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ミストリア王国編14

既に来慣れた感じのあるサラサの執務室で、ヒイラギがソファに座りサラサと対面していた。


いつもと同じようにヒイラギの後ろにはカナメが立ち、サラサの後ろには執事長のベールが立っている。


そもそも100万人規模の大都市を治める者に、普通であればそう易々と会える訳は無いのだが、いつもの様に呼ばれたから来ただけ、のスタンスでヒイラギは気負う事もなく挨拶をして出された珈琲を口に運んだ。



「指名依頼の内容は何ですか?」



カップを静かにテーブルに戻してヒイラギが問い掛ける。



「これは極秘事項になるんだけれど、3日後にレイティーア王る女がルクスに来るの。期間は決まっていないけれど、しばらくの間この屋敷に滞在する事になるから、その期間の護衛を貴方に頼みたいの」



ヒイラギに取っては想定内の話だった。

実際この極秘情報は先日カナメより聞かされていたからだ。



「特級魔法師と剣聖がいるのに、俺が必要ですかね?」



その言葉に、サラサとベールに僅かだが動揺が見て取れた。

ただその動揺は一瞬で、会話は続けられた。



「さすが月光ね、今回は極秘だから王女の他に王女専属のメイドが1人、そしてリリアと部下が2人だけ。剣聖は送り届けて2日ほど滞在したら王都へ戻る予定なの」


「だとしても、アイギースト家の近衛団もいるでしょう?」


「それでも今回は不安だから頼んでるの。王女に何かあったらそれこそ取り返しが付かないわ。その為なら保険は多い事に越した事はないもの」


「突然短期間に3度も襲撃された事も、レイモンド家の事も考えれば、そりゃ保険も掛けたくなりますよね」



そのヒイラギの言葉に、サラサとベールは今度こそ動揺が隠せず驚きの表情が現れたが、本人達は別段隠す気はないようだ。



「驚いたわ、私でもまだ3度襲撃された詳細は知らなかったわ」


「ウチ自慢の事業の1つですから。あ、月光は正式にアラベス商会が吸収して情報統括部門になりまして、情報販売と護衛の事業を新たに始めたので、今後もよろしくご贔屓に」



手を1つ叩き、言い忘れてたとばかりに笑顔でヒイラギが伝える。


サラサも驚いたこの情報は、3大公爵、しかも王より信頼され王女を一時的に預かるサラサもまだ把握していない内容で、ヒイラギとしては自社の情報販売部門の営業的な意味合いもあり話しに出した側面が大きい。



「期間は王女の滞在している間、ヒイラギさん個人に対する護衛依頼に日で100万ジニー、アラベス商会に対する護衛と情報提供に1日100万ジニー、そして王女が無事に滞在を終われば成功報酬として1000万ジニーとアラベス商会に対してアイギースト家の御用達の商会として採用するわ」


「かなり破格の条件ですね。金額よりも商会として考えれば御用達として採用されるのはかなり大きい意味合いがありますから」



カナメ個人で言えばSランクハンターを雇う料金としては一般的であり、商会としても王女の護衛と情報提供ならば、それなりの人員を割くのでこれも一般的である。


ただし、これらは期間未定、即ち30日になるのか、100日になるのか分からない状況であり、その上でこの報酬を提示するのは破格で、更に公爵家の御用達商会と言うのは、商会の格を上げ、公爵家が信頼を寄せる商会として周りに与える影響は非常に大きい。


御用達と言う条件は、今回ヒイラギにどうしても引き受けて欲しいサラサが、ヒイラギにどのような考えがあるか分からないが商会を大きくしたい意向があるのは知っており、秘策として用意した条件だった。


