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52.合う視線、合わない想い

 「ただいま」


 当然のように帰宅時の挨拶を行ったが、それはいつからだったのだろうか。背を丸めノソノソと無言で玄関から入る過去は、どこか他人事だ。


 「おや、ユーマさん。お早いお帰りで」


 出迎えてくれるレオンの言葉はどこかジットリと湿っている。


 「悪い悪い、徹夜明けで帰る気力が無くって……っな!?」


 脚を中心に衝撃が走る、キールが抱きついてきたらだ。


 「おぉっと、どうした?」

 「初めての不慣れな環境です、キール君も不安になって当然でしょう?」

 「レオンが身近に居るじゃないか」

 「分かってないですね……」


 レオンがいつの間にやら手に持っていた濡れた布を投げてよこす。


 「入浴には遅いでしょうから、せめてコレで拭いて下さい」

 「気が利くな……助かる」


 キールの手を引き部屋に戻るレオン、その後姿を見て悠真の目頭が熱くなった。顔を拭きながら二人の後に続く。


 「お前ら……こうして見ると本当の……仲の良い親子みたいだ。レオン、きっとお前は良い父親になるぞ」

 「ユーマさんはどうなんです?」

 「俺は……俺はてんで駄目だ。子どものお手本にはなれない……」


 ボヤく悠真にレオンが苦笑混じりに返す。


 「ま、ユーマさんが良い父親になれなかったとしても……友人にはなることが出来ると思いますよ」

 「子ども相手のか?」

 「子ども相手でも、です」


 就寝の準備が済み、壁に横付けされ縦に積み重なったベッドに横たわる。悠真の目の前には一段上のベッドの底面が間近に見えている。体勢を整えていると何やら潜り込んでくる気配が有る。


 「うぉわ!びっくりした!キールか……まるで猫だな。お前のベッドは有るだろう?一人で寝なさい」


 しかし言われたキールは離れる気配が無い。


 「おい、レオンお父さん。言ってやってくれ」

 「誰のせいだと思ってるんです?今日だけは仕方が無いですよ……さっきも言いましたが、不安なんです」


 キールの顔を見やると真っ直ぐな視線とぶつかった。


 「ユーマ、いなくならないよね?」


 かつての、孤児院にいたときの雰囲気が瞳に映し出されているのが読み取れる。


 「……あぁ、居なくならないさ」


 (とりあえず今はな)


 未来がどうなるか分からない、不安定な現状の中言い切るのは多少の居心地の悪さを感じたが、悠真は敢えてその不快感を飲み込んだ。

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