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夏服時々ピュア!?

 今日も授業が終わり、放課後になると僕は会議室2に向かう。

 そう会議室2、ここは僕が部長を務める仮面小説部、通称カメショー部の部室なのだ。


 扉を開けると二人の女の子がいる。SM仮面のミトと青いカラコンを左目だけに装着しているシズだ。二人は執筆に勤しんでいる。ここ最近のカメショー部のいつもの光景である。


「白夜、遅いわよ」とミトが開口一番。

「ごめん、ちょっと図書室に寄ってきたから」

「お疲れ様です。部長」シズが挨拶をする。

「お疲れ様」

「早速なのですが、ここの表現どう思いますか?」


 僕はシズのパソコンを覗き込む。……それといって特別な表現でもないような……。


「ゴホン」


 ミトは咳払いして僕に鋭い視線を飛ばす。おそらく文章の書き方を早く指導しろ、ということだろう。最近の日課だ。


「これで問題ないと思うよ」


 シズにそう言って、僕はミトのほうに歩み寄る。ここでシズを見ると、ミトに殺気のこもった視線を送っていた。ミトもそれを受けてたつ。二人のあいだには凄まじい火花が散っている。


 やれやれ……。


 ミトが部室に再び来るようになってからこんな状況が続いている。シズはどうやら僕がミトばかり構うことに嫉妬しているみたいなのだ。

 ミトはそれを逆手にとって、勝ち誇った笑みを浮かべる。


 ミトのパソコンを覗く。相変わらず拙い文章だが、これでも初めに比べれば指導の効果は少しずつ現れているようだ。とその前にひとつ気になることが僕の視線の先を惑わす。


 最近、夏服に切り替わり始めたおかげでミトの形の良いバスト(僕の勝手な妄想)が強調されている。しかもそれだけではなく、ミトはリア充らしくブラウスの首元から胸近くまでのボタンを留めていないのでこの位置からだと胸の谷間がはっきりと目視できるのだ。女性耐性ゼロに等しい僕の目はそのリアルな現状にどうしても目が入ってしまう。

 海やプールとは無縁な僕が三次元の世界で胸の谷間を目撃できるのは夏コミに出現するレイヤーさんの皆様だけだ。それもここまで直近ではない。


 ゴクリ……。


「どう? 今回の文章は。なかなかレベルあがっ

たでしょ」

「………………」

「…………白夜? ちょっとなにか言いなさいよ。ってあんたどこ見て……」


 ミトはすかさず胸元を手で覆った。もういいところだったのに! 見上げてこちらに目をやるミトの顔に視線を移すと頬が恥ずかしそうに赤面していた。

 僕はすぐにわれに返った。


 しまった! 


 見たことない景色に目の保養をしすぎた。あまりにも美しかったから見惚れてしまっていた。


「この変態! エロオタク! エロむっつり! エロメガネ! エロ同人野郎! 三次元童貞! 彼女いない歴17年男! 卑猥妄想野郎!」

「ご、ごめん。そういうつもりじゃ……」

「はあああ! この期に及んで言い訳するなんて最低! ここが電車なら痴漢行為と一緒よ! 大衆の目の前で駅員にしょっ引かれて、警察で事情聴取受けて、学校に知れ渡ってあんたの学園生活終了して、すさまじい慰謝料払って、家族がバラバラになって、どこにも就職できず、のたれ死ぬ人生確定よ!!」

「そ、それは言いすぎじゃあ……」

「わが右腕、それほどに飢えていたのならいつものようにいくらでもわが胸を見せてやったものの」


 シズはニヤリとする。


「いつものってやっぱりあんた達そういう関係だったのね! いやらしい!」

「ち、違うよ! シズも誤解を招くようなこと言わないでよ……これは男の性というか、遺伝子レベルの問題というか、そこに女性のシンボルがあったら自然と目が行くというか、なんというか……そうだ! 新幹線に乗ってて富士山が見えたら目が行くだろ? それと一緒だよ」

「なるほどねぇ……芸能人が街中歩いていたら目が行くのと同じことか! ……ってそんなので納得できるか! 今度やらしい目であたしを見てたら風紀委員にあんたを取り締まってもらうわよ!」


 そう言い放って、ミトは執筆に戻った。


 確かに今回は僕が悪い……でも襟元のボタンから胸近くまで無防備にボタンを開けているミトも悪いんじゃないのか? って反論したいけど、これ以上口論しても絶対負けるからやめておこう。

……この一件で不思議に感じたことがあった。ミトほどのリア充でも胸を見られるのは恥ずかしいということ。あいつらの格好なんて見てくださいって言っているようなものなのに。それがファッションリーダーであるリア充のスタイルだと思っていた。でも奴らは実は意外とピュアなのかもしれない。

 これ以降、ミトは僕を呼びつけるときボタンを胸の上まで留めるようになった……。

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