半身半疑‐006
どうなったのだろうか。
確かに僕とテケ郎はぶつかった。
その感触はあった。
いや、あったのだろうか。プラシーボ効果ってやつかもしれない。
だって、僕の前にテケ郎はいなかった。
前方で受け止めたはずなのに。
横にも、後ろにも、ましてや上にも。消滅でもしたのか。
アレ…?
ガードの体制を解こうと腕を動かそうにも腕が動かない。
頭も、足も動くのに。
上半身だけが金縛りにかかってしまった。
ケガレはゆっくりとこっちに歩み寄ってくる。
勝者の余裕という奴か。クソ。
僕はただ迷子になっただけなのに。
どうして死ななくてはいけない。
テケ郎だって、希望を与えるだけ与えておいて消滅なんて、些か無責任な話じゃないか。
ああ、嫌だ。死にたくない。足は動くんだし逃げようか。
いや、走っても追いつかれるのか。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
…あれ、僕って左腕に鎖付ける中二病ファッションしてたっけ。
甲冑つきで。
っていうか、僕の視界もおかしいぞ。仮面越しのような感覚がある。
落ち着いてきて、だんだん今の違和感を感じ始めたぞ。
どうなって…
『どうなってんだ?』
消滅したはずのテケ郎の声が聞こえる。
『誰も消滅してねえよ!』
「な、なんで僕の心の声が届いているんだ。」
『これがあの鍵の効果か。お前と一体化するという。多分お互いの思考が今ならわかるぞ。』
「うわあ、本当だ。急にテケ郎の思考が流れてきた。気ぃ持ち悪い!」
僕らの身体は一つになり、僕の上半身には鎖で塗れた鎧を身に纏い、仮面で顔が覆われていた。
そう、変身ヒーローのような変身を遂げていたのだ。
『お、どうやら俺は腕を動かせるらしいぞ。』
僕の腕が勝手に動く。僕の腕なのに僕が動かせないなんて気持ち悪いな。
『気持ち悪いは言い過ぎだ。アイツの方へ走ってくれ。』
「ああ。分かった。」
僕がヤツの元へと走っていくと、右腕が勝手に出た。
が、上半身と下半身で別々というのはかなり大きな問題らしく、大した威力は出なかった。
代わりに向こうのキックを腹に受けて、再再度僕たちは吹っ飛ばされた。
「やっぱりダメか?」
『あのなぁ、殴りには踏み込みってもんがあるんだよ。俺が殴るとき、お前はタイミングを合わせて踏み込む。いいか?今の俺達は二つで一つ。息を合わせるぞ。』
「じゃあ右で殴って。事前に決め解けば連携も取りやすいだろ。」
『ああ、そうしよう。殴る手と逆の足を踏ん張れよ。』
僕は頷いて立ち上がり、ケガレに向っていく。
僕の進める足に合わせて、テケ郎は腕を振る。
僕は膝を曲げてケガレの攻撃を避け、テケ郎が掬い上げる様にアッパーを叩き込み、一撃でケガレを粉砕した。
するとケガレは黒板を引っ搔いたような不快な叫び声をあげて消滅した。数個の鍵留めたホルダーを残して。
僕らは一体化を解いて、へたり込んだ。
「こんな戦いに巻き込んじまって悪かったな。」
「まあ、いいかな。生きてるし。こんな体験したことなかったよ。」
「ある方が怖えよ。出口まで案内してやる。」




