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51.帰る場所、待たれる場所

 (昨日呼ばれて丸一日以上経ってるな……)


そこかしこに建てられた時計塔から覗く針を見て、悠真は大体の経過時間を察した。手近な食べ物屋に立ち寄りリンゴのような梨のような果物を手に取る。店主が慣れたように悠真の首元のチョーカーに何かしらの装置を当てると、ブブッと振動する。コレで商品の受け渡しは完了だ。


 (なんつーか……電子決済みたいだな、なんでこの街だけ?技術格差か?)

 (まぁ、管理するには便利だよな、この街の技術の上に乗っかってる独自通貨ってやつ)


 そのままブラブラと歩き回り、目についた公園に入る。木製のベンチにドカッと座り込むと、シャリシャリと果物を齧りだした。瑞々しく甘いが、何故か独特のスパイス臭がするのは異世界故か……


 (思えば、遠い所に来たもんだ……)


 単純に場所が遠いと言うよりは、環境や価値観の違いに距離感を感じていた。


 (俺自信が確固たる決意を持って動いたわけじゃ無いのに……流されるまま流されてココまで来ちまったな……人生ってのは面白いものだ)


 丁寧に剪定された木々の葉が風に揺れ、音を立てる。そのまま悠真はベンチの背もたれに身を預け脱力した。


 (やめだやめだ、今だけは考えるのをやめよう……色々あって疲れた)


 そうしてたまに果物を齧りつつ、時間が過ぎるのに任せた。


 しばしして目の裏が暗くなり始めた頃、誰かに声をかけられた。


 「アレ、ユーマじゃない?なにしてんのよ?」

 「おー、セリアか……今帰りか?」


 見ると、支給された戦闘服を着たセリアがコチラに歩み寄って来る。


 「そう、例の模擬戦よ。色々と情報を取るんだってさ」

 「そうか、お疲れさん」

 「聞いたわよ?アンタずっと話してたんだって?よく持つわね」

 「持ってないからココに座り込んでるんだ」


 自分の有様を見せるように両手を広げると、セリアは呆れている。


 「帰って寝なさいよね」

 「目が冴えて寝れなかったんだよ……まぁ、今帰るさ……」

 

 言って立ち上がろうとしたが、途端に動きが止まる。


 「どうしたのよ?」

 「しまった……このまま動くと腰をやりかねん……」

 「バカねー、徹夜した挙句こんなベンチに座ってるからでしょ!!」


 そうして、目の前に来ると手を差し出してくる。


 「ん、掴まって」

 「助かる」


 その細身からは想像つかない力強さで体を引き上げられる、しかも片手だ。その握りしめられた手は小さいのに硬くて締まっており、戦士の手をしていた。


 (俺なんかより余程頼りになるなぁ)


 離された自身の右手を見ながらグーパーを繰り返していると、怪訝な様子でセリアが聞いてきた。


 「なにしてんのよ?帰るわよ。レオンとキールが待ってるでしょ」

 「あぁ、今行く」


 セリアの背を追う悠真の脳裏に一瞬、以前の孤独だった一人暮らしの殺風景な部屋が過ったが、無意識の内に溶けて消えた。

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