38.力の価値は
「いやー、即強制連行!!とかじゃなくて良かったなー、まさかこうして準備する猶予を貰えるなんて」
レオンの家で悠真は荷物をまとめていた、とは言えさほど量はない。
「意味合いとしては罰則の為……というより見定めるための観察に近いですしね、少なくとも犯罪者扱いでは無いようです」
近隣の住民に挨拶を終えたレオンが一息ついている。
「長い事お世話になったこの家とも暫くお別れか……キールは大丈夫か?」
「ユーマとレオンがいるから平気」
にへら、と笑うキールの頭を悠真がポンポンと叩いた。
「お前らって、なんだかんだ旅慣れてるんだな」
「えぇ、魔物の影響でどうしても……」
「難儀なものだなあ……」
あと数日で旅立つことを思うと、寂しいような悲しいような感覚が湧き上がってくる。
(……はて?俺はココに愛着を持っているようだが……不思議だな?日本の出来事はあんまり思い出さないのに)
思い出せることと言えば、朝起きて仕事に行き帰宅してご飯を食べ入浴して寝る……その合間に暇を潰すローテーションだけだった。
「思えば、レオンにも相当世話になったよなあ、改めてありがとう」
「良いんですよ、おかげで色々と賑やかになりましたしね」
「家はどうするんだ?閉めておくのか?」
「友人に貸します、人が住まない家はすぐに痛みますので」
「なるほど?」
その日の晩、いつものように窓から覗く月明かりを受け、珍しく物思いに耽っていた。
(ソレイユさんが言うには、どうも俺の影響で魔術の威力やら効率やらが上がったらしい。理屈と数字で提示されたら納得する他無い)
(となると……俺がもっと本気で関わっていれば、この前の戦闘で被害者は減ったのでは?)
(おっちゃんだって、死ななくて済んだかも知れない……)
密閉された金属の筒を取り出すと、中の飴が軽い音を立てる。
(泣いている人も居た……あの涙は……俺のせいか?)
未だに、炎に照らされた様々な人の悲しみを湛えた表情が脳裏に浮かぶ。
(……言い訳しようが無いな、俺が舐めてかかってなかったら、助かった命はもっと多かったはずだ)
(結局、能力を持ってようが持って無かろうが、俺は役立たずか……)
金属の筒を握る右手は以前より逞しくなっていたが、悠真には分からなかった。




