#4 あーしの魔力を見せてやる!(2)
オーク・ドナキロ。一人で寺院に入れる、勇気あふれる漢です。
※
あーしとデゼルは最初に出逢ったファリーリーの神像がある奥の間で、目覚めたオーク野郎の話を聞いてた。
コイツ、ドナキロって名前なんだってさ。
「実はワシが住むオークの里に、魔王軍の先兵が『我らの同士になれ』とやって来おったんじゃい」
「デゼル、魔王軍ってなんだよ?」
「ゼルトユニアに蔓延る悪しき魔物の軍勢です。しかし軍の主たる魔王は、今の時代では存在しておらぬのですがな」
「その通りじゃい。しかし軍の一部は最近その動きを活性化させておってな、勢力を増強する為にワシらのような中立の魔物まで取り込もうとしとるんじゃい」
「なんか大変そーだな」
「そうじゃい。じゃからワシは里を代表してこの寺院にファリーリーの加護を授かるべくやって来たんじゃい。……その後は、お前達も知っての通りじゃい」
成程。こりゃあマジで寺院側に非があるな。
「確かにワシらオークは人間と完全に友好関係を結んでるワケではないんじゃい。しかしファリーリーは今のゼルトユニアに於いて、調和の要ともいうべき神……。ワシらが一番に頼るのはかの女神の他には無いんじゃい」
おぉ……。ソイツ、ニホンの読モに『きゃーきゃー』言ってた程度のヤツなんだけどな……。
「なあ、リノンちゃん」
「えっ、どど、どーしたっ!?」
ヤッベ、急に話し掛けられたからちょっとキョドっちまったじゃねーかっ!
「リノンちゃんやデゼル司祭はそんなこと無いと分かってはいるが、しかし他の修道士らはワシを赦してはくれんと思うんじゃい」
「そ、それはえと、どーだろーなぁ……」
「隠さなくていいんじゃい。仮に二人が注意して連中が態度を軟化させたとしても、そんなものは上辺だけのものに過ぎんのじゃい。そしてそこに生じる淀んだ空気では、ここで本当の意味での女神の加護は受けられんのじゃい」
ぐぅぅ……。何も言ってやれねーんじゃいぃ……。
確かに一人でもコイツを認めてやりゃあそれでオッケーなんて、そんな簡単なもんじゃねーよな礼拝ってのは。
それが出来るんなら、あーしの転移前でもデゼル一人でイケた筈なんだ。
「ふむ」
デゼルはそうやって一唸りするだけだった。……きっとあーしの意思に事を任せるつもりなんだろーな。
うーん。だったら――。
「なあドナキロ。しばらくの間、あーしのボディガードとして働いてくんねーかな」
「ぼ、ぼでぃがーど?」
「ああ。あーしはこれからこの寺院で聖女をやってくんだけど、何もずっとこの中だけで生きてくつもりはねー。けど右も左も分かんねーこのゼルトユニアでいきなりお一人様行動するってのは、流石にハードだ。司祭のデゼルを連れ回すってワケにはいかねーし」
最後のセリフは、わざとデゼルの顔を見ながら言った。コイツにもノッてこさせる為にな。
「……おお、それは妙案ですな。オーク族の腕力なら多少の危険は撥ね除けるのも造作無い、私からも是非願いたい」
よっし。やるじゃんデゼル、ナイスアシストだ!
「じ、じゃがのう。オークのワシを連れて、逆にリノンちゃんが修道士から変な目で見られはせんか?」
「それこそ逆だよ! あーしと一緒に行動してく内に、修道士達もいつかドナキロが役に立つヤツなんだって思い知ることになる。あーしがぜってーそーさせるっ!!」
「ぐ、ぐむぅ。なんか最後の方、言葉の圧が強過ぎてまた逆に不安になってきたんじゃいぃ……」
――ばんっ!
ごめん、今のは最後の一押しに向けてあーしが机を叩いた音っ!
「ウダウダうっせー! このまま里の仲間の所に手ぶらで帰ることになってもいーのかよ。お前族の代表なんだろ、てことはあれだ、里一番のイケメンだってことだろっ! だったら根性見せなっ!」
テンションアゲて、ずいっとドナキロへと顔を近付けるっ!
「い、いけめん……そ、そんなことは――! ……いや、そうじゃな。どうあれもうひと踏ん張りさせてもらえるんなら、ワシはリノンちゃんに仕えさせて貰うと決めたっ! 決めたんじゃいぃぃ!!」
――っしゃあっ!
良く言ったぞ、お前はホントにオークのイケメンだよっ! オークの顔の基準は知らんけどっ!
「なら、これからよろだぜドナキロ!」
「ふふっ。それでリノン様、今後まずはどうなさるおつもりかな?」
デゼルの質問にあーしは、自分のブラウスシャツの襟をぎゅっと掴んでこー答える。
「そりゃあなんつっても見た目だな。いつまでもニホンのカッコのままじゃ居られねーし、あーしに似合うサイッコーに可愛い聖女服を手に入れてぇっ!」
「成程、寺院のアイドルとして良い決断をされましたな。目星などは付けておいでですかな?」
「銘柄だったらナナ・クゥだな、ラインナップの特徴がマジあーし好み。さっそく街で見てくるつもりだっ」
さあこっからホントの意味でゼルトユニアの世界へと飛び出すぜっ。
あはっ、なんか楽しくなってきたっ!
――#4 おわり!――
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