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起死回生の一撃

 僕は、とあるビーチに来ているのだが、かれこれ30分はリア充どもが戯れる海を眺めている。

 ナンパ待ちのようなギャルにビーチボールでキャッキャッ言いながら楽しむリア充グループ。海にも入らず楽しそうにバーベキューしながら馬鹿笑いして青春を謳歌するグループ。

 そんな奴らから見れば僕は水着ギャル見たさに一人で海水浴に来た変態野郎にみえるかもしれない……。


 言うなればぼっち海水浴者に。


 いや、いいんだいいんだ。


 今日はラノベの取材のために来たんだからしっかり観察してやる。水着ギャルだってしっかり観察してやるんだ!


 ビーチボールが転がってきた。リア充どもが遊んでいたビーチボールだ。なんでこっちに転がってくるんだよ。空気読めよこのくそボール!

 僕は拾うか悩んだが足元までビーチボールが転がってきたので拾わないのも変だと思い、拾ってしまった。


「すいませーん」


 一人のリア充女子がこちらに近づいてきた。僕はビーチボールを差し出した。


「あ……ありがとうございます」


 変な間をおいて、軽く頭を下げるリア充女子。少し僕の周りを確認して、引き顏でリア充共のもとへ立ち去った。そして、こちらを注視して他のリア充にヒソヒソと話している。


 たぶん内容はこうだ。


「あの人、さっきから一人であそこにいるけどおかしくない? スイカとか大きいパラソルや椅子まで用意してるけど、誰も来てないんだけど。それになにあの数の浮き輪一人で3つもいる?」

「あれだよ。一人で来てると思われたくないからカモフラージュでそういうの置いてるんだよ。ぼっちのくせにそういう奴に限って見栄を張りたがるんだよ」

「なにそれぇ、キモーい!」

「キモーい!!!」

「彼女はおろか女友達もいないから目の保養のつもりでお前らの水着姿を見に来てるんだぜ、きっと」

「なにそれぇ、キモーい!」

「キモーい!!!」

「まあ、それくらい許してやれよ」

「無理ー!!!」


 っていうような会話がなされているんだろうな……。


 それにしても長いな……。待ちすぎて3つも浮き輪を膨らましてしまったが次はこれいっとくか……。

 僕はシャチの形をした浮き具を膨らましにかかった。


 ふぅーふぅー! 空気入れがないので人力で頑張る。誰か一人くらい用意しとけよあの黄色いやつを。

 肺活量のない僕に頼みやがって……! 必死に空気を吹き込む僕。


 そうしてる中、不安な気持ちがこみ上げ、いらぬぼっち特有の想像が膨らんでくる。

 しかし、いくら何でも遅すぎないか? 

 まさか、あいつらナンパでもされて、僕の事を放っておいて、すでにギャル男やリア充男子と遊んでるんじゃないか? 

 浮具を膨らむより早く悪き妄想が膨張していく。海なんか来るんじゃなかった。やっぱり一人で来れば良かったんだ。そうしておけば、ここまで嫌な気持ちにならずに済んだのに。



 しかし、それは僕のネガティブな杞憂にすぎなかった。



「お待たせ」酸欠になりそうな僕の背後から声がかけられたのだ。

 振り向くと、カメショー部の4人が艶やかな水着を纏っていた。いや、ひとりだけ違うが……。

 安堵感に包まれる。まわりのリア充やナンパ目的のギャル男はこちらに釘付けになっている。

 さっきのビーチボールリア充も驚きの視線を飛ばしている。


 まさに起死回生の一撃! 


 奴らの先程までの蔑みの視線が羨望の眼差しに変わっている。


 こんな状況初めてだ! 気持ちいいぞ! 


カメショー部の部員は性格はあれだが、見てくれは抜群なのだ。


「部長、遅くなってすいません」


 腰のラインにヒラヒラがついた白いビキニ姿のシズ。


「遅くなって悪いわね。ユウがなかなか納得してくれなくて」


 赤いビキニをが素晴らしく似合っているミト。


「本当にそうですの! あんなもので泳ごうとするなんて……いくつか水着を持参しておいて良かったですの」


 水色が基調で色鮮やかなハイビスカスがデザインされているビキニのまひる。


「海で水泳といったら晒しとふんどしぜよ。桂浜では晒しとふんどしで泳いでいたきに」


 スクール水着のユウ。胸の部分は鳳凰院と入っている。よくこんなもの持ってきていたな……。


「わたくしの小学生のときの水着でも大きいなんてどんだけ小さいのですの」

「あんたの小学生時代が無駄にでかかっただけよ。今も無駄に胸だけはでかいけど」

「また貴女はわたくしの胸をバカにして!」

「ホントのことを言っただけよ」


 ミトとまひるが視線の先で火花を散らす。


 はあ~やれやれ……。にしてもユウの奴、晒しとふんどしっていつの時代だよ……だけど、少し見てみたい気がする。

 僕は頭の中で想像してみた……。


「わが右腕、鼻の下が伸びているぞ」


 シズのその言葉に全員が僕を半眼で睨む。


「あんたやっぱりあたしたちの水着姿が……それが目的だったのね!」

「こ、これは違うよ。みんなを見たからじゃなくて……ユウの……」

「ユウのなによ??」


 ミトはジト目になる。


「……なんでもないです」


 ふぅー危なかった……ユウのふんどし姿を想像したからなんて言ったら変態だけでは済まされないぞ! にしても……じっくり見ると(もちろん悟られないように盗み見だ)


 ミトは均整が取れた体型、まひるはグラビアアイドル並に素晴らしい体型、シズは前から知ってたけど着やせするタイプ。だから水着になるとなんかグッとくるな。ユウはユウでこれまたマニアにはたまらないロリ体型スクール水着。

 本当にそれぞれ魅力的でほっといても視線がそっちにひかれる。


「おい、わが右腕、また鼻の下が伸びているぞ」

「あんたって人は!」「いやらしいですの」「それはいかんち」


 僕はこうして砂浜に顔以外の部分を埋められた。

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