」
「知らなかったとは言え、すまん」
両手を顔の前に合わせ謝る悠真に、助手は諦めたような目線を送る。
「ま、ウチの管理不行き届きも大いに有るんスけどね」
そして大きく手を打ち鳴らし、空気のリセットを図る。
「というわけで、先程の説明通りユーマ氏から魔術の手ほどきを受けて欲しいッス」
ざわめきも、疑問の声も上がらない。ただジッと悠真を追う目線の熱が上がる。
「継続的に経過を見るので、皆さんの業務に定期的に差し込まれると思って欲しいッス」
じゃ、始めましょうかという気の抜けた声と共に、悠真の実験体としての生活が始まった。
散々喋り倒し喉と口がカラカラになった頃合いでその日行う工程は無事に消化されたようだった。
「はい、じゃー皆さんお疲れ様でした。各自持ち場に戻って欲しいッス」
「あー疲れた、で?どうだった?」
「今の時点で言えることはウチの体感程度ッスけど、概ねザックリ見て1%程度の向上って感じッスね」
「そんなもんか、前の街では結構サクッと上がったと思うんだけどな」
(どうやらココでは俺は役立たずらしい……)
無意識に肩を落とす悠真に助手は軽く困惑しているようだ。
「何を言ってるんスか?さっきまで居たのは各国の正規軍の上澄みに近い連中ッス。日々お互いに磨き合って、こと戦闘や魔術においてはウチらの遥か上ッスよ?やることはある程度やり尽くして、技術を磨くより保持するのが当然になった奴らッス」
「また凄い人達が集まってるもんだな」
「その凄い人達の魔術をユーマ氏が一歩前進させたんスよ?なんで実感無いんスか?」
助手から指摘されてもピンとこない悠真は腕を組み首を捻っている。
「……魔術を使えない無能力者なので」
「その無能力者が一押しできた現状が異常なんスけどね、やっぱりユーマ氏は異常値ッスよ……博士に報告したく無いッス」
「なんで?」
ウンザリしたように片手で頭をさする助手に悠真が尋ねた。
「また暴走するに決まってるッスからね」
しかし、ある意味慣れているのかすぐに背を伸ばして気を取り直す。
「ところでユーマ氏、もしこのまま順調に結果を重ねられるのなら、この研究機関にとっても国にとっても有用であることは間違い無いッス」
「はぁ……?」
「結果に応じて報酬が得られるッスよ、とは言えいつものこの街でしか使えない独自通過ッスけどね」
言われた悠真は首のチョーカーを無意識に擦った。
「ま、無いよりは大分マシさ。貰えるものなら貰っておこう」




