四話 苦手なタイプ
ふとらむと目が合うと、うっとりとした様な表情を俺へと向ける。
「ホント、いっけめーん♡」
ボソリとらむが俺に何かを呟くが、皆の話し声にかき消されて何を言ったかは分からない。
口の動きだけでも何と言ったかまでは分からなかった。
「よし、じゃあ誰から歌うー?」
「私恥ずかしいから後でー!」
「えぇー、ずるっ!じゃんけんで決めようぜ」
「まあ、そうだねその方が平等だし早いか」
何故か俺とらむだけが孤立しているような、皆との間に壁一枚隔てられているような、そんな感覚にすらなる。
先程までおとなしかった女子達も緊張がほぐれてきた様で、各々男子と話したり、デュエットしたりと打ち解け始めている。
「ねえねえ紗烙君?紗烙君は普段どんなアニメとかゲーム見たり、プレイしたりしてるの?」
皆の様子を見てボーっとして飲み物を飲んでいると服を軽く引っ張られその方向へと目を下せば、らむがかなり近い距離におり、上目遣いで俺を見上げていた。
普段画面の中の幼女としか、触れ合わない俺は生身の女の子への耐性が無く、思わずドキッとしてしまい
少し距離を取る。
「あぁっ、そんな離れなくても良いじゃない♡」
「いや、みんないるしさ」
「じゃあ今度二人っきりで色々お話ししない?」
なんだか嫌な予感しかしないのだが、二人で合う約束を突きつけられてこういう時に断るスキルが無い俺は渋々頷いた。
「絶対に約束だよ?約束もし破ったら……」
「えっ?」
ニコニコと甘くて高いアニメキャラの様な話し方をしていたが、急に約束という所で低くドスの効いた声へと変わる。
「ううん!何でもっ♪じゃあ連絡先交換しましょ?」
一瞬別人の様な対応になるが俺が驚いた事を察したのか、直ぐにコロリと元の表情へと変わり、なんだか逆らったり拒否すると逆ギレしたり、何してくるか分からないタイプな気がして俺は素直に連絡先を交換する。
そして翌日学校終わりに、二人きりで会う事になった。
こういうタイプの人凄く苦手なんだけどな……。