ノリで視聴者参加型クイズ番組に応募したらテレビ出演することになった話〜予選編〜
その日、飴矢は珍しく日曜日が休みだった。
日曜の昼下がり、まったりとテレビで25枚のパネルを取り合うクイズ番組を見ていた。
けっこう好きなんですよ、クイズ。画面越しに一緒に答えるタイプです。
番組の最後に参加者募集!と表示が。
どうやら、わたしの住む県で予選会があるとのこと。
何それ、めっちゃ楽しそう!そして見つける「兄弟姉妹ペア大会」の文字。
これは!と思いましたね。だってわたしには兄がいる。
生まれは庶民ながらにして現役医師のハイパー賢い兄がなぁ!と、応募する前から「もらったぁぁ!」って感じでしたね。
取り急ぎ一人暮らしをしている兄へメッセージを送ります。
「兄ちゃんの住所教えて」
と、一言。彼も休みだったんでしょう。比較的、早く返信が来ました。
いや、何の疑問もなく住所送ってくるなよ。
妹だとしても、せめて理由くらい聞かなくて大丈夫か?と若干不安に思いつつも「兄弟・姉妹大会」への応募をさくっと済ませました。
ちゃんとクイズ番組の予選会に応募することの承諾もとりましたよ。
ちなみにこれ、応募者全員が予選会には参加できるわけじゃないんですよ。
一次予選って感じですかね。二次予選が筆記試験で三次予選が番組スタッフとの面接。面接の合格で一年間の番組出演の権利獲得。権利獲得者の一部が実際にテレビ出演の流れです。
狭き門ですね。
テレビ?出れるわけないし、とりあえず話のネタになるから二次予選の筆記試験のやつ受けてみたい!と思って応募してました。
わりとくじ運もいいし、兄さえ連れていけば筆記試験のやつ受けられるのでは?と根拠のない自信がありまして。
とりあえず筆記試験の予選会の日はシフト制の職場なので、希望休として提出し休んで参加する気でいました。
まだ応募しただけで何も決まっていないのに。
まぁ、気持ちが通じたんでしょうね。
予選のご案内のハガキが届きましたよ!
バッチリ休みも取ってるし行くか!と張り切っていましたね。
ただ、こう…予選に向けて何をすればいいかは分からず。
とりあえず昔、中古で買ったプレステのゲームソフトのその番組のやつを何回かプレイしました。
そして予選会当日、駅で兄と待ち合わせているけど来ないな?
遅刻した以上、昼ご飯はおごってもらおう。焼き肉かハンバーグか…などと考えていると兄登場。
いや、パンッパンに顔むくんでいるんだけどどうした?!
そしてえらくグロッキーだな、おい。
いわく前日の夜に久しぶりに大学の同期で集まっての飲み会で飲み過ぎたと。
完全に二日酔いである。
仕方ないので昼ご飯はあっさりしたものとする。
自分のオススメのラーメンとうどんの中間みたいな麺料理の店に連れて行くとスープまで完食していた。
元気じゃねぇか。いや二日酔いだし、ただ塩分を欲しているだけ?
二日酔いの兄を引き連れて予選会場のビルに着く。
待合室はしんとしていた。
…ノリできた妹と二日酔いの兄。
なんかみんなケータイやら本やらでクイズしてんの?ガチな空気感に戸惑う。
えぇ…雑談する空気感もないよぅ。
兄は純粋に具合が悪いのかトイレへ行った。
おい、この空気の中置いていくな。
彼も何とか戻ってきたところで、試験会場の別室へ移動。
机の上には番組のボールペンがあった。
記念品らしいよ。ちなみにパネルの色と同じく全4色。
まずは自己PR用紙の記入。
番組出演時もこの紙に書いたことがそのまま伝わる。
趣味とか特技とか応募の動機とかね。司会者とのトーク内容のもとになるそうで、なるべく詳しくちゃんと書こうねと。
趣味は野球観戦とアクセサリー作りかな。
資格ねー…漢検2級はこれでも高校生の時に学内トップの成績で団体内表彰だったからこれと、仕事関係で取った資格たちに空手初段。
おもむろに空手初段。だって、せっかく黒帯だから。
兄はいいよな「医師免許」ってパワーワードすぎだろ。
ただし彼は空手2級だから物理的な意味でのパワーではたぶん飴矢が勝ってる。
得意ジャンルは野球の福岡ソフトバンクホークスとペンギンって書いた。ペンギン好きなんで。
ジェンツーペンギンが最推し。
番組に出たときに一問も答えられない!なんてことがないように、得意ジャンルからその人にあった問題を救済措置みたいな感じで作っているそうです。
まぁ、その問題も他の人が答えちゃったりすることもあるようなので例えば「音楽」ではなく「90年台J−POP」のように書いたほうがいいとのこと。
筆記試験は全30問をわずか8分で解く形式。
回答はテレビだと口頭で言うから、漢字が分からなければ平仮名で書いてもオッケーとのこと。
兄はやればできる子と信じて筆記試験が始まった。
わたしですか?昔からとりあえず分からなくても全部埋めるタイプです!
