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変態

 リビングの扉がキィ~と開いた。


「あわわわ!! しもうたぜよ!!」


 焦った様子のユウは慌てて僕の部屋に戻っていった。


「とにかくそういうことだから! もう帰ってくれよ!」


 僕は十六夜にそう言い残し、ユウを追いかけた。


 部屋では四人が固まってひそひそと話していた。


「みんな……」と僕は声を出した。


 ギロリと四人がこちらを睨む。


「そういうことだったのね。エロネタがないと思えば、まさか本物の……女の子をお金で呼んでいたなんて……見損なったわよ! 白夜!!」

「ち、ちがうよ!」

「ちゃちゃちゃ! 部長殿、言い逃れはできんぜよ。わしは御庭番衆並みの偵察であの遊女に金銭を払っているとこをこの目で目撃したぜよ!」


 犯人はお前だ! と言わんばかりに僕に人差し指を向けるユウ。


「誤解だよ! あれは……」


 なんて言えば正解なんだろう……。


「やらしいですわ! 汚らわしいですわ!」


 なにかおぞましいものを見るかのようなまひるの痛々しい瞳。


「わが右腕も堕ちたものよ……われは残念だ……」


 碧眼は虚ろで項垂れるシズ。


やばい! このままはやばいよ!! 変態以上のレッテルを貼り付けられる!


僕が打開案を練っていると、


「みなさん、こんにちはー!」


 僕の背後からヒョコッと十六夜が顔を出した。こいつ帰れって言ったのに!


「あたし、この人の妹の十六夜って言います! いつも兄がお世話になっております」

「妹???」


 全員が口を揃えて言った。待てよ……あんまり十六夜をみんなに会わせたくなかったがこれに乗っかる方が自然だな。


「そうなんだよ。妹なんだよ」

「鳳学園一年、暗間十六夜です」


 十六夜はにっこり笑みを浮かべた。


「でも、こんな所で学園の二大スター、朝凪先輩と鳳凰院会長に会えるなんて、光栄です」


 スターと呼ばれてミトとまひるはまんざらでもない様子。十六夜は昔から取り入ろうとする相手には外面はいいからな……この二人にはそのあざとさが効果的面だな。


「それに晩代さんまでいるなんて」

「……えっと、お会いしたことありましたか?」


 どうやらシズは十六夜のことはクラスメートということは知らないらしい。


 アウトオブ眼中。


「…………またまた、同じクラスですよ~」


 顔はにっこりしているがこいつ内心、絶対毒気ついているな……。眉がヒクついてるのでわかる。僕みたいなクラスの端っこならなんも気にしないが十六夜は紛れもなくリア充なのでプライドを傷つけられたに違いない。


「そうだったか、わが右腕の妹が同じ魔術部屋にいたとは……気がつかなんだわ。われの不覚なり」

「??? なにいまの???」

「まあ、その……気にするな」


 碧眼シズの変化に目をまん丸にして驚くわが妹を僕は諌めた。


「もう妹なら妹って言えばいいのに~」


 そう言いつつ、ミトは口元を綻ばせた。


「ところでみなさんは兄が書いたラノベのなにが好きなんですかあ?」

「????」


 みんな眉間にシワを寄せ、小首を傾げた。僕は血の気が引いていくのを感じた。


「白夜が書いたラノベ?」


 ミトが尋ねるように呟いた。


「そうですよ~、あたしには何が良いのか全くわからないんですけど、タイトルは確か、かめ!? もがががががあ!」


 僕は十六夜の口を全力で塞いだ。


「なななに言ってるんだよ! 僕が! 書いたんじゃなくて、僕が! 好きなラノベだろ! みんなカメショー好きなんだからあんまりマイナス発言すると怒られるぞ!! だからこの辺でやめとこう! な! な!」


 僕は十六夜を部屋からそのまま引きずり出す。


「もがががが」


 僕は十六夜の耳元で囁く。


「頼むからもう帰ってくれ」

「もがごごごごー!」


 尚も暴れる十六夜。


「欲しい物、買ってやるからほんともう帰ってくれ」


 ピタっと動きを止め、大人しくなった。僕は口元から手を離した。


「ほんとに?」


 わが妹ながらなんという厳禁な奴……。


「あたし、欲しいバッグがあるのよねえ」


 十六夜はニヤつきながらねだる。


「わかった、わかったから、もう早く」

「しょーがないなあ! それで手を打ってあげるとするか!」

「はいはい」

「じゃあね! バイバーイ!」


 ご機嫌で帰る十六夜。


「あっ、今日の事は絶対に誰にも喋るなよ!」

「はいは~い!」


 十六夜は相変わらず軽い返事をして帰っていった。ふぅ~一番の危険人物がやっと帰ってくれたぜ。


 ところであいつなにしにきたんだろ?


 僕の部屋に戻ると、僕を見るなり四人が口を揃えて言った。


「変態!」


 彼女たちの手には僕の良く知るエロゲーやエロ同人誌などの類が存在していた。なんで!? それは昨日実家に持っていったはずのダンボール箱に詰めたはずのものだったのに……。


「あーーー!」


 彼女たちの足元にはそのダンボールが転がっていた。


 僕はそれから数日、妹にそういうものを持って来させたというれっきとした変態になったのだった。

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