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26.夢と現実のコントラスト

フト気付くと、悠真は懐かしくも見慣れた部屋の中に居た。目の前にはPCの画面が光りオススメ動画のサムネイルが並んでいる。ボンヤリとした思考が鈍いながらも回転しだす。


 (そうか……夢を見ていたのか)


 特に興味を引くこともない動画が瞳に反射する。クリックされることの無いカーソルがウロウロと彷徨って、味気の無い無機質な感触を返した。


 (なんだろう、この感覚は……)


 ポツリと、涙が頬を伝い落ちる。濡れた手の甲を見て自分が泣いていることに気付いた。


 (そうか……俺、楽しかったんだ)


 涙で滲んだ灰色の世界の中で、思考の中にだけ色鮮やかに一つ一つの場面が浮き上がる。


 (ハハ……なんだよ、今更気付いたのか……)


 喉がキュッと締まり抑えることの出来ない嗚咽が漏れ始める。悠真は異世界に"戻る"事を望んでいた。


 (夢の中で良いから……また会いたい……みんな……)


 もう取り戻せない、決定的な何かを無くしたような喪失感が胸の内に広がっていく。涙を拭って画面を見ると、黒い背景に字幕が大きく表示されていた。


 "悠真"


 「ん?」


 画面にチカチカと点滅する自身の名前に戸惑う。


 "悠真"


 "ゆうま"


 "ユーマ"


 「ユーマ!!」


 悠真が目を覚ますと、朝日が登ったばかりの薄暗い中、キールが肩を揺すっていた。


 「朝だよ、おはよう」


 最近ようやく見せ始めた笑顔とともに、挨拶をされる。


 「あぁ……おはよう」


 悠真が上半身を起こすと、キールが不安げに尋ねてきた。


 「泣いてるの?」


 問われて自分の顔を撫でると、確かに目元が濡れている。となると……恐怖や悲しさを感じていてもおかしくないはずなのだが、何故か目の前の現実に安心感を覚えた。


 「泣いてたみたいだ……俺にも理由は分からんが」


 遠くでいつものように鐘の音が鳴る、今や日常の一部なのに何故か心地良い。


 「時間だな……体操に行こうぜ。レオンも起きてるだろうし」


 硬い体を欠伸とともに伸ばし、涙を流した。今度は中途半端な眠気を流すための涙が。

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