たとえ自分でも「これ絶対ちがうわ…」と思ってもとりあえず書きます。
それにしても全然出来んってわけではないけど難しいわ。
テレビでの問題より難しいとのことなので、そりゃそうよな。
二人で答え合わせをすると、料理系問題はわたし正解、兄不正解など互いのミスはフォロー出来ている模様だが手応えなし。
ジャンルが!幅広すぎるんだよ。
最近の芸能や映画から政治、四字熟語に歴史や計算問題まで幅広い。
悩んでいたら最後の問題までたぶん辿り着かない。
試験会場前の番組パネルと記念撮影などしつつ、しばし採点が終わるのを待つ。
そして結果発表の時間。今回はいつもより多く会場内では10組の合格らしい。
会場は50人近くいたと思う、参加した午後からの回だけでも。
ちなみに合格ラインは公表されていないし不明。
問題用紙も回収されるから記憶力がよくないと自己採点不可。
こんな流れなんだなぁーと思いつつ、ボーッとしてたら「飴矢兄妹」って呼ばれたわ。
「はい」じゃなくて咄嗟に「えっ」って出た。
いや、まさか呼ばれるとは思ってないからつい。
そして合格者を除いて退室。一気に人が減ったな、これ。
まずは先程の自己PR用紙に貼る写真の撮影があります。
兄、いまだに顔パンパンなんですけど…あまりのコンディション不良で不憫に思う。
撮影が終わると人数が多いので、5組ずつに分かれて順番に番組スタッフさんたちと面接です。
5組の中では最後に答える場所だったから、大人しく聞いてた。
最初の方はほぅ…クイズ研究会に所属を、次の方も世界遺産検定…予選会3度目の出場なんですかそれはまた。
ちょっと待て。呑気に空手初段とか書いてる場合じゃなかったわ。
思っていた資格に趣味と違うわ、これ。
あと特技モノマネっていうならやってくれよ、照れずに!
そしてとても緊張されている方もいて内心「頑張れ!」って思っていた。
自分がこういうときあんまり緊張しないもので、あがる人を見ると若干のうらやましさがある。だってかわいいじゃないですか?
恥じらったり「ドキドキする…」とか言う様子を見るときゅんとくるものがあります。
そうこうしていたら自分たちの番ですね。
「じゃあ次は飴矢さんところのお兄さんから自己紹介どうぞ」
「はぃ゙…」
ごっつい声掠れてんな?!
そして反応めっちゃ鈍いな!
「すみません!彼、今日は二日酔いでコンディション悪くて!普段は!普段はもっとちゃんとしています」
何のフォローにもなってねぇ。ただ、笑いはとれた。
そして何を飲んできたか聞かれて
「ビールとワインと最後に日本酒を…1時過ぎまで…」
ちゃんぽんしてんじゃねぇんだわ。我が家は酒に強い家系だけども、〆の日本酒はさすがにいかん。
「終電は?!待って、そんなに飲んできとったん聞いてないんやけど!」
楽しかったんだな…楽しかったのはわかるが飲み過ぎなんだよ。びっくりして口調もしっかり訛るし欠片も緊張感がない。
その後はまぁ兄妹そろって野球が好きなので好きな選手は?質問に、わたしが永遠の憧れでもある「城島健司さんです!」と答え「古っ」とツッコまれたりするものの比較的スムーズ。※当時2019年
いや、捕手ってテレビに映る時間が一番長いし応援のしがいがあるじゃないですか。
あと子供の頃の憧れって強いよね。
「妹さんのいいところを教えてください」の質問に兄が長考に入り始め「いや、言い淀むのやめてあげて!」と焦った。
なんかいいことを言っていたと思う、忘れたけど。
ちなみに兄のいいところは、
「下校していたら短ランでヤンキーの先輩に急に飴矢妹バイバーイと声をかけられヤンキー怖いし焦っておじぎだけして、帰宅するなり兄にあの先輩知ってる?と聞いたら○○くんたちかな?休み時間に勉強を教えているよーとのほほんと返ってきたので懐の深さを感じた」
というエピソードを話した。
この当時は誰がどう見ても兄妹ってレベルで似ていたので、よく二学年上の先輩たちから声をかけられていたんですよね。
仏のように穏やかで真面目なタイプの兄とヤンキー先輩たちの接点が不明だったが、まさかの友達かつ教え子ですか。
なんかもうこの人には一生敵わないなと思ったし、ほのぼのエピソードだったのでこれを採用。
そして「この予選会にはどちらが応募を?」との質問には「妹だろ…」と会場全体の空気を感じつつ「わたしです!」と答えたところ「でしょうね」って感じだった。
何か色々とトークの毛色が前の方々とは違うなと思いつつも面接終了。
後日、面接の合格者には一年間の番組出場権を知らせるハガキが届くそう。
ペア大会として応募しているわたしたちには「番組の都合上、一人での参加になることもあるけれど大丈夫かどうか」の確認もあった。
選ばれるとしてもたぶん兄だろうし、二人とも一人でも構わないと答えました。
何やかんやで面接まで進んで非常に楽しい一日でしたね。
ダメかと思っていたものの、その緊張をしない様子とキャラが立っていたおかげか…一年間の出場権をその後ゲットしたのでした。
一年間夢を見れるね!と楽しみにしつつ過ごし、結局期限は切れてしまったのでした。
さて、出場権を失って数ヶ月後のとある夏の日。
番組がある大阪府の市外局番からケータイに着信が。
留守電を聞くと、某感染症で予選会が中々開けない。そこで最近、期限が切れた方に出演依頼をしているとの内容。
慌てて折り返し電話をし…一週間後に大阪でテレビ収録が決定しました。
さらに兄なしで一人での依頼でした。
ペア大会ってあんまり数ないから…。
即答したもののまさかのぼっち参戦!どうなる?!
本戦編は「続・ノリで視聴者参加型クイズ番組に応募したらテレビ出演することになった話〜収録編〜」にて。
9月24日(日)昼12時に投稿予定です。