サラサにしてみれば、ヒイラギとの関係性をより密接にしたい思惑もあるので、さすが公爵と言うべきか。



「貴方やアラベス商会との関係性を良いものにしたいのよ。だから受けて貰えないかしら?」


「断る理由が無いんで、受けますよ」



サラサに思惑があるように、ヒイラギにも思惑がある為、断る理由はなかった。



「助かるわ。レイティーア王女は3日後の正午、秘密裏にルクスに入るから、剣聖が王都へ戻る2日後から本格的な護衛をお願いする形になるわ」


「分かりました。こちらは3日後の来訪時から目立たない様に護衛はしとくので安心しておいて下さい」



サラサが安堵の表情を浮かべたのを見たヒイラギは、そう言ってカナメと共にアイギースト家を後にした。





⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎





事前の情報通りに正午過ぎ、2台の魔道馬車が連なってルクスの一門を通る。


見た目に派手さは無いが、所々に施された意匠に高級感が見て取れるがいやらしさは全くなかった。

実際特殊な魔道馬車で、中は空間拡張の魔道アイテムが使用されており、実際の倍の広さは確保されている。


前の魔道馬車には、ミストリア王国のレイティーア王女と王女付きの侍女が1人、そして護衛役の特級魔法師リリア・アイギーストが乗っており、後ろの魔道馬車には剣聖サファール・レイモンドとリリアの部下である魔法師2名が乗っていた。


全て事前の情報通りで、一見何の問題もない。

だが、それを少し離れた目立たない物陰から見ていたヒイラギの表情は険しかった。


一定の距離を保ちながら、アラベス商会の情報統括部門の諜報員4人が目立たず護衛しているのを確認すると、ヒイラギが隣のカナメに話し掛けた。



「カナメくん、詳しく説明は後からするから、申し訳ないけど大至急剣聖には俺の情報を一切話すな、とサラサ様に伝えて欲しい。できれば先回りして」


「分かりました。では行ってきます」



言ってすぐにカナメの気配が消えると、ヒイラギは心眼を使って調べたステータスを再確認する。



ステータス

名前  リリア・アイギースト

年齢  25

性別  女性

種族  人族

職業  上級魔法師・覚醒者

レベル 68

体力  B・47

筋力  C・31

魔力  S・72

知力  S・60

俊敏  B・41

スキル 氷結Ⅳ

備考  3大公爵アイギースト家の次期当主

    ミストリア王国魔法師団総隊長

    ミストリア王国4英傑の1人

    


ステータス

名前  レイティーア・ミストリア

年齢  20

性別  女性

種族  人族

職業  上級回復士・覚醒者

レベル 60

体力  C・33

筋力  D・21

魔力  S・68

知力  A・55

俊敏  C・36

スキル 癒しの恩寵Ⅲ

備考  光の加護

    ミストリア王国王女



ステータス

名前  サファール・レイモンド

年齢  34

性別  男性

種族  人族

職業  超級剣士・覚醒者

レベル 82

体力  S・75

筋力  S・76

魔力  A・51

知力  A・50

俊敏  S・72

スキル 魔剣使いⅣ

備考  3大公爵レイモンド家次期当主

    ミストリア王国騎士団総隊長

    ミストリア王国4英傑の1人・剣聖

    悪神契約者第12席

    裏組織カザリア現当主

悪意Ⅴ



意識や知識で神眼の性能が変わるのかも知れない。

そこには至極あっさりと、欲しかった情報でもあり、国家機密レベルの情報でもある事実が記載されていた。


あのミストリア王国最大の裏組織カザリアの当主が、3大公爵家の1つレイモンド家の次期当主であり、4英傑の1人である剣聖サファールなどと公になれば大変な混乱を招くだろう。


そして何の証拠も無い現状、サファールに対してアクションを起こせば、糾弾されるのはヒイラギ自身だ。


現状多少ランクの高いハンター兼商会店主でしかないヒイラギと、4英傑で3大公爵家次期当主では、どちらが信用され、信憑性があるかなんて考え無くても分かる話だ。


ただし、行き着く答えが分かった以上、指を咥えてスルーするつもりはヒイラギには無い。

気になるワードも含めて情報を集め、合法的に駆除するか、そう考えて、カナメを待つ事にした。

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