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◆第7話◆それぞれの実力

 始業開始のベルが鳴ると共にイルギア先生が校庭にやってきた。


「はぁーい、これから3年間この10人で授業を受ける事になるんだけど、それには皆さんそれぞれがお互いの実力を知る必要があるの」


 まぁ、それは一理あるわよね。使う魔法が何だかわからない得体のしれない人と一緒に居るのはストレスだもの。


「今から3人、3人、4人の3つのグループに分かれてもらうわよ」

「先生、誰とでもいいの?」

「そうね、いいけど、ちゃんと分かれられるかしら?」

「わ、私シェリーさんと一緒じゃなくちゃ嫌です!!」


 巻き髪のサラがイルギア先生に質問するや否や、ソフィアが私の腕にガシィッと両手でしがみついてきた。ちょっ!この子、自分が魔力不安定なの自覚してるくせになんて我が強いの!?


「じゃぁ僕も・・・」 

「俺もメアと一緒のグループがいいな!あれ?カインお前もか?」


 こちらに向かおうとしていたカインを押しのけてアクセルが私の元へとやってきた。アクセルもアクセルで我が強い。


「・・・・・・そうだけど」

「じゃぁ、俺ら4人グループ〜♪先生〜!決まったー!!」


 あからさまに不機嫌な顔丸出しのカインを余所にアクセルが嬉しそうにイルギア先生に報告しに行った。


 ふー。私ロージアとも組みたかったのだけどな。ロージアの方に目をやると、ロージアはウサギのレイジーナと目の下のクマが気になるシェスタと組んだらしい。

 となると、もう1つのグループは巻き髪サラとぽっちゃりチャックとさわやかダイスの3人か。

 向上心の高いサラが魔力の高い人と組まなかったのは正直意外ではあるが、どうやらサラはダイスに一目惚れをしたらしい。

 ダイスに向けた瞳がハートマークになっているもの。あ、だから誰と組んでもいいのか聞いたのか。なるほど。


 こうして上位3名プラスビリ()のグループと、中位3名のグループと、下位3名のグループに揉めもせずにすんなりと分かれたのであった。

 まぁ、私のグループはなんとなくこうなる気がしてたからさ、想定内だけどさ。


「まぁ、上手に分かれたわね。じゃぁ、これからグループで話し合って、力を合わせて魔法を使ってみましょうか。あ、失敗してもいいのよ。最初なんだから、気楽にね」


 話し合って・・・力を合わせる?え、このグループに協調性なんてものがあるわけ無いじゃない。しかも私の特技なんて前座にしかならないわ。


「俺はヒールとライトニングシャワーってアンデッドに効く攻撃魔法が使えるぜ!カインは?俺と同じ光属性だよな?」

「僕はヒールと、ラストジャッジメントって攻撃魔法かな」

「うぉぉ!なんかかっけぇな!!」


 術の名前は精霊が考えるって聞いたことがある。だから、同じ様な魔法でも名前が違うとか。

 

「・・・あのさ、カインはいつ精霊と契約したの?」


 ふと、思い浮かんだ疑問をぶつけてみた。


「え?去年、だけど」

「アクセルとソフィアは?」

「俺は物心つく前に契約したって父ちゃんが言ってた。精霊スカウトって言って、精霊からの契約交渉だったらしい。俺はまだ赤ん坊だったから親が代わりに契約したんだってさ」

「へぇ・・・」

「わ、私はお母様に仕えていた風の精霊のシルフが私が産まれた時に契約してくれたって聞いてます。ソフィアさんは?」

「わ、私、精霊に会った事、無い・・・。契約も交していないわ・・・」


 私、花を出す魔法を使えるから地属性だと思い込んでいたけど、まだ精霊と契約していないし、精霊を見た事すら無かった。えぇと、生まれ変わりを繰り返す内に使える様になったから名前なんてないしなぁ。


「精霊に会ってないのに魔法使えるのか!?」


 アクセルが驚いた様子で私を見た。


「や、魔法もといっても花しか出せないけど・・・」

「シェリー、大丈夫だよ。きっとその内スカウトが来るから」

「カインも精霊スカウトだったの?」

「まぁ、そんなとこかな」


 そっかぁ。精霊スカウトってどうしたら受けられるのかしら。


「やっぱり、シェリーさん是非とも我が城に来てください!きっとお母様が相談に乗ってくれますから」


 ソフィアが凄い勢いで私の手を掴んだ。先程までは厄介な存在だと思っていたが、こんなに私の事を心配してくれるなんて。私はソフィアに対して認識を誤っていた事に罪悪感を覚えた。


