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焼そばは毒盛り

「やっと帰ってきたわね! もう相変わらずトロいんだから!」

「ごめん、焼きそばの出店があんまりなくて」

「ふん、まあいいわ。早く食べないと花火が上がる時間に間に合わないわ」


 みんなが焼きそばを頬張った……と思ったら一斉に口から吐き出した。


 なんか僕、面白いこと言ったっけ!?


「げほっ! げほっ! げほっ! げほっ!」


 咳き込む4人。


「どうしたんだよ?」

「あんたこれ、げほっ! ほぼ生じゃない!」

「げほっ! だから庶民の食べ物は怖いですわ」

「まさか、わが右腕に毒を盛られるとは……げほっ!」

「これはまことに食べられたもんじゃないき……焼きそばならぬ生そばぜよ、げほっ!」


 全員が青ざめた表情をしている。


「生? 焼けてないってこと?」

「そうよ! あんたまさかあたしたちに買いに行かされた腹いせに……」

「そんなことするわけないよ! 普通に買ってきただけだよ」

「それならこんなものを売りつけるなんてひとこと言いに行かないと気がすまないわ!」

「そうですわね。これでお金を取るなんて商売の風上にも置けないですわ!」

「いや、ちょっとそれは……」


 僕の言葉にミトが怪訝な顔を示した。


「ちょっとってなによ!」

「怖そうなっていうか、いかにもっていうか、そんな感じの人達だったというか……」

「あんたまさかびびってるの?」


 ミトのその言葉に僕の目は泳いだ。


「まあ、その……もめ事はよしたほうが……」

「怖いんでしょ! 情けないわね! もういいわ、場所だけ案内してよ」


 ああ、怖いよ! 怖いけど僕は平和主義者なだけなんです。だけど、部員たちの怒りの収まりがつかなそうなので、僕は言われるがまま焼きそば店を案内した。


「あそこだけど……」

「ふん、行くわよ!」


 並んでいる人ごみの横からさっきの焼きそばを手渡してきた兄ちゃんにミトが言う。怖いもの知らずの意味はミトだと辞典に載っていそうだ。


「ちょっと、これどういうこと?」


 焼きそばの中身を見せる。


「どうかしましたか?」


 焼きそばを見てチンピラ風兄ちゃんが丁寧な感じで言った。見ためと物言いが反比例している。案外、怖くないのかな?


「どうかってこれ食べれる代物じゃないわよ!」


 ミトの言い方のほうがよっぽど輩っぽい。


「貴方がた、まずこういうものを平然と販売して恥ずかしいと思わないのですの!」


 まひるがミトに続いた。


 周りの並んでいるお客さんがどよどよとざわつく。


「ちょっとお客さん、そんなクレームまがいのこと大きい声で怒鳴られたらうちの商売あがったりになるじゃないですか」


 丁寧だが冷ややかな物言いのチンピラ兄ちゃん。


「まがいじゃなくて、クレームよ!」


 ミトが反発する。


「そうじゃ! 他の客人たちに危害が及ぶ前にわしらが先陣を切っているだけのことじゃき」

「……ネエちゃん達、可愛いツラしてるからっていい気になるなよ」


 さっきまでの丁寧さから一転、ドス黒い声を出すチンピラ兄ちゃん。


 周りのお客さんがサッと波が引くように下がった。


「あ~あ、あんたらのせいでうちの商売あがったりだよ! どう落とし前つけてくれんだよ!!」


 チンピラ兄ちゃんの怒鳴り声でどっから湧いてきたのか、いかにもの人達が僕らを囲むように現れた。

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