半身半疑‐001
僕は今年から高校一年生になって、迷子になった。
別に方向音痴じゃない筈なんだけど。
今日だって、道に迷ってるおばあちゃんに道を教えてあげたし。
まあ、その帰りに迷子になったんだけど。
どうしようかなぁ。
スマホは圏外だし、おなか減ったし、なんかめっちゃ疲れたし、いつの間にか空々寂々とした廃墟に行きついただけで。
窓から入ったのが失敗だった。
それにここは多分学校で噂になってた廃墟だ。
”テケテケ”っていう上半身だけの妖怪が出るって噂の。
まあ多分出ないだろう。
いや、こういうことを言うのはフラグってやつだな。
しかし、この建物は一体元は何だったのだろうか。
立地としては森の中。ここに来るまでで千切れた有刺鉄線も見かけたし。野生動物が出るんだろうな。
兎も角、一刻も早くこの建物内から早く出よう。僕の家はこんな廃墟の中に建っちゃいない。
”兎も角”と”一刻”と”早く”って語呂がいいな。ラップが作れそうだ。
うん?廊下の真ん中に人の後ろ姿が見える。こんな廃墟にいる人に無警戒で話しかけるなんて如何なものかと思うが、この時の僕は一人で寂しかったので誰かと話したくてならなかった。
「あの、すいません。僕ちょっと迷子で。外に出られるドアってどこにありますか?」
うんともすんとも言わない。
「あーエクスキューズミー?」
我ながら酷すぎる発音だ。ネイティブスピーカーに言っても多分英語と認識すらされない。だからか、やはりうんともすんとも言わない。
「あの!」
僕はその人の肩に手をかけた。するとやっとその人は振り向いた。
いや、たぶん正しく言うならば”人”なんて言える顔ではなかった。
あまりの鬼鬼しい顔に有名ゾンビゲームのゾンビが振り向いてくるあのシーンを連想した。
「アァアァァァァッァァァァァアアア」
怪物は叫び声をあげた。
「やべええええええええええええええ」
対抗するかのように周回遅れの悲鳴を上げ、僕は全力で逃げた。
「アァァァアアァァァアアァッァッァ」
あの怪物、僕よりも速い。
いや、僕が遅いのか?
さっきから続く疲労感のせいで。
一辺倒に真っ直ぐ走るだけじゃ絶対に捕まるな。




