変化
「ユウさん、賞賛に値するイタコの立ち振る舞いでしたわ」
いつのまにかまひるもやって来ていた。
「ちっ!」
ミトが舌打ちする。ミトはシズとユウは連れてきたが、まひるを呼んでいなかった。
「なんでこっちに来たのよ、アヒル」
「なんでと言われましても楽しそうだからに決まってますわ」
「あんたはあっちで客寄せパンダでもしとけばよかったのに!」
「わたくしをパンダ呼ばわりとは相変わらず失礼ですわね!」
「あ~パンダに失礼よね、客寄せアヒル!!」
「ぐぬぬぬ」
目線の先で火花を散らす二人。
「まあまあ二人ともミスピカ先生の前だし喧嘩は止めようよ」
「スピカ先生?」
まひるはスピカ先生をまじまじと見つめた。一方、スピカ先生はまひるを舐めるように見返した。
「なるほど~ユナイのコスプレを巨乳ちゃんが着るとこんな感じやねんなあ。なかなかエロいやん、部長さん」
スピカ先生は悪そうに右の口角を上げた。
「ぼ、僕が選んだわけじゃないですよ!」
「この方はひょっとして……」
「いかにも、わしらが崇拝するカメショーイラストレーターのスピカ先生ぜよ!」
ユウがまひるの質問に答えた。
「やっぱりですの!!!…………あら、でもまたどうしてわが不死鳥祭にお越しいただけましたの?」
「たまたまらしいぜよ」
「ほほほ……さすがはわが鳳学園の不死鳥祭、力ある者を惹き付けるとは……。その辺りの学園祭とは一線を画しますわ」
「あんたの自慢なんかどうでもいいのよ。それよりスピカ先生これにサイン貰えないですか?」
ミトが差し出したのは僕らの短編集だ。
「ええよ」
「われも!」「わたくしも!」 「わしも!」
全員サインをもらいご満悦の様子。しかも、各々がコスプレしているキャラまで描いてくれた。スピカ先生はサービス精神旺盛だ。ちなみに僕だけもらわないのも不自然なので僕もリンタを描いてもらった……。
みんながサインをもらったそれぞれの短編集を嬉しそうに眺めている中、スピカ先生は耳打ちしてきた。
「せんせの作風が少しずつ変化してるんがわかった気がするわ。このコたちの影響やってんね」
僕の作風が変化している?
「どういうことですか?」
「なんやろ、今まで暗い閉鎖的な話も多かったやん。それはそれでええんやけど、バトル以外も王道っぽくなってきたというか、リア充っぽいというか、ほら海水浴とか花火大会とか盛り込んでたところとか……やな」
「それはいいんですかね……?」
「ええんちゃうかな、新しい魅力やろ。うちは好きやけど」
「それならいいんですけど……」
確かに最近の僕は変わってきているのかもしれない。
「ほんならうち帰るわ~。あっ、うちもその本一冊もらって帰るわな」
「ぜひ! できれば最終ページに評価欄があるので良かったらしてみてやってください」とミト。
「わかったわ~、一度みんなの作品読ませてもらうわな」
「はい! もし、よければというか可能ならば、おこがましいお願いですが、クラマ先生にも評価してもらえたら嬉しいです」
スピカ先生は僕に目配せして、口元に笑みを浮かべた。
「じゃあ、もう一冊もうとくわ」
「やったあー!!!!」
部員全員が喜びの声を上げた。




