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キャラ争奪戦

「みんな、文化祭はコスプレで挑むわよ!」


 ミトが通達する。


 まひる、シズ、ユウの三人は本から目を離してこちらを見る。


「どうしてですの?」


 まひるが首を傾げて訊く。シズとユウも表情から察するに同じ意見だろう。


「…………ほら白夜説明しなさい」


 丸投げかよ……まあ、僕が提案したから仕方ないか。


「仮面小説部の仮面の意味を出したいし、それなら仮面だけじゃなく、コスプレした方が人気も出るかな~と思って……そうしたら注目浴びて、部室に来る人も増えて本も捌きやすそうだし……」

「さすが部長です!」


 シズが拍手する。


「それはおもしろそうじゃの!」


 ユウも乗り気だ。


「まあそんなことしなくても多くの人が訪れてくれると思いますけれど」

「アヒルは別にしたくなかったらしなくていいのよ」

「い、いや……別にしたくないわけでは……た、た、ただコスプレしなくても十分人は集まるということだけですわ」


 タジタジになるまひる。


「ふ~ん、でもやっぱり無理にされても士気に関わるからいいわよ。あんただけ普通に制服でいいわよ」突き放すミト。

「い、いやだからしたくないわけでは……」

「じゃあ、なに? コスプレしたいの?」

「……し、したいですわ……」

「じゃあ、させてくださいでしょ?」

「……さ、させてください」

「仕方ないわね。じゃあ、あんたがコスプレの衣装用意しなさいよ」

「わかりましたわ。任せてくださいまし」


 いつものことだが、いつのまにかミトが優位に立ち命令している。シズとユウもこのやり取りに口が半開きになっている。残念すぎるまひる……。


「ところでミト先輩、私達はどんなコスプレをするんですか?」とシズが尋ねる。


「ずばり『カメショー』よ!」


 ミトはなぜか自分のSM仮面を外して勢いよく言った。


「『カメショー』の自分が好きなキャラのコスプレよ。あたしはチカゲにするわよ!」


 宣言するミト。


「待ってくださいまし! わたくしもチカゲになりたいですわ!」


 まひるが待ったをかける。


「ガァガァうるさいわね、アヒルはその辺の名前もない三下で十分よ!」

「嫌ですわ! わたくしこそ主人公に相応しいですわ!」

「チカゲはそんな牛乳してないからあんたには不釣り合いよ!」

「まあ! またわたくしの胸をバカにして!」


 言い争いが続く。でも、ミトはユナイが一番好きだと公言してたよな。なんでチカゲがいいんだろ?


「それよりチカゲは絶対に譲れないわよ! チカゲの仮面がいいの!」


 そういうことか。 なぜ、ミトがチカゲを選ぶのか……チカゲだけが唯一顔全体を覆う仮面を被っているからだ。これだと誰だかわからないからな。


 なおも言い争いを続ける二人の仲裁に入るか……このままじゃ話しが進まないし。これに関してはミトは譲らないだろうからまひるをヨイショして他のキャラに誘導しよう。


「あのさ、まひるくらい有名人なら仮面を被らないキャラのほうが人気を集めると思うよ!」

「そうですかしら」

「そうだよ! 例えばユナイなんかどうかな? 衣装も可愛いし、まひるなら絶対似合うよ!」


 ユナイは仮面を被らないけど、戦闘コスチュームはセクシーである。


「そうですの……部長さんがそう言うのなら……」


 まひるは頬を赤らめた。持ち上げに弱いな……。


「あんたにはユナイなんかもったいなさすぎるわよ! ガァガァうるさいんだからモブキャラで十分よ!」


 ミトは自分の推しキャラ、ユナイがまひるに使われるのを強く拒んだ。


「モブキャラなんてわたくしに似合うはずがないですわ!」


 やれやれ……溜め息をつく僕。


「われはやはり『カメショー』なら漆黒の祓魔師リンネが良いな」


 シズならあのいかにも魔女っぽいところが似合いそうだな。


「わしはイタコじゃの。イタコの霊幻五月雨突きを再現したいぜよ!」


 誰にお見舞いするんだよ……だけどユウならイタコしかないな。ロリ体系の設定だし。


 こうしてみんななりたいキャラが決まった。


「じゃあ、決まったところで明日頑張ろうよ!」

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