私の最後の贈り物
「それで、後一つは?また名前みたいな素敵な贈り物かしら?」
エリニュスは冗談めかして訊く
「とても大事な最後の贈り物だとも」
ラットはまっすぐ見つめ返す。
「今から渡そう。さあ...」
突然天井が爆ぜ、投げ込まれた筒から赤い霧が立ち込める。エリニュスの手足は力を失い、酷く酔ったように倒れる。
霧の向こうでラットが殴られているのが見える。
「目標拘束完了」
マスクと特殊なゴーグルで顔を覆っている。監禁部屋で見た兵士と同じ装備だった。
朦朧とする意識の中、ラットと一緒に倉庫の様な場所に運ばれ
「お目覚めかね?」
(この声、確か基地司令とか呼ばれていた....)
急に意識が覚醒してきた。
「全く、基地の中をこうもネズミが走り回ってはおちおち寝ても居られないなぁラット君?」
「...」
ラットはつまらなそうに目を逸らす。
「全く。そう易々と脱走させるわけが無かろう。今更虚勢を張って何になる?君がここまで来れたのは全て私あっての事だよ。重要な捕虜の見張りがあの程度?周囲の死角も多い建物に収容?挙句に工作が全て見逃されていた?君はもう少し賢いと思っていたが、しかし賢くなかったお陰で私は助かるがな。ガハハハ」
(確かに不自然な点は多かった。ラットの手際は目を見張るものがあるけど、夜である事を差し引いても見張りが緩すぎる)
ただ、ラットは何も言わずにただ落ち着いている。
「君の素性は調べさせてもらったよラット君。いや、ラット少佐どの。君がここに来た時はまさかワルキューレユニットの輸送なんて大仰な特務を帯びているとは思わなかったが。君にしか開けられないとなれば君に開けてもらうしかない。その為に君を泳がせた甲斐もあったものだ。さあ、ここまで言えば頭の足りない君にも私の要求が分かるだろう?さあ!どこにある!私に渡すんだ」
エリニュスは耐えきれず
「これが貴方の計画通りとでも言うの?大勢の兵士が貴方のせいで死んだのに?それに、コアなら...」
「待てエリニュス」
ラットが初めて口を開いた
「コアの取り扱いは専門的だ。今この子の中にあるコアを取り出すには私がやる他ない。」
「チッ...とっととやれ。妙な真似をしたら貴様を殺してやる。おい、拘束は解け」
そう言うとラットは抑えられていた手首を摩りながら
「撃って困るのはそっちだろう。むしろ2階級特進の栄誉までくれるとは」
などと挑発する。
ゆっくりと私の前に立つラットは言う
「では、これから渡そう」




