半身半疑‐004
必死で逃げた末、現在地が何処かわからなくなった。
「ねえ、俺とお前初対面だよね。」
「うん。吃驚して逃げるくらいには面識がない。」
「扱いひどくね?俺、武器じゃん。」
「テケテケはさ、ここで何してたの?」
謝罪の一言はないのか、と小言を頭に置いて、テケテケは質問に答えた。
「ああそうだな。説明しておこうか。ああいった怪物は”ケガレ”って言ってな。”ケガレ”は死、病気、血…そういった物から生まれる。負の感情とかもな。で、仲間を増やすために人を襲う。俺はそれを防ぐために戦うんだ。」
「でも圧倒的力量差で勝ててなかったよな。」
「うるせえ。アイツに奪われた鍵さえあれば勝てる。そうそう、因みにあのケガレは”ヒダル神”って言ってな。神じゃなくて悪霊の類だな。山の中に迷い込んだ奴に呪いをかけて空腹にさせるんだ。」
ショボくないか。
「ショボいと思うだろ?でも最悪の場合飢え死ぬぞ。」
マジかよ。一番苦しい死に方じゃないか。
データ処理タイムを終えて、僕は口を開いた。
「…テケテケはケガレじゃないのか?」
「テケテケ…って俺のことか?俺はケガレじゃねえ。」
「テケテケじゃないの?まあ動きも遅いかったしな。じゃあ、君は何者で、僕は一体何と呼べばいいんだ?」
しばらくだんまりを決め込んだ後、答えた。
「俺に何者かを名乗る資格はねえ。」
うわあ、キザなセリフ。ってかさっきからこいつ秘密多すぎではないか。
「じゃあ今日からテケ郎な。俺は葦原考。よろしくな。」
「センスね。」
センスがないと言うのはどっちの名前について言っているんだろうか。
考って名前は僕も今まで色々と言われてきたからな。
初見で読めない、とか。
【考】って漢字で読めるのは【かんが】までだぞ、とか。
両親は一体何を考えてこの名前を付けたんだ。
まあ、今となっては知る由もないんだが。
「葦ってよぉ…葦とかあんなクソうんこ…」
あ、僕の苗字に言ったんだ。
え?
苗字?
考でもテケ郎でもなく?
苗字についちゃ先祖のセンスだよ。葦ってそんなに変かな。結構ポピュラーだと思うけど。
「テケ郎って名前には納得したか?」
「ん?ああ。いいぜ。じゃあ俺もカンガルーって呼んでもいいか?」
「呼びにくいだろ。絶対。」
「冗談だよ。センスねえ名前付けられたお返しだ。」
やっぱりセンスかったか。ゴメン。取り消す気はないけど。
彼が名を認めたとき、僕とテケ郎の間に鍵が生成された。
「なんなんだ?これ。」
「おいおい、これがあれば話が変わってくるぜ。なんで出てきたかわからんけども!」
質問に答えろよ、とツッコミを入れたいところだが、随分と喜んでいるようなので言葉を飲み込んだ。
「で、何をするんだ?それで。」
僕の質問に答えるように、自身の二の腕を見せつけた。宛らマスキュラーポーズだ。
その二の腕には錠がついていた。
「ここに鍵を入れて俺は色々な力を引き出せる。」
「色々な力って言うのは?」
「神の力。」
仰々しい回答だ。
「神様の力って何だ?」
「色々だな。種類がありすぎていちいち説明できない。」
「じゃあ一体なんで僕との間に鍵ができたんだ?僕は神なのか?」
ああ、無駄なこと聞いちゃった。
「なんで出てきたかわからん。」
さっきも聞いたわ。その言葉。二度も言わせて悪かったな。




