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変夢奇譚 ~くだらない夢のよせ集め~

確率 (変夢奇譚 ~くだらない夢のよせ集め~ 第32夜より)

作者: Ak_MoriMori

変な夢を見た。


  ひどい状況から、夢が始まった。


  私は、B国のスパイ・・・。

  現在、B国はA国と戦争中であり、劣勢に陥っていた。A国の最新兵器により、

 形勢が逆転してしまったのだ。私は、その秘密を探るため、単身A国に乗り込

 み、諜報活動を行っていたのだが・・・今、私は、いい言葉で言えば『取り調

 べ』、悪い言葉で言えば『拷問』を受けている・・・。


  私は、拷問を耐え抜き、沈黙を固く守った。

  私の意志の強さに、ほとほと手を焼いたのであろう。尋問官が、私に耳元でさ

 さやく。彼の瞳は、キラキラしている。きっと、私をイタぶる新しい方法が、思

 い浮かんだに違いない・・・。


 「貴様、よくもまあ、頑張るね・・・素晴らしい・・・まさに脱帽。

  吾輩は、そんな貴様に提案する。これから、ゲームを始めよう・・・。

  なあに・・・簡単なゲームだ。それに勝てば・・・貴様は・・・自由だ!」


  その言葉、信用できるはずはない・・・。だが、度重なる拷問により、思考回

 路が鈍っている私は、若干の希望を抱いてしまう。


 ・・・・


  私は、いましめをとかれ、机の前に座っている。

  尋問官が、目の前に来て、手にした拳銃を机の上に置き、話し始めた。


 「貴様、ロシアンルーレットは知っているな? リボルバーに弾を一発込めて、

  自分の頭を撃つ・・・度胸試し。あれを、貴様にやってもらう・・・。」


  尋問官は、弾を机の上に並べていく。


  一発、二発、三発、四発、五発・・・?


  そして、それらをリボルバーに装填し、シリンダーを適当に回転させると、私

 の前にリボルバーを置いた。

 

 「普通のロシアンルーレットでは、面白くない・・・生存率は、六分の一。

  貴様は・・・その六分の一にすがるのだ。」


  私は、リボルバーを手にし、自分のこめかみに押し当てる。

  指がひどく震えた。こめかみにしっかり押し当てていなかったら、きっと、銃

 を落としていただろう。撃鉄をなんとか引き起こす。


 (私の心の声)  

  クソッ! 六分の五・・・約八十三パーセントの確率で、俺は死ぬ・・・。

  だが、俺は、こんな時のために・・・ラノベや漫画を読んで研究してきたの

 だ。どうやって、こういう危機的状況を回避するかを・・・。

  大丈夫・・・落ち着け・・・落ち着くんだ! 考えろ! 考えろっ・・・!

  ・・・

  ・・・

  ・・・

  ポク・ポク・ポク・チーン・・・閃いた! うん、解決方法は・・・なしっ!


  ・・・私に、選択の余地はないのだ。

  引き金を引くしかない・・・。


  尋問官が、私のことをニタニタしながら見つめている。

  その目は、こう言っているかのように思えた。 

 「貴様に・・・引き金を引けるのか?

  引けるもんなら・・・早く引いてみろ!

  この臆病ものがッ!」


  私は、意を決した。

  よくわからない声を発しながら、震える指で・・・引き金を引いた!

  カチンッ! 弾は出なかった・・・。


  助かった・・・。

  私は、この勝負に勝ったのだ!

  

  と、その時、頭頂部につよい衝撃を受けた。

  そして、私の意識は、ものすごい勢いで、消失していく。


 「まったく・・・面白くない。結局・・・私が手を下してしまったではないか。

  貴様・・・生き残れるはず・・・ないだろぉ。」 

  尋問官は、そう、私に話しかけ、唾を吐きつける。


  私は、よく理解できなかった。

  だが、体が、急激に死へと向かっているのは間違いなさそうだ。

  目がよく見えなくなってきた。だから、急がねばならない。

  奴は、忘れている・・・いや、私のことを甘く見ているのだろう。

  

  私の手には、まだ、リボルバーがある。

  私は、力をふりしぼって、撃鉄を引き起こし、腕をあげる。

  リボルバーを・・・去っていく尋問官の背中に向ける。

  両腕で支えられないから、命中することは、ほぼないだろう・・・。

  だが、さっき、私は、六分の一の確率の生命いのちを得たのだ。

 

  もしかしたら・・・。

  つぎは、もっともっと低い確率の勝利を得られるかもしれない・・・。

 

  私は、指に最後の力を入れ、引き金を引いた・・・轟音が、鳴り響いた。


そこで目が覚めた。

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