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交換条件

 振り向くと、犯人はミトだった。


 さっきまで向こうにいたのにいつのまにこっちに来たんだ!? 君は瞬間移動の使い手ですか?  

 ミトはニヤリとして小声で僕に耳打ちする。


「あんた、あたしと組むのよ。あんたの画力なら勝てるはずよ。あたし、どうしてもアレがほしいのよ。あんたもファンだから知ってると思うけど、クラマ先生のサイン入りのグッズって限られてるのよね。スピカ先生だけのはいくつか持ってるけど……あのクラマ先生直筆サイン入り激レアカレンダーどうしてもほしいのよ。今だけ協力してあげるわ、あんたはここでもぼっちでしょ、だから交換条件よ。あたしはカレンダーを手に入れる。あんたはぼっちから解放される。どう悪くないでしょ?」


 この交換条件、すごいこじつけだ。ミトは絶対自分の弱みを握らせないな。普通に頼めばいいものを僕のぼっちイズムを利用して対等以上の交換条件を突きつけてきた。確かに好きなもの同士でグループになる作業は嫌な思い出しかない。


 例えば、遠足や修学旅行の班決めだ。先生が好きなもの同士で組んでいいよ、と言った日にはその先生に殺意を抱いたものだ。そのほかに似ている状況といえば、ドッチボールやキックベース、野球にサッカーなどのチームスポーツでのリーダー格の取り合いじゃんけんだ。選ばれるのは決まって最後か、よくてブービー。はないちもんめに至っては名前すら挙がらない。あれほど残酷無慈悲な遊戯がかつてあっただろうか。イジメを助長しかねない遊戯だと断言できる。

 だから、ミケさんが四人一組と言った時点で僕の心は恐怖を憶えた。

 ミトはそんな僕の心を読み取り、彼女は僕が抗えないことを知っていたのだ。ぼっちに慣れているとはいえ、こういう状況下では僕にはこの交換条件は魅力的すぎた。恥ずかしながらミトの交換条件をすんなり受け入れた。


「でも、僕の画力で勝てるかどうか……」


 負けたときのため、言葉の保険をかけておく。そうしないとあとでミトに何を言われるかわからないから。こう自信なさげに言っても負けたらミトは容赦しないと思うけど……。


「勝てる!」


 ミトは耳打ちではなく、声を張り上げた。みんながミトに注目する。 


「あっ」


 それに気づいて、ミトは顔を真っ赤にして下を向いた。


「なんでもないです」


 各々フォーマンセルになり始める。


「あと二人はどうするの?」

「ひとりはミケさんにしましょ! あたし誘ってくるわ!」


 ミトはミケさんのもとに歩みだした。賞品の出品者なのにミケさん入れていいのかな。

 ミトが戻ってくるのを待っていると「ヤシロくん、一緒のグループになろうよ」とスバルに声をかけられた。


「えっと……」


 まさか自分が声をかけられるなんて思ってもなかったので僕は戸惑った。


「あれ、もうどっかのグループに入っちゃった?」

「いや、あの……」

「ん?」

 まあいいか。ミトがミケさんを連れて来たらスバル入れてフォーマンセルになるし。この人話してても好感持てたし、見かけよりチャラくないし。

 なにより声をかけられて嬉しかったしな。

 僕の勝手な判断になるけどこの人ならミトも怒らないだろう。


「なんでもないです。なりましょう!」


僕がそう言った直後に背後から、


「連れてきたわよ」とミト。


 僕が振り向くと、笑顔のミトと少し困った様子のミケさん。


「もう参ったよ。ワールドちゃんの強引さには。僕は余ったグループに入ろうと思っていたのに」


 ミケさんは苦笑いする。


「これで三人ね。あと一人どうしようかな」

「それなんだけど、あと一人はこの人で」


 僕は背後にいるスバルを紹介した。


「げっ! スバル」


 ミトが嫌悪感を露にして言った。

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