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45.持たざる者、見られざるを得ぬ者

 「貴方達には、コチラを装着していただきます」


 馬車の中、今から降りようというとき声をかけられた。ルナールの手には、五つの黒いチョーカーが引っ掛けられている、いわゆる首輪である。


 「なんだよコレ?」

 「魔術抑制兼、身分証明のための装置となります」


 逆らっても仕方がないので、首元に輪を装着する、その感触が自分が観察対象なのだという事実を否応なしに突きつけてくる。




「貴方達には暫く、コチラで生活を行っていただきます」


 馬車から降りてルナールに案内された先は、パレクシアの居住区で有った。見た目は堅牢な石造りで、全体的に角ばっていて横に細長い、建物の中へ通され階段で最上階の三階まで上ると、とある一室の前で立ち止まる。


 「ユーマさん、レオンさん、キールの三名はコチラへ、残り二名は隣の部屋へどうぞ」

 「おい、ちょっと待て、セリアとガルドが同室だと?男女だぞ?」


 慌てた悠真が指摘するが、対するセリアの反応は冷静なものだった。


 「なに言ってるのよ?別に当たり前でしょ?」

 「お前らって基本的に戦士だよな、未だに慣れないわ……」


 いざ室内を覗き込んで一言目に出た感想は。


 「狭い……」


 だった。今までレオンの一軒家で悠々暮らしていたのである、その差に思わず愚痴が溢れる。


 「とは言え、俺も昔は1DKに住んでたし……っていうか水場一式が無いし寝るだけっぽいからそう考えると広いのか?」


 と、そこまで口にしてハタと気付く。そう、キッチンも風呂場もトイレすら無いのである。


 「……風呂とトイレ無しでどうしろってんだ!?」


 思わず突っ込んでしまった悠真に無機質な声が返答する。


 「今説明するところです」


 そう言ってルナールが胸元から一枚の紙を取り出した、ソレは簡易的な地図だった。


 「現在地がコチラです、それぞれの建物の一番端にトイレが設置されています。そして浴場ですが……」


 地図を指し示していた指がツツツ……と移動する。


 「コチラになります」

 「遠いわ!前の街だと風呂場もトイレも有ったのに、なんでココだと共用なんだよ!?」

 「効率化のためです」

 「こっ……」


 何の感情の色もなく言い切られ、思わず悠真が口ごもる。


 「入浴時間が決まっていますので、お気をつけ下さい」

 「時間制限まで有るのかよ!」

 「規則です」


 必要な説明が終わると、用は済んだとばかりにルナールは何処かへ去っていった。


 「……アイツよりネトゲのNPCの方が余程感情豊かだぞ」

 「まぁまぁ、取り敢えず中に入りましょう。長い道のりでしたから、流石に疲れました」

 「レオンお前……ネトゲとかNPCとかにツッコまなくなったな」

 「慣れましたので」

 「セリアもそんな感じだぞ」

 「慣れたんでしょう」


 こうしてそれぞれのパレクシアでの生活が始まろうとしていた。

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