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転生孤児が幼馴染の死亡エンドを回避する方法  作者: 一色孝太郎


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第64話 逃避行

 フォレストウルフの鋭い牙が迫ってくる。妙にスローモーションだ。


 なんとかナイフを……ダメだ。手が動かせない。


 剣は……届かない。


 万事休すか?


「レイ! レイ!」


 遠くからティティの悲鳴が聞こえてきて、ハッとなった。


 ダメだ。何を諦めているんだ!


 俺は鋭い牙の生えた口の中に左手を突っ込んだ。


「グガッ!?」


 そしてそのまま舌を思い切り掴み、ホーリーを発動した。


「ギャウゥゥゥゥン」


 フォレストウルフはそんな断末魔の悲鳴を上げ、力なく崩れ落ちた。


「はぁっ、はぁっ、はぁっ」


 息が切れ、体のあちこちから痛みが襲ってくるが、まだ終わりじゃない。


 俺はすぐさまヒールを掛け、剣を拾って立ち上がる。


 大丈夫だ。まだ戦える。


「レイ!」

「ティティ! まだだ! こっちに来ちゃいけない!」

「えっ?」


 俺はすぐさま横っ飛びで地面に転がった。するとそこを吹雪が駆け抜けていく。


 スノーディアだ。


 スノーディアの射線から逃れるように木の影に隠れ、周囲の様子を確認する。


 ……やはりあのスノーディアが最後の一匹で間違いない。


 そして、さすがはスノーディアといったところだろうか。


 俺のことを危険な相手だと認識しており、遠くから吹雪で弱らせてから仕留めようとしているのだろう。スノーディアは距離を詰めず、吹雪の射線を確保しようと移動している。当然ながら俺もそれに合わせて動くため、完全に膠着状態へと陥ってしまった。


 ……このままでは埒が明かない。それにずっと監禁されていたことを考えると、おそらく体力が先に尽きるのはこちらだろう。


 ならば!


 俺は意を決して飛び出した。すぐに吹雪が飛んでくるが、次の木の幹の後ろに隠れてやり過ごすと再びタイミングを見計らって飛び出す。


 それを繰り返し、十メートルほどの距離まで近付いた。すると危険だと思ったのか、スノーディアは距離を取ろうと後退し始める。


 今だ!


 俺は一気に距離を詰めようと、スノーディアの真っ正面から突撃する。スノーディアはそれをチャンスと見たのか、吹雪を俺にぶつけてきた。


 すぐさまヒールを発動し、ダメージとデバフを受けるそばから回復させて無理やりに距離を詰めた。そしてそのままスノーディアに剣を突き立てるとヒールの発動をやめ、ホーリーを体内に打ち込む。


「ピュィィ」


 スノーディアは甲高い鳴き声を上げ、そのまま力なく崩れ落ちた。


「レイ!」


 ティティが駆け寄ってきて、思い切り抱きつかれた。


「ティティ、コートが汚れちゃうよ」

「そんなの! レイ! なんであんな無茶を!」

「無茶?」

「スノーディアに正面から突っ込むなんて!」

「ああ、それか。そうだけど、大丈夫だよ。ヒールでくらうそばから治したからね。実質無傷だよ」

「……もう。心配させて」

「ごめん。でも、ほら。ちゃんと全部倒したよ」

「え、ええ。そうね。本当に倒しちゃうなんて……」

「なんだ。信じてなかったの?」

「そんなこと! 私は!」

「うん。ごめん。心配してくれたんでしょ? ありがとう」


 俺はそう言ってティティのことをそっと抱きしめた。ティティのなんとも言えないいい香りが鼻腔をくすぐる。


 と、ティティが泣いていることに気が付いた。


 三年経ち、俺とティティは同じくらいの背丈になった。おかげでこうして抱き合っているとティティの顔がちょうど俺の横にあり、鼻をすするかすかな声が耳元で聞こえる。


「ティティ、心配かけてごめん」

「……うん」


 ティティは涙声でそう(ささや)くように返事をしたのだった。


◆◇◆


 長い抱擁のあと、俺たちはどちらからともなく自然と離れた。名残惜しいが、ずっとこうしているわけにはいかない。


「レイ、そろそろ行かないと」

「ああ。でもその前に」


 俺はスノーディアの胸部を割き、心臓を取り出した。


「レイ? 何しているの?」

「光の欠片を探してるんだ」

「光の欠片? なあに? それは」

「お、あった。これだよ」


 見つけた光の欠片についている汚れを雪で綺麗にし、ティティに差し出した。

 

「え? これってダイヤモンドよね? どうしてモンスターの中にあるの?」


 ティティはそう言って興味深そうに光の欠片を観察している。


「ティティ、これは俺の光属性の魔力を強化してくれるんだ」

「どういうこと?」


 怪訝そうな表情をするティティに手を差し出すと、ティティは光の欠片を返してくれた。


「見てて。こうやって使うんだ」


 俺は光の欠片を使って見せる。


「消えた……」

「うん。これでほんの少しだけど、光属性魔法が強くなるんだ」

「不思議ね。それは私が使っても効果があるのかしら?」

「うーん、どうだろう? モンスターを従えるってことは、多分闇属性なんだよね?」

「そうね」

「属性が違うとダメなんじゃないかな。多分属性ごとにあるはずだから、闇属性を強化するのは闇の欠片になると思う」

「そう。残念ね」


 ティティはそう言うと、寂しげな表情を浮かべる。


「あ! でも魔石が出ればティティでも使えるかもしれない」

「魔石?」

「うん。ちょっと待ってて。ダメでもお金になるし」

「ええ」


 こうして俺は他のモンスターたちからも光の欠片と魔石を回収するのだった。

次回更新は 2024/01/27 (土) 18:00 を予定しております。

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― 新着の感想 ―
[一言] こっちのルートではセレスティアの魔力が人知れず上昇するのか 下剋上かな
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