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28.いざ、裁きのとき

翌日、悠真とレオンは後ろについたルナールの案内に従い、道を歩いていた。


 「次の角を、右です」


 感情のない無機質で硬質な声が行先を指し示す。


 (カーナビの音声みたいだな)


 後ろをチラチラと気にしている内にフト気がついた。ルナールの腰から脚に沿って細い板状のフレームが張り付いている。適度にしなり関節に複数可動域が設けられ、一歩進むごとに追従する。


 「なぁレオン、アレはなんだ?」


 気になって聞いてみた、知らないことはレオンに頼るクセがついてしまっているのである。


 「僕も噂でしか聞いたこと有りませんが……歩行補助の道具だと思います」

 「高いのか?」

 「かなり……ソレに高価なだけじゃ有りません、入手するルートが限られているんです……ある意味特権ですね」

 「私語は慎むように」


 そうだ、自分たちは被疑者なのだったと気を引き締め猫背を精一杯伸ばし不自然にキビキビと歩き出した。


 目的の建物は、町外れの小高い丘の上に有った。堅牢な石造りで屋根は低く、華美な装飾も豪華さも無い見た目は機能美だけを宿している。広い敷地内には倉庫のように見える施設も見えたが、扉が閉まっており中は伺えない。昔教師に呼び出された職員室を何故か思い出し体が硬直する。油が切れたカラクリ人形のようなぎこちない動きで、案内されるまま建物に入っていった。


 とある一室の前でルナールが静止した。両開きの扉はその存在感だけで重厚な雰囲気を発し、否応にも裁かれる立場を分からせられる。


 「ソレイユ様、失礼します」


 ノックの後一声かけ扉を開け、仕草で中へ促される。二人が恐る恐る入ると後ろの方でルナールが扉を締めそのまま背後で様子を伺い出す。室内には複数の椅子が並べられており、その向こうには木彫りの長机が置かれていて、一人の人物が背後の窓から入る光に照らされコチラに視線を向け立っていた。流れるような長髪は受けた光を反射するような白髪で、意志の強そうな目は大きく、ファッションに疎い悠真でさえ分かるような仕立ての良いドレスを着ている。


 (コッチに来てから美男美女ばかりだが、飛び抜けて美形だな)


 まるで絵画のような美貌に見とれていると、その美女が重く沈殿した場の空気を破った。


 「アナタ達が、ユーマさんにレオンさんですね?」

 「はい、僕はレオンと申します」


 返答をしたレオンに対し、悠真は無言でコクコクと頷くしかできない。喉の奥が張り付きどうにも上手く声が出せなかったのだ。暑くもないのに汗が滲み出てくる。


 「ユーマさん」


 呼びかけられた先を見ると、目で合図を出したレオンが片膝をつこうとしていた。あぁなるほどそういうのが礼儀かと従おうとしたが。


 「結構ですよ、席にお座りなさい」


 怒鳴られたわけでもないのに勝手に体が萎縮する、元より反抗する意思はないが有ったとしても命令に従うしか無い圧倒的な力の差を感じる。


 (まさに、まな板の上の鯉ってやつだな)


 冷や汗をダラダラと流しながら悠真は高級そうな椅子に腰を降ろした。

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