部外者扱いされるエリート
「お待たせましたわね!一般人の皆さま」
鳳凰院は、さも自分が望まれていたかのような偉そぶりな態度で言った。丁寧な言葉遣いがよけいに鼻につく。
「貴様など誰も待っておらぬわ」
シズがまず碧眼モードでいつもの対応。
「誰? あんたの知り合い?」
ミトがユウに尋ねる。
「まったく知らんぜよ」
「ちょちょっとお待ちあそばせ」
鳳凰院は少し焦った様子で、
「貴女こそ誰ですの? というよりか誰の妹さんですの?」
「このコはユウっていって4人目の新入部員よ。れっきとした高校一年生よ」
ミトがユウの代わりに代弁する。
4人目??
「本当に高校生ですの?」
「ほんとよ」
容姿で判断してはいけませんわね……新しい部員ということはわかりましたの。だけど、5人目の間違いですわよ?」
「うん? 4人目よ」
何言ってんの? っていう惚けた顔をするミト。あまりのミトの惚け顔に不安を煽られたのか、鳳凰院は部室内の人数を指を差しながら数える。数えるまでもないと思うが……。
「1,2,3,4……5」
最後に自分を入れる。
「やっぱり5人目ですの!」
当たり前だが、確かに5人だ。
ミトも数える。
「1,2,3,4……ほら4人じゃない」
当然の如く、鳳凰院をスルーした。
「わたくしが入ってませんわよ!」
「うん?」
なにが間違ってるのと言わんばかりの表情を作るミト。
「だからわたくしが!」
「えっ、あんた部員だったの? 知らなかったわ~あ~知らなかったわ~」
あからさまにわざとらしい物言いだ。
これだけしかいない部員を知らなかったで通すミト。普通の生徒ならこの仕打ちに屈服するところだが、そこは唯我独尊お嬢様、全然こたえていない。
「新入部員もいらっしゃることですし、知らなければ何度でも教えてさしあげますわよ。わたくしこそはこの学園のトップに君臨する至高の存在、鳳凰院まひるですわ!」
「うざっ!」「うっとおしい!」
ミトとシズが声をそろえて言った。
「ちゃちゃちゃ、おんしが鳳凰院まひるさんであったか」
「貴女、わたくしのことをご存知ですの? いえ、これが当たり前の反応ですのよ。この学園にいる限りわたくしを知らぬ者などいるはずがありませんのよ」
なぜか勝ち誇った様子の鳳凰院。
「父上が旅立つとき、おんしに、しかと挨拶するように言っておったきに」
「……貴女、お名前はなんて仰るのですの?」
「遅れ申した。わしは坂本夕陽じゃき。この学園にやってきたがは昨日じゃき、挨拶が遅れてしまい申し訳なかったき」
「転校生? 坂本? ……貴女はもしかして才谷財閥の跡取り娘、坂本夕陽でございますの?」
「いかにも。これからこの学園で生活していくきに以後よろしく頼むぜよ」
「わたくしも耳に挟んでいましたわ。エリートクラスに高知の大富豪、あの坂本家のご息女がわが鳳学園に転校してくることは。貴女でございましたのね」
エリートクラスなのかこのコ。
「でも、どうして貴女みたいなエリートがこんな場末のクラブに入部したいと思ったのですの?」
そのまひるの言葉になぜかミトが怒りの表情を露わにした。
「わしは――――」
話そうとするユウをミトが遮る。
「ユウ話さなくていいわ。こんな部外者に」
「失礼な! 部外者じゃありませんわ!」
「あんた今この部活をバカにしたわよね? そんな輩は部外者も同然よ!」
『場末』に怒ってたのね……でも初めから部外者扱いしてましたよミトさん。
「ぐ……それは」
しかしながら、正論を言われて反撃できない鳳凰院。
「今なら許してあげてもいいわよ。その代わり一切この部活に関与しないでね」
シズが拍手する。それって結局部外者になるってことだよね?
「それは……それだけは……」
鳳凰院はどうしても辞めれない理由がある。それは全クラブ制覇を果たさなければならないからだ。
「それが無理なら土下座でもすることね」
また、このパターンかよ……。
「ぐ……」
目に涙を浮かべる鳳凰院。
やれやれ助け船でも出してやるか。
そう思った矢先 、
「ちゃちゃちゃ、これくらいのことでそこまでしなくてもいいぜよ」ユウが割って入った。
それをギロリと睨むミト。僕もすかさずフォローに入る。
「そ、そうだよ。鳳凰院さんもつい言葉が出ただけで悪気があって言ったわけじゃなさそうだし。それにミトたちも鳳凰院さんを部外者扱いしてただろ」
「ちゃちゃちゃ、そうぜよ。みんな心は桂浜から見渡す海のように広くならんといかんぜよ」
「ちっ!」舌打ちをするミト。
そして、席に戻り執筆に取り掛かる。案外あっさり退いたな。安堵の表情を浮かべる鳳凰院。
「よし、わしもここで欧米列強に負けない本を書くぜよ!」
ユウは意気込む。
「ところで部長殿は誰になるぜよ?」
「……僕だけど」
「ひとつ気になっていたのじゃが、仮面を被る意味は何のためにあるぜよ?」
ユウはミトとシズに目をやった。
「そういえば、わたくしもちゃんと聞いてなかったですわ」
「…………か、かか、仮面はえっと……」
本当のことを言っていいのだろうか。
ミトの方に視線を送るとミトは素早く首を振る。
「ぼ……僕らの大好きなカメショーキャラの真似をして取り組んでるだけだよ。カメショーのキャラの何人かは変身したとき仮面をするからね。それをリスペクトしてるだけだよ」
シズに説明したときと同じようなことを言った。
「仮面を被って作品を書くとパワーアップした気になって良い作品書けるかもしれないしね」
われながら相変わらず苦し紛れの説明だ。よく考えてみると子供がオモチャの変身ベルトを巻いて、ヒーローになりきって強くなった気でいるのと同じだよなこれ……。
「合点がいったぜよ!」
「そういうことなのですわね」
しかし、なぜか二人は否定もせず、納得してしまった。シズもそうだったが『カメショー』信者はこのあたりは盲目になるらしい。
自分の作品ながら少しこわい……。
「で、でも任意だから無理して付けなくていいからね」
「わかったき! これといったのがあればするきに!」
「わたくしもそう致しますわ」




