悪魔のスイカ割り
「白夜が埋まったことだし、スイカ割りしましょ!」
僕が埋まったことだしってどういうこと??
「わたくし、スイカ割りってやったことないんですの。どのようにしてやるのですの?」
「じゃあ、あんたからさせてあげるわ」
そう言ってこちらを見て、悪魔のような笑みを浮かべるミト。なんか身の危険を感じるのですが……。
「まず目隠ししないとね」
ミトはユウに指示を出し、ユウが晒しをまひるの目に巻きつけた。
「次にスイカを持って」
シズがまひるにスイカを持たせた。なぜ、スイカを持つんだ!?
「これでどうするのですの?」
そうだよ、それでどうするんだよ?
「そこで10回クルクル回って、埋まってる白夜のところまで歩いて、持ってるスイカを白夜の頭に……というか額あたりに落とすのよ」
へっ!?
ミトがとんでもないことを言いだした。
「なるほど額でスイカを割るのですわね! サッカーのヘディングみたいなものですわね!! なかなか斬新な遊びですわ!!!」
まひるは回り始めた。
全然斬新じゃねーよ!
エリートのくせにたまに常識的なことが抜けてやがる。
「いーーーち! にぃーーー!」
ミト、シズ、ユウがまひるの回転数に合わせて、声を揃えて数える。
「ちょちょ、違うよ。それは普通のスイカ割りじゃないよ!」
「さーーーん!」
僕の声が三人の声にかき消される。
僕は必死に声を出して抗ったがまひるの耳には届かない。数字が進み、やがて……
「じゅーーーう!」
「さあ行くのよ!」
ミトが猛獣を解き放つような声を張り上げた。
まひるはヨロヨロと……じゃなくて、スタスタと、に近い足取りで僕に向かってくる。
嘘だろ!? そこは普通に検討違いの方向や千鳥足で歩くとこだろ!
「あんた目、回ってないの?」
ミトも不思議に思ったんだろう、まひるに尋ねた。
「わたくし、全クラブ制覇の為に、体操もオリンピック選手並に鍛えてありますの。平衡感覚はずば抜けておりますのよ」
いらんとこ鍛えあげやがって! そんなバケモノ三半規管いらないんだよ! まずいぞ、このままでは本当にスイカが降ってきてしまう……。
「まひるこっちじゃないよ! もっと右だよ!」
「あら、わたくし間違ってますの?」
僕の声に足を止めて少し右に傾くまひる。
よし! それでいいぞ!
「最初ので合ってるわよ」
ミトがすかさず、ただそうとする。
「違う、違う右だよ!右! 右右右右右右右―!」
「うん? 右ですの?」
「違うわよ! 最初ので合ってるわよ!! 白夜の声に惑わされないで!」
「まひる! 僕の言うことを信じて! ミトが言うことより、僕のほうが信頼できるだろ!!」
「確かにそうですけど…………」
よし! あの緑と黒の丸い凶器を全然違うところに落とさせるしかない! そう思った矢先、ミトが何かを思いついたのか不気味な笑みを浮かべた。
「白夜の声のする方向に行ったらいいわ!」
なんですと!
これでは僕は声が出せない……。しかも、今日に限ってシズもユウも僕を庇わない……そりゃあエロい顔したけども!!
……自業自得と言わざる得ないのか……。
ミトがまひるを誘導する。徐々に僕との差を詰めるまひる。味方ゼロに身動き取れない状況……まさに背水の陣!
終わった……今日の天候、晴れ時々スイカ……。
ミトが手を払うような仕草でシズとユウに合図を送る。合図を送られた二人は僕にかけられてる砂をのけ出した。なんだ、助けてくれるのか、そりゃそうだよな! あんなもの頭に降ってきたら死んでしまうよな!
「もうビビらせないでくれよ~!」
僕の言葉に二人は耳も貸さずに掘り返している。僕は即座に気づいた……二人が掘り返しているのはお腹部分だけだと……まさか!?
お腹部分だけ露わになる僕。
二人は仕事を済ませると少し離れた。まひるはそこまで来ていた。
「まひる……」
「ああ、そこにいらしたのですわね」
しまった! 正確な位置を教えてしまった!!
「ちょちょちょっと待てー!」
「そうね、もう少し左ね」ミトが微調整をする。
「ここでいいかしら?」
「ちが――――」
「おっけー!!!」
ミト、シズ、ユウの大きな声で僕の声は掻き消され、死刑が執行されたのだった…………。




