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悪霊探偵  作者: エビス
導入
4/21

導かれるように

ソファーに座り、リモコンをいじってテレビのチャンネルを次々と変えていく。


普段、テレビは殆ど見ないがこの一週間は別だった。


少しでも情報が欲しい。

夏海の行方に関する情報が。


だが、


『連日続く熱気でコンクリートが・・・』


『海外では・・・』


『夏を乗り切る・・・』


もうどこのチャンネルでも、やっているのはこの猛暑に関する番組ばかりだ。

夏海の行方について報道している所はない。


ほんの数日前までは、こぞって夏海の行方について報じていたというのに警察が捜査の打ち切りを発表した途端、報道の波が引いていった。


まるでそんな事件など存在していなかったかのように。


「ふざけんじゃないわよ・・・」


悪態をついてテレビを消す。


仕方ないのでネットから情報を集める事にしたが、出てきた記事の大半は今まで警察が発表し、報道された情報と大差なかった。


「はぁ・・・」


ため息をつき、スマホの電源を切って放り投げる。膝を抱え、目を閉じて俯いた。


そうして、これまで報道された情報を思い返す。



まず行方不明当日、夏海は朝から部活へ行っていた。

部活は8時半から12時までで、特に変わった所もなく終了、そして着替えを済ませて13時頃には学校を出て、部活の友人と駅前へ向かっている。


(学校から駅までだいたい15分程度だから、13時15分ぐらいには駅についていたはず・・・)


一緒だった友人はそこで電車に乗るため別れ、夏海は一人で自宅方面へと歩いて行った。

その時の様子を映したコンビニの防犯カメラが見つかったのでここまでの足取りは間違いない。


その後は夜になっても自宅に帰らず、行方が分からなくなった。


警察はこの情報を元に、駅から自宅までの聞き込みを重点的に行った。

だが有力な目撃情報は得られなかった。


手掛かりなし、


一応、自宅マンション内も調べられたが、そもそもエントランスの監視カメラに夏海の姿が映っておらず、彼女はマンションにたどり着く前に姿を消した可能性が高かった。


警察の捜査はここで止まっている。



これらの情報は全てテレビやネットから手に入れたものだ。

私が直接聞いたわけでも見たわけでもない。


本当なら自分で探しにいきたい。

しかし、それは出来なかった。


もし誘拐や何らかの事件に巻き込まれている場合、犯人が近辺に潜んでいる可能性があったからだ。

学校からは生徒への外出自粛が言い渡され、母からも家でじっとしているように言われた。


学校も親も、子供を守るための当然の対応をしている。


ただ、それが納得できるかはまた別の話しだ。


(ちくしょう・・・!)


膝を抱えたまま唇を噛み締める。


最初の3日はひたすら夏海の無事を祈った。

どうか見つかりますように、と。


だが、今はもう祈る事すら出来なくなっている。

祈っても時間だけが過ぎていくばかりで、状況が一切好転しないからだ。


最早、頭にあるのは無関心になっていく世間と見つけられない警察への憤り、そして、


何も出来ない自分への怒りだけだった。



ガチャ、



無力さに震えていたその時、玄関先で物音がした。

俯いていた顔を上げそちらの方を見る。


もしかして来客か?と思ったけどインターホンが鳴らない。

現在母は用事で外出し、父は仕事に出ているので家には私一人だ。


仕方なしにソファーから立ち上がって玄関に向かう。

だが出入り口の扉の先に人の気配はせず、首を傾げていると壁に埋め込まれた我が家のポストに一枚のチラシが入っているのに気がついた。

どうやらさっきの音はポストを開けた音だったらしい。


チラシを取り出す。

そこには黒いインクでこう書かれていた。


出雲(いづも)探偵事務所 ご依頼お待ちしております』


「探偵・・・」


無意識に呟くとチラシの全体を見る。


すごくシンプルというか、無機質なチラシだ。

書いてあるのは調査項目や所在地だけ、飾り気など一切なく、最低限の情報しかない。


それに、


「これは・・・ 探偵の仕事なのかしら?」


浮気調査などといった調査項目の一番下に『お祓いも承ります』と記されている。


「お祓いって・・・」


正直、悪戯の可能性が高いと思う。

だけど、どうにも気になって所在地をスマホで調べてみた。


すると確かに名前のビルがある。

それも私の家から近い。歩いて行ける距離だ。


ある考えが私の中で渦巻く。


もしかしてこれはチャンスなのではないか?

警察は動かない。マスコミも当てにならない。


ならば夏海の行方は自力で探すしかない。


その時、探す手段は多い方がいい。

この探偵事務所が頼りになるかは分からないが、少なくともこのまま家に居るよりはマシだろう。



いや、マシになると信じたい。



「よし・・・!」


私は一度自室に戻り、部屋着から外着に着替える。


母が帰ってくるのは夕方だ。

事務所に行ってダメそうだったら依頼しなければいいし、依頼する場合でも今から行けば余裕で帰ってこられるだろう。


あとはお金か。

人探しの相場はどのくらいなんだろう?


(とりあえず私が出せるのは10万ちょい・・・ これでどこまで動いてくれるかしら?)


スマホで調べてみると相場は状況によりけりで、一概にコレといった数字は出てこない。


(まずは相談してからってことか・・・)


机を開け、封筒に入れていたお金を取る。

いざというときのために貯めておいたお年玉だ。


それとさっきの探偵事務所のチラシを水色のポシェットに突っ込み、外に出た。

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