絵師現る
文化祭2日目。
長い1日の幕開け。予期せぬことが連発で起きた!
まず一つ目、僕にとっては非常事態もいいところだった。
それは不死鳥祭という名の文化祭の最終日が1時間あまりが経過した頃……。
「ちょちょちょちょっと白夜!」
慌てた様子のチカゲコス状態のミトが言った。
「どうしたの?」
「あれ……あれって」
ミトの指がさす方を目をやった。
そこにいたのはカメショーのイラストレーターで僕の相棒でもあるスピカ先生だった。
「どうして……」
「やっぱりスピカ先生よね」
何人かの来訪者に紛れて彼女はこちらに歩み寄って来る。
そして、僕と目が合うなりウインクをした。
「クオリティの高いコスプレやね」
「そ、そうですか?」とミトが訊く。
「せやで。そのチカゲのゴールデンマスクなんてうちがデザインしたまんまやわ。売ってるのより精巧やわ」
ミトは仮面を外した。
「あらま、あなた、サイン会によく来てくれるコやないの」
「はい! 覚えていてくださいましたか。光栄です!」
丁寧な物言いのミト。
「どうして、スピカ先生はうちの学園に?」
「……たまたま通りかかったら学園祭やってはったから、ちょっと気になって入ったら『カメショー』のコスプレしたコが見えてん」
「そんな偶然あるんですね! コスプレして良かったあ!」
信じ込むミト。なわけないだろ!
僕はジト目でミスズさんを直視した。
スピカ先生は焦り顔になったあと、テヘペロした。
はあ~この人は。
「ちょっとみんな呼んできていいですか? 部員みんなカメショーファンなんです!」
ミトは廊下で写真を撮ったり、本を配っている他の部員に声をかけに行った。束の間スピカ先生と二人きりになったので真相を尋ねることにした。
「どういうことですか?」
僕はムスッとした態度を取ってやる。
「ちょうどこないだ新刊の打ち合わせの時にクラマせんせが学園祭が忙しいっていうのを編集長から聞いて……どないなことやりはるんかなあって気になってもうてん」
「まあ別にいいですけど、ボロ出さないでくださいよ」
「わかってる、わかってる。クラマせんせ……やなかった、クラマくん」
「連れてきました」
ミトの背後からシズとユウが現れた。
「リンネとイタコやね! これもクオリティ高いやん」
「こ、こここんにちは! 私……われは晩代静空という者だ。汝に出会えて嬉しい限りぞ」
「わあ~リンネではなさそうやけど、なんかのキャラになりきってるんやね」
シズの碧眼モードをあっさり受け入れるとはさすがスピカ先生。
「す、すいません! リンネでなくて!」
シズが慌てた様子で何度も頭を下げた。
「ええんよ、ええんよ! そんなん気にせんとってぇーな」
スピカ先生は手を横に振った。
「おんしがあのカメショーイラストレーターのスピカ先生かえ? げにまっこと素晴らしいキャラデザぜよ。わしの作品のキャラも描いてくれんかのお」
「こら! ユウ! そんなこと頼まないの!」
ミトがユウに注意した。
「ふふっ、大丈夫やよ」
「では、おわびに霊幻五月雨突きを披露するぜよ」
ユウはイタコの白い愛木刀、雪月花で構えを取った。さすがに北辰一刀流の免許皆伝だけあってサマになる。
「はあ~~~はあっっっ!!……どどどどどどどどどどお~~~」
……はあっっっ! まではカッコ良かったのに効果音はいらなかったんじゃ…………。
「お粗末!」
室内から拍手が沸き起こった。意外に来訪者の方々はユウに注目していたようだ。この際、効果音はどうでも良かったらしい。
「すごいやん! ほんまにイタコみたいやったよ!」
笑顔で少し興奮気味のスピカ先生。
「せんせ、個性的なコが多いやん」
スピカ先生は僕の耳元で囁いた。僕は苦笑いするしかなかった。




