#5 防具屋【飛ばない猫の為の店】!(1)
ギャルでもあるリノンには、(衣装を求めて)ショッピングする姿が良く似合います。
今あーしはドナキロを連れて、聖女服を買う為に街へと繰り出してる。
ドナキロとバトってからコイツが目ぇ覚ますまでの間、あーしは暇つぶしに寺院に置いてあったこの街の流行本的なのを読んでてさ。
そこに載ってた女向け防具ブランド【ナナ・クゥ】のページを見付けて気に入って、じゃあソイツの聖女服を買おうってなったワケ。
この街――フェイルンレイズはファリシア教の総本山でもあるファリシア寺院が在るだけあって、結構スゴイ活気してる。
ニホンのコンクリート製の建物とはまた感じの違う、木造だったり石製だったりの民家や店屋が、あーしの目に新鮮に映る。
「はぐれんなよドナキロー」
「それはこっちのセリフなんじゃい。リノンちゃんはこの街は初めてだというのに、よくそんな物怖じせず歩けるんじゃい」
「まーニホンでもここ位わちゃわちゃしたトコで遊んでたかんな」
あーし達の他にもトーゼン歩行者が居てる。
赤だったり緑だったりのぶっ飛んだ髪色をした、所謂街人達ってヤツだ。
どーやらポリエステルのサラサラした感じとは違う、麻素材っぽいややダボっとした感じの服装が主流っぽい。
んー、ちびっこ達や露店の作業員とかは、簡素な造りだけどより動き易そーな綿素材の服着てるな。
そりゃあこの世界でだって服装の幅そのものは広いか。なるほどなー。
服装の流行ってもんを追うには、こーして街の連中の格好を自分の目でじかに観察するのも大事。ニホンでもよくやってたぜ。
これが結構楽しーんだな。
まあホントはそんなウキウキしてばっかでもないし、転移してからの初めての街に物怖じしてねーワケでもねーんだけどさ。
けど背すじをピンと伸ばして歩くのが癖付いてたから、きっとドナキロにはヘーキな感じに見えたんだろな。
「おい見ろよ、あの子ニホン人だぞ」
「転移したてか? あれジョシコウセイって格好だろ」
「あらまあ、ウチの子と変わらない年頃だってのになんともステキだねぇ」
「なんかこう内側から華やかオーラが出てるぜ」
老若男女問わず、すれ違う街の人達が興奮気味にあーしを見てる。
――正直、分かる。
いや自惚れとかじゃなくてさ。
オンナは固くならずしなやかにしてると、それだけで可愛さが三十パーセント増すもんなんだ。だから分かる。
にしても皆にとっては、このブレザーと紺のプリーツスカートがそのまま『ジョシコウセイ』って存在と結び付くのな。
それだけこのゼルトユニアじゃニホン人の転移が珍しくないってことだ。
……まあ、あーしがホレたナナ・クゥって防具ブランドを立ち上げたのもニホン人らしいし。
サイジョウ・ナナカ――それがソイツの名前。
ニホンじゃファンタジーテイストを得意とするイラストレーターだったんだとさ。
――(2)につづく!――
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