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ミストリア王国編15

自宅に戻り執務室にいると、30分も経たないうちに息を切らせる事もなくカナメが戻って来た。



「ヒイラギさん、サラサ様に伝えて来ましたよ。詳しい話しは後日と言う事にしてあります」


「ありがとう、助かったよ」



本来なら、ヒイラギもカナメも他の諜報員と同じようにしばらく遠くから護衛する予定だったが、急遽変更し、既に配置に付いていた諜報員だけを残してその場を後にしていた。



「神眼を使ったんだけどさ、剣聖、あいつがカザリアの黒幕だったよ」



ソファに座ってメイドが淹れてくれた珈琲を飲みながら、結果をカナメに伝える。



「剣聖!?あのサファール・レイモンドですか?」


「そう、そのサファールだね」


「月光の情報網でも黒幕に関しては何も分かってないんですけど、神眼て恐ろしいですね…」


「俺も凄いとは思うけど、まぁ攻撃的な要素は全く無いのが欠点と言えば欠点だけどね」


「いやいや、それが無くても恐ろしくチート能力ですよ。しかしサファール・レイモンドですか、なかなか厄介な相手ですね。ミストリア王国が誇る4英傑の1人、剣聖と謳われる実力と王国騎士団総隊長の地位、そして3大公爵家の次期当主。人生勝ち組確定なのに、何故裏組織なんてやってるんでしょう?」


「他に手に入れたい物があって、今の現状には満足してないって話だろ。で、悪神契約者って知ってる?」



瞬間、カナメの表情があからさまに曇る。



「ヒイラギさんには、リザラズの使徒って言えば分かりやすいんじゃないですか?」


「マジか、それと同じって事か」



リアルワールドでリザラズとは魔神リザラズの事であり、その恩恵を一番受けた存在がリザラズの使徒だった。


魔物と同じようにプレイヤーに取っては敵、表立って有名な使徒もいれば、使徒である事を隠している使徒もおり、その全てがイベントの重要な場面で登場し、魔神の恩恵により強化された圧倒的なステータスでプレイヤーを地獄に叩き落としていた。


当時は余りにも強過ぎてプレイヤーからクレームが殺到し、運営が使徒のステータスを調整したのは有名な話しで、ヒイラギも結構苦労しており、驚くのも無理は無かった。



「この世界の堕ちた神、悪神フィピュルス。裏社会では崇拝の対象で、どんな方法かは分かっていませんが、そのフィピュルスと直接契約を交わし恩恵を受けた者を悪神契約者と言うんです」


「確か悪神契約者12席ってなってたから結構契約者っているの?」


「単純に実力順とは違うみたいですが、悪神フィピュルスと契約した順番が席順になっているようで、殺戮者の二つ名でSSクラスの懸賞金が掛けられているモズ・オーリスで、その席順が第14席、その事から少なくとも契約者が14人いる事が判明してます」


「おいおい、世界観が似てるだけで充分面倒が腹一杯なのに、そんなのまで似てるって本当に迷惑な世界にこさせられたな…。この世界の裏組織に大量にプレイヤーが流入している事を考えれば、アホなやつが契約者になっててもおかしく無いし、今はもっと増えてるんだろうなぁ」


「ヒイラギさんはリアルワールド時代に使徒とやり合った事はあるんですか?」


「あるよ、使徒が絡むクエスト報酬はかなり良かったけど、正直面倒だったし、何回か死にかけたよ」


「使徒が絡むような高難度のクエストに遭遇した事が無くて、ネット系の情報でしか知らないんですけど、ヒイラギさんでもそんなレベルだったんですか」


「最後の方はレベル上げとお金稼ぎで高難度のダンジョンに潜ってばかりだったから、やり合った頃と今では多少結果とか違うだろうけど。ただまぁ悪神契約者がリザラズの使徒と同じレベルかは分からないけど、どっちにしろ面倒な存在なんだろうし、隠居生活がまた遠のいたなぁ、あーやだやだ」



ソファにもたれ掛かり、目を瞑って上を向きながらヒイラギが愚痴ると、それでもヒイラギさんが一番化け物じゃないのだろうか?とカナメは心の中で思いながら苦笑を浮かべた。



「とりあえず現状はまだサファールとやり合う訳にもいかないし、表立った活動は控えるしかないな。って事で2日間は他に任せて屋敷でのんびりしてるか」


「そうですね。素性が分かった今は、サファールがルクス支部の壊滅原因を直接確認する為に同行してきた可能性がかなり高いですからね。私は動向を探りながらヒイラギさんの痕跡の消去をしておきます」


「よろしく頼むよ」



ヒイラギがそう言うと、カナメが立ち上がり部屋を後にした。





⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎





闇夜に染まった深夜0時過ぎ、サラサ邸に隣接するように騎士団の建物があり、その地下に1人の男が現れた。


市街地に点在する騎士団の建物もあるが、ここはサラサを護衛する任務も兼ねたルクスを統括する騎士団本部である。


そして、その地下には重要性の高い犯罪者が捕らえられている牢獄があり、その入り口に立った人物は警備の近衛兵2人に声を掛けた。



「申し訳ないが、捕らえられているガルーゼに王都に関する情報を聞き出せないか直接会いたいのだが、通して貰えるか?」


「「サファール様、お疲れ様です!」」



突然現れた剣聖サファールに、衛兵の2人が驚き返事をする。


地下の牢獄には、ヒイラギによって壊滅させられたカザリアルクス支部の支部長ガルーゼが捕らえられていた。



「大変申し訳ありませんが、サラサ様より誰も通すなとの命令が降っておりますので、許可が無ければサファール様でもお通しする事ができません」



そう言うと衛兵が同時にサファールへ頭を下げる。



「どうしても無理だろうか?」



困ったような表情で問い掛けながら、サファールがそっと帯剣している剣に手を伸ばそうとしすると、後ろから声が掛けられた。



「サファール様、大変申し訳ございません。我が主人より厳命が降っており、ご理解頂けると助かります」



そう言ったのは、アイギースト家の執事長ベールだった。



「そうか、すまなかった。私も立場上なかなか進まない調査に焦っていたのかも知れない。君達の立場も考えず無理を言ってしまったね」



サファールに取って、ベールの登場は誤算だ。

立場を堂々と使い情報収集したが、なぜかカザリア壊滅の情報が上手く集まらなかった為に、カルーゼが収監されているここに赴き、直接情報収集する予定だった。

万が一の場合は衛兵を切り伏せ裏工作も考えていたが、このタイミングでベールはマズい。

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