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42.心に刺さる言葉

酒を舐めていた悠真の様子をジッとみた女将がハタと何かに気付いたようだ。


 「アレ、もしかしてユーマさんかい?」

 「そっスけど……何か?」


 交友関係の狭さを自覚している悠真は、見知らぬ他人が自分のことを知っていることに違和感を覚えた。


 「やっぱり!セリアちゃんから話は聞いてるよ!あの子から色々と教えてもらってね。アンタのおかげで魔術の使い道も広がって便利になったもんだよ」


 そう言って先ほどと同じように右手を水でコーティングする。


 「今までは水をぶっかけてたんだけどね、コレなら床も濡れないしさ」


 冗談めかして笑う女将を店主が睨みつけ、次いで悠真に目線が移る。


 「お前か!カカァに余計なことを教えやがったのは!!」

 「アンタ!またぶん殴られたいのかい!」


 怒鳴られた店主は渋々他の客の対応に向かう、対して悠真は渋い顔をしていた。


 「……俺は役に立ちましたか?」

 「立った立った!!アンタが教えてくれた水の盾かい?アレのおかげでこの店も守れたしね」

 「そうか……」


 誰かの役に立った、その事実が悠真に重くのしかかる。やはり自分には力が有るのだ、だというのに活かしきれなかった歯がゆさと嫌悪感が湧き上がる。となりのガルドが何かを察して話しかけてきた。


 「オッサン、また下らないことで悩んでるな?」

 「まぁな、やるべきことをしなかった……俺の存在の下らなさに悩んでいるよ」


 甘い果実酒を飲むが、何故か苦々しい。トロリとした喉越しがやたら引っかかる。


 「……ユーマ」


 ガルドの呼びかけに驚いて顔を上げる、普段オッサン呼ばわりされていたのに名前で呼ばれたのは初めてだからだ。


 「周りを見ろ、お前のおかげで店は守られた、皆が楽しむ場所も守られた。なぜ自分を責める?」

 「……もっと出来たことが有るはずだ」


 いつの間にか正面に立った店主が話に割って入った。


 「おい!お前がやったことでカカァは死ななかった!ワシの店も立ち続けている!人は集まる!何が不満だ!!」

 「あ、いや……不満とかではなく……」

 「ワシはな!お前みたいなウジウジした奴は大嫌いだ!コレでも飲んで全部忘れろ!!」


 目の前の机の上にドンッ!と酒瓶が置かれる。横からため息を吐いた女将が悠真に優しく語りかけた。


 「あの人本当に口が悪いんだから、ごめんなさいね。お礼がしたいから奢るってことよ」

 「ありがとうございます……でも俺酒が苦手で……すみません」


 すると今度は店主が料理を目の前に乱暴に置いた。


 「ならコレでも食え!カカァの飯は旨いぞ!!」


 山盛りに積まれた料理を見て悠真は言う。


 「ありがたいんですが……流石に食いきれませんよ」

 「なら持って帰れ!!ただし器は返せよ!!高いんだからな!!」


 そこで横から女将の拳骨が頭に落とされた。


 「また来てねってことよ、アンタさえ良ければね?」

 「……必ず来ます」


 相変わらず横で酒をかっ食らっていたガルドは熱い息と共に言葉を吐いた。


 「ユーマ、ここにお前を責める人間は誰も居ないぞ?お前を責めるのはユーマだけだ」

 「俺だけ……」


 その言葉は何故か心の奥にトゲのように突き刺さった。

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