40.歪んだ認知
ヤレヤレと体を向き直したレオンが悠真に椅子に座るよう手で促す。
「良いですか、ユーマさんには力が有る……そうですね?」
「まぁ、そうらしいな。流石に客観的事実を突き付けられたら受け入れざるを得ない」
椅子の背もたれに身を預け頭の後ろで手を組む、目線は中空をウロウロと漂っていた。
「だからこそ、もっとやれたことが有るんじゃないかと……」
「分かった今だからこそ、でしょう。ですが当時はどうでしたか?」
「……分かろうとしなかった。馬鹿だからな」
暫しの沈黙が流れる、窓から風が流れサラリと顔を撫でていった。
「分からなかった……知らなかったのなら仕方が無いでしょう。キールくんは子どもで無知ですが……出来ないことを責めますか?」
「俺は鬼か?そんなことせんわ」
「であるならば、ユーマさんこそ責められるべきでは無いと、僕は思いますけどね」
相変わらずにこやかな表情をしているが、目線は鋭い。コチラの表情の動き一つも見逃さない気配を感じる。
「俺は大人だぜ?」
「はい、確かに。僕よりも」
「大人が知らないことを言い訳にしちゃ駄目だろう」
「時と場合によると思いますが……今回は言い訳をしてはいけないのですか?」
「駄目だね」
「何故?」
「何故って……」
考えれば考える程混乱して分からなくなってくる。時間を稼ごうと水を汲みに立ち上がりかけた悠真の腕は力強く掴まれた。
「今回ばかりは逃がしませんよ?」
「おお、怖い怖い。来週から家賃が倍にでもなるのかな?」
「冗談でかわそうとしても、駄目ですよ?」
「はい……」
(年上の面目が丸潰れだ……元々無いに等しいが……)
大人しく席に戻った悠真を見て、レオンは呆れたような表情をしている。
「どうしてそう、ネジ曲がってるんでしょうね?他者に対しては状況を加味した上で判断し、自分に対しては責めの一辺倒……」
「まぁ……性格が悪い自覚は有るが……」
「悪いのは性格じゃありません、モノの見方です……認知の仕方とでも言いましょうか」
どうにもレオンが悩んでいるように見える、まるで何かの難問に取り掛かっている受験生のようだ。
「コレは……時間がかかりそうですね……」
「まあまあ、無理すんなよ」
「誰のせいだと思ってるんですか?」
「多分……俺?」
レオンはゆっくりと席を立ち上がると困ったように言葉を漏らした。
「自覚が有るなら、どうにかしましょうね?」




