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49.知性は熱を帯び

悠真からなんとかエルを引き剥がし椅子に叩き込んだ助手が、息を荒らげながら言葉を吐く。


 「ハァー、とは言えもう時間なんでウチは上がりますが、二人はどうするッスか?」

 「先に帰っててよ!ぼくはお話しとくから!」

 「まぁ、出せる情報は出しとこうか……」


 (協力しておいて損も有るまい……)


 「じゃあウチは帰るんで、適当に話し終わったら勝手に帰ると良いッス」

 「あれ、俺に見張りとか無いのか?」

 「有るわけ無いッス、この街から逃げるとか有り得ないんで、余計なコストかけるだけ無駄ッス」


 そう言い残し、大股でブラリブラリと廊下の向こうに消える助手。


 「そんで!君は何を聞かせてくれるのかな?」

 「そうだなぁ、理解しやすいとなると……蒸気機関かな。紙とペンを貸してほしいんだが、有るか?」

 「紙は腐るほど、ペンとインクも溢れるほど!」


 ワクワクとした様子で服の内側から紙を引っ張り出し、ペンとインクは棚の方から持ってくる。


 「ありがとう……じゃあまずは図解するとしようか……」


 そして悠真は紙に図を描き出した。

まず下に四角形を置き、その中心から一本、棒を上へ伸ばす。土台と支柱を区切るような配置だった。その先端を中心に、今度は丸を描く。さらにその丸の両端から、短い棒を左右へ伸ばし、途中で直角に折り曲げた。


 「コレは俺の世界でヘロンの球体だったかヘロンの蒸気機関だとか言われている代物でな」

 「へー、変な形」


 エルは興味深そうに紙を上から覗き込んでいる。


 「この土台に水が入ってて、その土台を熱するとどうなる?」

 「水が湯気になるね」

 「そう、その湯気は縦の配管を通ってこの丸……まぁ球体の中に入る、そして横の短い棒から出ていく」


 聞いていたエルは訝しげに首を捻る。


 「それだけ?」

 「そう、それだけだ。だがこの球体は回る仕組みになっている。短い棒から吹き出た蒸気はその両端から押し出され……逆に棒を押し出す。棒に繋がっている球体に力が加わり回転する」


 ブラブラしていた足がピタッと止まる。


 「まー、図解だけでも難しいよな、なんとか現物を創って見せられたらなぁ……」

 「水車や……風車の代わりになる……?」

 「ん?理解が早いな……流石博士……」

 「水と、水を蒸気にする燃焼剤さえ有れば、風の動きや水の流れに頼らない動力源になる……?」


 あ、やばい。と悠真は思った。先程の狂気的な炎が熱を帯びているのを感じる。

 グラリとエルの頭が傾ぎ、悠真を見つめた。理性も本能も無い、剥き身の知性だけが宿った瞳で。


 「君ぃー、ココに送られるわけだよー、さぁ、もっと教えてくれるよね?」

 「仰せのままに……」

 

 呆れ半分、諦め半分で悠真は呟いた。

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