証拠はTシャツに
可愛く首を傾げるスピカ先生。
僕はそんな彼女とがちりと目が合った。犯人を見透かすような瞳をしている。
「えっと……なにを……」
僕は完全に次の言葉に詰まった。頭の中で彼女の質問に整理がつかない。
「ゴールドマスクの人はせんせやろ? めっちゃ動揺してるで! 犯人は君だ! って言われた時の犯人みたいに」
あざとい美少女なら『テヘペロ』で回避できるだろうが、固まることしかできない僕。
「……な……なんでわかったんですか?」
口元に笑みを浮かべるスピカ先生。
「だって、この話した時点で顔色が急に青なったし、なんせそのTシャツのキャラおんなじやし……」
僕のTシャツの中央にはブリキのロボットが描かれている。
なんて特徴的!
「それにカマかけてみたら動揺がハンパやなかったし……」
オタならではで、人に責められるとすべて認めてしまう習性が僕に根付いているのか、全部態度や表情に出てしまうのだ。
「さあ、せんせ……時間がないから手早く説明してや」
ドスの効いた声のスピカ先生。言わないでは通せそうもないので、僕はこうなった経緯を簡単に説明した。
「あのコのことなら覚えてるわ。何度かサイン会に来てくれたことあるから。話の筋はわかってんけど、それよりせんせ、おもろいことしてるや~ん」
本当に面白いおもちゃを見つけたような顔のスピカ先生。
「まさか、あの売れっ子ラノベ作家クラマ先生が自分達の部活にいるなんて誰も思わへんもんなあ。しかも、みんなカメショーファンときたかあ! これはハーレムトランス状態にもっていけるで!」
なぜか彼女は興奮気味だ。
「せんせ、もうぶちまけてしもうたらええんちゃいます? みんな先生を尊敬の眼差しで見るかもやで!!」
「僕は平穏に暮らしたいんですよ。だからそれは絶対しません!」
それにそんなことしたら部活が……。
ピピピピピピ、スピカ先生の腕時計の音が鳴った。
「残念! 戻らなあかん時間が来てもた。また、詳しく話聞かせてや!」
僕は苦笑いしてみせた。
「ひとつ忠告! ばれへんようにするんやったらポーカーフェイス上手くならんとあかんで!」
僕は苦笑いしながら頷いた。
「じゃあ、サイン会後半戦行ってくるわ~! 」
スピカ先生は手を振った。
「よろしくお願いします」
スピカ先生は足早にサイン会場に向かって行った。
大丈夫だよ、スピカ先生。
カメショー部の部員たちは誰も僕が『カメショー』原作者なんて微塵も思っていないから、ポーカーフェイスをする日はやってこないよ……はず。




