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ミトの挑発

「これって新人賞に応募とかしたの?」


 読み終えたミトが言った。


「いえ、してないですよ。私、まったく画力がないので誰かに作画してもらわないと賞などに出すなんてとても……ねぇ部長」と晩代は甘え声で嘆願するような瞳で僕をみつめてくる。

 そんな目を向けられても僕はしませんよ。


「漫画じゃなくて、ラノベによ!」

「してませんよ」

「いますぐしなさいよ!」


 ミトが切羽詰まったような物言いをする。


「どうしたんだよ、ミト?」

「だって、これ面白いわよ。これなら新人賞くらい取れるでしょ」


 面白いけど新人賞を受賞するにはもう一歩、いや正直もう二、三歩はいると思うんだけど。


「本当ですか? そんなに良かったですか?」

「癪だけどあんたやるわね」

「汝は性悪なだけのオナゴだと思っていたが、なかなか見る目があるではないか!」

「失礼ね! あたしはちゃんと良いもんは良いって言うわよ!」

「では、余興にもならんがラノベの新人賞とやらに応募してやろうぞ!」

「ちょ、ちょっと待って! たぶんその作品投稿したところで落選するよ!」


 ミトと晩代が目を見開いて驚いた表情をする。


「白夜、あんたなんの根拠があってそんなこと言い切れるのよ。あたしが面白いって言ってんだから面白いに決まってるじゃない」


 それは僕が新人賞の審査員になったことがあるからだ! と言いたいけれどそれは口が裂けても言えない。最終選考に残ってくる作品は晩代の作品より一枚も二枚もうわてのものばかりだ。みすみす落ちるとわかっているものを投稿させるのもなんだか気分悪いし。

 だけど、けなさずに取りやめさせるのも至難の業だな。どうやって伝えようか……。


「面白いよ、面白いけど……漫画向きの感じもあるからラノベの新人賞は難しいんじゃないかな……それに晩代さんは漫画家になりたいんだろ」


 僕はなんとか方向転換させようとそれっぽいことを並べてみた。


「ラノベで売れたら漫画化だってありえるわよ」


 間髪入れずにミトが答えた。


「なるほど、その手がありますね。朝凪先輩、それは名案です」

「でも……」

「でもってなによ? まだなにか反対するわけ?」

「ラノベの新人賞もハードル上がっているからそんなに簡単じゃない……と思う」

「なんか知った風な口をきくわね」


 ミトの言葉にドキリとする。


「とりあえず出してみないとわからないじゃない」

「それはそうだけど……」


 これ以上、否定しても怪しまれる。それに最もなことを言われ言い返せない。


 ミトはジト目になり、


「あーわかった。さてはあんた後輩に先を越されるのが嫌なんでしょ。自分より良いもん書いてる後輩が妬ましいんでしょ」

「そうなのですか? 部長。大丈夫ですよ、私が有名作家になってもちゃんと部長に作画を頼みますから」


 どこからそんな発想にたどり着くんだ。なんなんだよもう! この二人の決めつけ。妬ましいなんて微塵も思ってないし、それに作画はしません。


「そういうんじゃなくて」

「じゃあ、どういうのよ?」

「いや……その……だから……」

「相変わらずはっきりしないわね。やっぱり羨ましいだけなんでしょ?」

「ち、違うよ」


 それだけは断じて違う。だからといって、新人賞応募を取りやめさせる言葉がみつからない……。

 ここで僕の正体をばらしたら簡単かもしれないがそれだけはしたくないし……。


 ミトはあきれた表情をして、


「はあ~わかったわ。このコの作品を応募するのはあんたの作品を読んでからにしてあげるわ。それなら納得するでしょ」


 君たちがいつも楽しみに読んでるのが僕の作品だよ! うん? ちょっと待てよ……よく考えてみればこのミトの提案は晩代より良作を書けばいいだけのことだよな。そうすれば二人はあきらめてくれる。

 よし! 新人賞クラスでも上には上がいることを教えてやろう。妬ましいと思われているのは心外だけど、ここはミトの提案に乗っておくことにしよ。


「それであきらめてくれるなら明日持ってくるよ」

「やけに自身あるわね。あたしの意見に楯突いたんだからそれなりのものを持ってこないとタダじゃおかないわよ」


 了承したがいいが、また面倒くさいことになってきたな。このせいで『カメショー』の今夜の執筆が遅れそうだよ。とほほ……。

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