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一話 オワリ=ハジマリ

 

「あのう…大丈夫、ですか?」


「んー、どこ行ったのかな、無いと帰れないよー!!」


 道を歩いていたら、目の前に尻が有った。



 正確には、俺に背を向け。

 お尻を突き出しコンクリートの地面に顔を擦り付けているのかと思うくらいに顔を近付けている女性の姿を目の当たりにして、正直関わりたくないとは思った。


 他の通行人も彼女の尻や、胸元に視線をチラつかせ鼻の下を伸ばしている者、変人には関わらない様にしようとスルーする通行人。


 だが、そんな事をしているのには当然訳が有るのだろうし困っている様なので声を掛けてやった。

 だが、その声も虚しく彼女には届いては居ない様だった。

 本気で困っているようだ、無いと帰れないと言うくらいだ。

 かなり小さな物を落としてしまったのだろうか。

 勇気を振り絞り、もう一度、今度はもう少し大きめな声で声を掛ける。


「あのっ、何か探してるんですか?」


「ひゃうっっ!!?」


 ようやくその声が届いた様で、女性は素っ頓狂な声を上げてはこちらへとゆっくり顔を向けてきた。

 だが、驚いたのは彼女だけでは無かった。


 その顔に恐ろしく見覚えが有り、俺は急に心臓が跳ね上がる位にドクドクと早く脈打つのを感じた。

 目の前に居るのは元カノの夢乃らむだったのだ。


 黒とピンクの縦ツートーンの髪。ストレートの髪先をコテでゆるく巻きツインテールにし、服もいわゆる量産型女子と言われる人達が好みそうな可愛らしいフリフリとしたフリルの付いたピンク色のブラウス。

 白のフリルの付いたスカート。白と淡いピンクの横縞のニーハイソックス。

 10センチ位は有りそうなエナメル素材のピンク色の厚底靴。

 そして、何より特徴的な吸い込まれそうな位の緑色の瞳。


 その顔を見た瞬間に俺は身体中に電気がビリビリと走る様な感覚と、たった先程までの数分、いや数秒前かもしれない一瞬の忘れた記憶を思い出した。

 果物ナイフで心臓を一突きし刺された映像が走馬灯の様に流れる。


「何でッッ、何でお前が!!」


「えっ?何でって…だ、大体あんたこそ誰なのよ!あんたなんか、私知らないわよっ!」


「はっ、お前はらむじゃ無いのか、夢乃らむじゃ――」


 先程の光景がフラッシュバックする。

 俺を追い詰め、それを楽しむ様な歪んだ表情をしてゆっくりじわじわと詰め寄ってくる元恋人。

 片手には刃を出した状態の果物ナイフを持ち、当然俺は対抗出来る物を持って居ない為逃げる事しか出来ない。

 部屋の中で追い詰められもう逃げ場は無くなり、後ずさる先にTシャツ一枚越しに背中にひんやりとした壁の冷たさを感じもうダメだと確信した所で胸へと鋭い先端が服と肉をえぐるように入ってきて鈍痛がしたかと思えばその痛みは一瞬にして激痛へと変わり今まで感じたことの無い痛みに俺は喉が潰れる程の、断末魔の叫びの様なものをあげた。


 痛みの合間にも意識が朦朧としてきて手も痺れて脂汗が額から流れてくる。

 そして途端に意識を手放した。


 その後どれ位経ったのか、何時間、何日、いや何年かもしれないが次に目を覚ました時には、元居た東京とはかなりかけ離れた外国のような街中のベンチの上。

 直ぐにこれは異世界かもしれないという思考に行きつき、そして辺りを見回し一人で百面相をしていた所に今のらむに似た女性との遭遇。


 色々な情報がいっぺんに入り、自分でも困惑した。


「あ、あなたどこの国の人なの!?こんな格好の人見た事ないわ!!」


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