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文化祭巡り

「時間もないし、みんなで周ろうよ」


 さっきの悔しい顔の事も考えてみて、僕はこれならミトも一緒に周れるかなと思い、提案してみた。


「でも、みんなで周ったらここが留守になりますわよ」


 まひるの言葉はもっともだが……。


 まひるはチラリとミトに目をやる。唯一、言わなかったミトに留守番を頼むかのように。ミトはギロリとまひるを睨み返す。


「いいわよ! あんた達だけで行ってきなさいよ。その代わり白夜ちょっとこっちに来なさい」と手招きする。


 なんだよ、なんか悪い予感しかしないんだけど……。


ミトは近寄った僕に耳打ちする。


「留守番するから、明日あたしのお願いきくこと」

「お願いってなに?」

「そんな大したことじゃないわよ」


 本当だろうか!?


「部長、観たい催し物が終わってしまうき、早く行くぜよ!」


 ユウが急かして、僕の制服の裾を引っ張る。


「ちょちょちょちょ待っ」

「じゃあ、白夜そういうことで」

「うん」


 思わず頷いてしまった。


「姉さん、留守の間よろしゅう頼むき」


 ミトのお願いの内容を聞かずに僕は部室をあとにした。

胸中、不安の中、ユウたち3人のあとに続く。


 ユウは時代劇部というマニアックな部の見世物が見たいらしく、本日、最終の演劇がもう開始するということで、僕らは劇場に急いでいた。

 この学園には劇場というものが存在するのだ。


 辿り着いた先では座席はなかなかに埋まっていたが、なんとか四人並んで席に着くことができた。

 数分でライトが消え、幕が上がる。


演目は「池田屋事件」。


 ユウが大好きな幕末物。そりゃ、来たいはずだ。


「いやあ、思っていた以上のクオリティだったぜよ」


 劇場を出た所で、ユウは満足気に言った。


 確かに初めてああいうのを生で観たが、良かったと思う。脚本を考えたりすると、ある意味小説の勉強になったな。


 屋台で食べ歩きしながら、次に向かったのはシズが行きたいと言ったのはまさかの漫画研究部。

 何故、まさかと思うのは、シズはカメショー部に入部する時、漫研のことをディスってたからだ。自分の気に入る作画をしている人がいない事を嘆いていた。


 でも、あの時ミトの提案であるラノベで売れれば漫画化っていう道も拓けるということで、とりあえずは保留にしてた問題だが、やっぱり漫画は気になるのだろうか。最近は言わなくなったが、僕に作画を頼んでくるぐらいだしなってかそっちがメインでカメショー部にいるかもしれないしな。

 まあ、絶対僕は受けないけど。


「相変わらずあまり大した漫画はないですわね」


 提示してある漫研部の汗と涙の結晶である漫画をパラパラとめくり、速読するまひるが言い放つ。


「まひるは漫研部の事知ってるの?」

「もちろんですわ。わたくしは全クラブ制覇を成し遂げる存在ですのよ」


 そうだった。彼女はその為に、カメショー部にいるんだった。それに漫研の部員達が僕らが部室に訪れてから顔をこわばらせている理由もわかった気がした。


 ということは、


「まあ、この部で一番になるのに1日で十分でしたけど」


 やっぱり! 


 漫研部のクオリティーはそんなに高くないにしても、1日って凄すぎる。


「それにしてもどうして、くーちゃんはここに来たかったのですの?」


 そうか、まひるは知らないのか。


「シズは本当は漫画家になりたいんだよ。でも、絶望的に絵がヘタらしく、まあ色々あって、カメショー部に入部したんだ。漫画の原作にラノベは近いからね。だから、ここに来たのも気に入った作画が描ける人を探してるみたいなもんなんだと思う」


 僕の描いたユナイの例を上げれば、シズ曰く、魂が篭るものでないとダメらしいが。


「……くーちゃんは漫画家……それってわたくしが作画をすれば……」


 ハッと何かに目覚めたような表情をしてまひるはそう呟いた。

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