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フェニファイ開催

 日は落ちて、すっかりと辺りは闇に包まれた。だが、この学園の広大なグラウンドは猛々しいかがり火で煌々としている。


 無数のかがり火は、由来はファンタジーかいにしえかわからないが、この学園の象徴である不死鳥の形に彩られている。


 グラウンドの端に特設メインステージが設けられており、そこにはまるで有名アーティストがライブやコンサートで使用するような大画面もあり、上空からドローンでこのかがり火の全容を映し出しているのだ。


 メインステージに負けじと豪華なサブステージも二つ用意されており、軽音楽部や吹奏楽部、ダンス部の類、和太鼓部などがそこで演奏や演技をするのだ。

 すべて全国区クラスなので、見る者にとってはこれほど喜ばしいことはないだろう。

 さすがは鳳凰院財閥直下の学園ってか、お金かけすぎだろこれ……。


 さらに屋台もあり、僕はその影の方でひっそりとメインステージの大画面を見ていた。

 僕はそのステージに上がってきた1人の女子生徒に目を向ける。

 そう、この学園の生徒会長兼、仮面小説部部員、鳳凰院まひるだ。

 マイクを司会である放送部員から手渡された彼女は開会の言葉を口にする。


「皆さん、さあ今年もやってきましたの! この鳳学園、不死鳥祭のフィナーレを飾るに相応しい不死鳥火炎フェニックスファイアー。今宵は観て、聴いて、食べて、踊って、五感すべてで楽しんで下さいませ。そして、わたくしからは一言……不死鳥のような熱き想いを貴方がたの想い人に伝えるのです! では、フェニックスファイアーの始まりですわ!」 


 まひるの盛り上げにわあーと歓声が上がり、続いて夜空に花火が乱舞する。

 なんか、花火もそうだが、地元メディアなのかビデオカメラマンもいたりして、学生の文化祭のレベルを雄に超えている気がするんですけど。


 待て待て、そんな事より緊急事態発生だ。


 僕は彼女と踊るのか。注目されるの間違いなしだろ。


 いや、無理無理無理。


 なんか、どう考えても目立つのが必至じゃないか。


 それに『想い人に伝える』ってどういうことだ。フェニファイに参加したことない僕にはわからない。訊ける友達もいないし、訊けそうな部員もこの広いグラウンドのどこにいるかもわからない。こんなイベントに興味を持ったこともないし。


 そして、チキンな僕はひとつの結論に達した。まひるとミトには悪いが、このまま帰ってしまおうか……。


 そんな事を舞台を見ながらボォーと考えていたせいか、彼女の接近に全く気付いていなかった。


「部長さん、こんな所で何してますの?」

「まひる! ど、どうして僕がここにいるとわかったの?」

「もちろん、ステージから見えていましたわよ。わたくしの視力はマサイ族に匹敵しますの」


 このコのスペックにはもう驚くことはないと思っていたが、そんな所までハイスペックだったのね。おそらく、五感すべて優れているのかもしれない。いや、シックスセンスも備えているのだろう。


「お待ちしていましたのよ。さあ、早くわたくしと踊りましょう」

「いや、その、あ、あのさまひる、僕はその……」


 言葉が詰まる僕に対して、まひるは不思議そうに僕を見つめる。


 そうか、このコには僕の気持ちは微塵もわからないだろう。生きてきた世界があまりにも違い過ぎる。

 ならば、これで身を引いてもらうしかない。


「僕と君とじゃ、あまりにも釣り合わないと思うんだ。だから一緒には踊れないよ」 


 まひるのまっすぐな瞳が急に怒りの色を帯びた。 


「今さら何を仰っているんですの。そんな事は百も承知の上ですの。それでもわたくしは貴方と踊りたい。他の誰でもない貴方と。そして……わたくしの強き想いを貴方に……だから……踊って下さいませんか?」


 彼女の真剣な眼差し。まさかここまで言ってくれるなんて、僕はもう断る術を持ち合わせていなかった。


 でも、僕は目立ちたくない。その時、ある事を閃いた。


「うん、わかったよ!行こう!」


 パァっとまひるの顔が華やかになる。


「ただ、ひとつだけお願いがある」

「何ですの?」

「これを付けさせてくれないか?」


 僕は制服の内側に忍ばせていた『ある仮面』を差し出した。

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