 ごめんね。ソフィア。私も貴女の魔力が安定する様に何か出来ることがあれば協力を惜しまないからね。


「えっ!お城?俺も行ってみたい!」


 アクセルがワクワクした顔でソフィアにねだっている。


「あ、あの、ら、ライズさんもよか・・・良かったら、どうぞっ・・・」

「本当!?やったー!!」

「大丈夫?ソフィア。無理しなくても」

「大丈夫ですっ・・・!ライズさんはソフィアさんの親友ですから」

「そんな事気にしなくてもいいのに」


 私だってまだそんなにアクセルを親友として見れていないのに。


「か、カインさんはどうしますか?」

「僕?僕は遠慮しておきますよ、ソフィア姫」


 あら、珍しいわね。てっきりカインも私について来ると思っていたのだけど。

 もしかしたら、徐々に私から離れていくのかもしれないわね。これまでのカインと同じ様に。


「はーい、皆さん話はまとまったかしら?」

「はい!私達が一番にやります」


 イルギア先生の問いに、いち早く反応してそう言ったのはサラだった。火の魔法と風の魔法か。どんなのになるのだろう。


「攻撃系の魔法は、このゴーレム人形めがけて繰り出してみてね〜」


 イルギア先生が指を鳴らすとどデカいゴーレムの人形が現れた。


「よーし、行くわよチャック!ダイス様!」

「おうよ、ぶちかまそうぜ!!」

「頑張るよ」


 3人とも同時に呪文を唱え始めた。まだ見たことが無い魔法を見るのは楽しみだ。


「「バーニングドラゴン!」」

「エアリアルタイフーン!」


 サラとチャックから放たれた炎はまるで龍の様に乱れ舞い、ダイスから放たれた竜巻によって回転しながらゴーレムを襲った。

 

 ゴーレムはあっという間に黒焦げになった。


「格好いい!!」

「かっけぇぇ!!」


 私とアクセルはほぼ同時に同じ事を叫んだ。


「フフン。私達単体では上位にはなれないけど力を合わせたら凄いんだから」


 サラは私達が言った言葉を受けて自信満々に答えた。うんうん、言うだけの事あるわね!


「じゃぁ新しいゴーレムちゃんを・・・」

「そのままで大丈夫です、先生」


 そう答えたのはロージアだった。


「次は私達がやります!」


 ロージアがそう言うとレイジーナとシェスタが詠唱を始めた。


「アクアミスト!」

「ヒーリングフォレスト!」


 レイジーナの霧とレイジーナの手から生えた木の枝がゴーレム人形のススを洗い流し、細かい傷を治した。


 そしてロージアが詠唱を開始し、昨日見た魔法陣の様なサークルがロージアを囲んでゆく。


「リペア!!」


 まばゆい光に目が眩む。ゆっくりと目を開けるとゴーレム人形は元通りに戻っていた。


「凄い凄い!でも、ロージアのリペアだけでも充分だったんじゃない?」

「いいえ。自分一人で修復するのと、複数名で協力するのと消費魔力が全然違いますからね」

「へぇぇ!なるほど。グループならではなのね」

「ピンポーン。そういう事♪じゃぁ、最後は4人グループね」


 私とロージアの会話を聞いていたイルギア先生が、嬉しそうに私達のグループをゴーレムの前へと誘導した。


 はぁ。光と風と得体のしれない私の魔法。まさか一番得体のしれないのは私だったなんてね。


 私達のグループは、まずソフィアが詠唱を開始し、私は沢山の花を頭でイメージして両手を上げて魔力を開放した。


「ダンシングウィンド!」


 ブワッと吹き出した風に乗って私の出した花達が可憐に舞った。


 そしてアクセルが詠唱を開始してすぐに魔法を唱えた。


「ライトニングシャワー!!」

「オーバーザレインボウ!」


 カインは詠唱無しで魔法を唱えた。


 アクセルの放った魔法を受けて花達は光で包み込まれ、キラキラ光りながら舞い上がっては舞い降りるのを繰り返している。

 そしてフィニッシュはソフィアの風が止み、カインが繰り出した螺旋の虹の上を滑り台の様にキラキラと輝く花達が滑り落ちてった。


 うわぁぁぁ!私のささやかな魔法が皆の力を借りて輝いたわ!!魔法を使ってこんなにも高揚した気分になったのは初めてだった。


 ソフィアの魔法も失敗しなかったし、私達上手く出来たわよね?


 ソフィアとアクセルとカインをそれぞれ見ると皆微笑みを返してくれたので成功したのだと理解したのだった。

ここまでお読みくださいまして、ありがとうございました(*^^*)

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