家捜し
「部長!」
唐突にシズが言った。
「なに?」
「部長のオタグッズコレクションを見たいです! どこにおありですか?」
「コレクションというほどではないけど、一応、あっちの部屋に……」
「くくく、では、わが右腕の秘密部屋に進入するとしよう」
シズは立ち上がり、僕の寝室兼仕事部屋である部屋に向かう。他の三人もザッと素早く立ち上がってシズのあとに続く。
「ちょ、ちょっと」
全員、僕の呼びかけを無視して部屋の扉をシズが開いた。
彼女たちをカメショーキャラ筆頭の様々なフィギュアが並ぶガラスケースと漫画やラノベが並んだ本棚が待ち受けた。
「わが右腕の使い魔たちが並んで監禁されておるわ」
シズはそう言ってガラスケースに釘付けになる。ユウも同じ行動を取った。
「結構、シンプルなオタ部屋ね。あんたのことだからもっとやばいオタ部屋だと思ってたんだけどなあ」
ミトは少し残念そうに言った。
実は昨日ミトが来ることになってから、僕はこの部屋にあった『カメショー』の関連グッズをどっさりと実家に持っていった。
『カメショー』を執筆していたパソコンや資料も実家にとりあえず保管した。ミトがこの部屋に入っても万が一痕跡が見当たらないように。
しかし、本当にそうしといてよかったな。ミト以外の三人が来たことでその危険率は三倍も跳ね上がったんだから。
「これが殿方の部屋なのですわね」
まひるはベッドに腰をかけた。女の子が僕のベッドに腰をかける……なんかその行動に僕の心臓は踊るように跳ねた。
「あんたこの部屋にもテレビあるわね」
「あるけど……なに?」
ミトとシズがテレビ台の引き出しを漁る。
「なんにもやらしい系はないですね」
「そうね。絶対エロゲーとかあると思ったんだけど。普通のしかないわね」
「いえ、まだシロとは限らないです」
こいつらなに考えてるんだよ!
「あのベッドの下が怪しい……ユウちゃん!」
シズのかけ声と共にユウがベッドの下を覗き込む。その行動を見ているベッドの上のまひるは不思議そうな顔をしている。
「う~ん、な~んもないきに」
ふふっ、悪いが想定済みさ! 昨日の時点でそういう類いの物はすべてダンボールに詰めて実家に置いてきてやったのだ!
「おかしいわね……ひとつもないなんて……どこに隠してるのかしら」
口元に手をあて考えるそぶりを見せるミト。
「さっきから何を探していますの?」
「健全な男子高校生なら持っていそうなものよ。エロ本とかエロゲーとかアダルトDVDとか、まあこいつならエロ同人とか」
まひるの質問にミトが答えた。
「そ、そ、そんなもの見つけてどういたしますの!?」
「まあ、白夜の好きな傾向とかわかったら面白いかな~とか思っただけだけど」
ミトは邪悪な笑みを浮かべた。こいつ僕の弱みを握ろうとしているな。
「な、なるほど……」
まひるは真顔で言った。なるほどってどういう意味だよ……納得するのかよ!
「でも、ないのよねぇ~」
「まさか……」とユウが呟いた。
「ユウ、どうしたのよ?」
「部長殿は女性ではなく、男性が好きなのではないがか? BL本ならいつでも貸すぜよ!」
「なわけあるか! この幕末腐女子が!」
僕はつい声を荒げた。
「違ったがか……」
ガクッと落胆の色を隠せないユウ。
「いやに珍しく強く否定したわね。ユウ、それはないわ。こいつにはやらしい前科があるから」
ミトは水着審査のときのことを言っているんだろうか………。
「ということは事前にどこかに隠したしか考えられないですね。 一人暮らしの男子高校生がそういった物をひとつもないのは少年漫画のハーレムラブコメ主人公くらいですよね」
なんだよ……そのシズの推理……。でも、いくら探してもここにはないぜ!
「もう、いいだろ! 早く文化祭の作品を書こうよ!」
「わかったわ」とミト。
「じゃあ、リビングに戻!? うわっ!!」
部屋を出ようとした瞬間ミトにベッドに投げ飛ばされた。
「どこに隠蔽したのか、白状しろ!」
ミトに頭を押さえつけられる。ん? 顔に布団の感触ではないものが触れた。僕は抵抗して仰向けになろうとした。
「キャ! ちょっと動かないでくださいまし」
なんとかミトの押さえつけから首だけ右に無理矢理回すと右上に恥じらい顔のまひるの顔があった。顔は紅潮していた。まひるの膝の上に顔面が着地したらしい。
僕はミトに必死に抵抗した。それ故、気づかなかったことがあった。それは僕ら以外の何者かが僕の家に侵入していたことだ。
「そんなものないよ!」
「嘘つくな! 絶対どっかに隠してる」
「部長さん、暴れないで、イヤッ! キャ!」
「そう言われてもミトが……」
ガチャ……いきなり部屋のドアのノブが回された。全員がドアに視線を向けた。
そこに現れたのは……。




