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ツンツンと夏コミ

「それがこの間の海で部長とミト先輩のキスを見たあと、書きたくなったのです。知り合いが目の前でキスをするというのはなんとも……」


 顔を赤くして碧眼モードに移行。


「記憶を掘り起こすと胸が焼け焦げるかのようだ」 


 僕とミトがキス?? いや、してないだろ。


「なななななに言ってんのよ! あれは白夜を助けるためのただの人口呼吸よ!!」


 顔を真っ赤にするミト。そうなの!? あのときの人口呼吸ってミトが……そうなの!?


 ミトがこちらをチラッと見て、さらに噴火した火山のように真っ赤になる。


「こっちを見るな! このエロオタク!!」


 やっぱりそうなの!? 考えるとちょっと胸の鼓動が早くなり始めたが、平然を装っておかないと、また変態呼ばわりされる。


「あ、あの時は意識まったくなかったよ」

「わかってるわよ! うっさい! いちいち弁解するなあ!」

「あのときのあねさんの迅速な行動は素晴らしかったぜよ」

「そうですわね! でも、わたくしがしようとしたのを押しのけましたのは驚きましたけど」

「あああああれはあんたとユウが意識がない白夜をビーチまで連れていってくれたからよ! あんた達が息を切らしてたからあたしが代わりにやってあげようと思ったからよ!!」

「あらそうだったかしら!? ミトさんの方がわたくし達のスピードに頑張ってついてきて息を切らしていたように見えましたけれど……」

「はあ!? なななななに言ってんのよ! こここのアヒル!」


 かなり取り乱すミト。


「ああああああたしバイトだから帰る!」


 ミトは部室を飛び出して行った。


「恥ずかしがってましたわね」

「あれはツンデレというより、ツンツンですね」

「あねさんはこういうことは素直じゃないきにのお」


 ミトがしてくれたのか……クゥ~! 意識をもっと早く取り戻したかったぜ!

 シズの官能小説もかなりのインパクトがあったが、ミトの人口呼吸の方がさらなるインパクトだった。



 みんなが帰って旧校舎を出たところにミトがいた。少し顔が赤く見える。


「あ、あんた、勘違いしないでよね! 好きでしたんじゃないから! ただ、沖に連れ出したあたしにも責任があったからそれを帳消しにするためにしただけなんだから!」

「わ、わかってるよ。それを言うために残ってたの? バイトは?」

「ちちちがうわよ! わわ忘れ物を取りに来ただけよ!」


 苦し紛れの言い訳に聞こえる。


「ふふっ」

「なによその含み笑い! バカにしたでしょ! 白夜のくせに!」

「ごめん……助けてくれてありがとう」


 カア~とさらに赤くそまるミトの頬。


「ふん、ただあのままあんたがくたばったりしたら寝覚めが悪いし」

「まあでも、ありがとう」

「何度も感謝するんじゃないわよ! ありがとうの安売りになるじゃない!」

「でも、危ないところを助けてもらったのは確かだから」

「もういいわよ。それより……あんた夏コミって行ったことある?」

「あるけど……」


 あるに決まっている! 夏の大イベント、 コミックマーケット!


  通称、夏コミ!! 


 目新しい同人誌を発掘したり好きなサークルの同人誌を漁ったり、レイヤーさんを見て目の保養をしたりと僕にとってはバレンタインやクリスマスより大事な大事な一大イベントだ! 


 毎年、三日間かかさず一人で周っている。


「さっすが~! オタ充! 」


 ミトはにんまりとした。


「なら決まりね!」

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